“元“悪役令嬢は二度目の人生で無双します(“元“悪役令嬢は自由な生活を夢見てます)

翡翠由

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作戦失敗

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 夜になると外に出る人の姿も見えなくなって、辺りは暗くて何も見えない。霧が更に濃くなり、右も左もわからないような状態になってしまっている。

 魔力を感知できる人であれば問題はないのかもしれないが、夜ずっと起きている人はいないので龍族の皆さんにとっても夜は危険だろう。

「さて……」

 何時頃やってくるのかはわからないけど、私がやるべきなのは龍族の味方でも鬼族の味方でもない。

 犠牲者は最小限に、かつ迅速に事を終わらせる。私はお使いに来ただけなのだ。

 時間がかかってもいいよと理事長に言われていたが、数日授業をしないわけにもいかない。

 さっさと残りの素材を集めて帰りたいだけなのだ。

 あと、ターニャが頑張ってるかチェックしないとね!全く、ターニャは何をやってんだか。

 どうせ、また迷っているのだろう。どうしたらいいのか……って。

 まあ、私が教える筋合いはないわね。自分で正しいと思った道に突き進めとしか言えない。

「でも、ずっと待ってるわけにはいかないわね」

 どうせだから、この誰もいない部屋を少しの間空けてもいいだろう。

 長老もこの場にはいないことだし、ぐちぐち言われることはない。

「グラートたちのほうに顔を出しますかね……」

 重い腰を上げるように立ち上がると、私は魔法を起動させる。

 魔法陣が全身を包んだ次の瞬間には私の行きたかった目的地へと景色が切り替わる。

「ふぅ……」

 ついたのはグラートたちの部族の少し広いスペース。

「お?あったあった……」

 夜だとやっぱり見えずらいが、グラートたちの気配はすぐにわかる。

「ちわーっす!」

「「「え?」」」

 おっと、三人ともそろっていたのか。じゃあ、ちょうどいい――

「おねえちゃあああああああああん!」

「どうぇ!?」

 激しい頭突きがお腹辺りに飛んできたかと思うと、ルーが翼をパタパタさせながらそこにいた。

「おおよしよし……お姉ちゃんですよー」

「うわあああああああああああああん!」

 涙を流しながら、ぎゅっと握り私の服の裾を掴む姿がとても愛らしい。

 ただ、鼻水は服につけないでほしい……。

 と、そこでようやく残り二人が反応した。

「おま!?どうしてここに……!」

「え?普通に転移で」

「「それは普通じゃない!」」

 そうだった。転移を一人で使えること自体が異常だということに。それは、龍族の中でも一緒だったようだ。

 こればっかりは力とかではなく、頭の演算力だからね。

「まあいい……戻ってきたのなら、重畳だ……」

 よくよくグラートたちが囲んでいる場所を見てみると、そこにはどでかい地図が一枚置かれたいた。

「どうやってあの部族に攻め込むか考えていたところで――」

「ストップ!」

 今部族間で攻め込まれると、絶対に鬼族に対応できない。なんなら龍族が滅びかねないのだ。

 犠牲者を出さないというのは、龍族も鬼族も両方という意味なので、ここで争われたら困る!

「今だけでいいからあの部族を信じて」

「だが、ベアトリスをさらったやつらだぞ?」

「別に酷いことをされたわけでもないし、何ならいい人たちばっかりだったから今だけ私を信じて!」

 渋々というように二人が頷く。ルーはそろそろ落ち着いたのか、ゆっくりと顔を離した。

 ハンカチを渡して鼻水を拭くようにいいつつ、私は二人にやってほしいことを説明する。

「いい?鬼族が今あの部族に攻め込もうとしているの。だけど、どちらの種族にも犠牲は出したくない」

「鬼族が?」

「でも、私だけじゃ今回は解決できないの。だから力を貸して!」

「ああ、わかった」

 流石に、全員ぶん殴って止めるわけにもいかないので、この争いには仲介役となる人たちが必要だ。

 今、手が空いてて私のことを信用してくれるような人たちと言ったらこの部族の百人の竜人が適任である。

 戦闘職でない人も腐っても龍族だ、死ぬことはない。

 死にそうになってた私が助けるまで。

「だが、そうなると面倒だな」

 グラートは真剣に地図を見つめる。

「鬼族がこちらからやってくるとしたら、我々は反対方向だ。迎え撃つにいしても厳しいだろう」

「鬼族はもうすぐそこまで来てるから、決行は今日だと思う」

 でも、もう夜だというのに、中々動きがないのが不自然だった。真夜中十二時だというのに、魔力が動く様子は見えない。

 いくら何でも、偵察の鬼族がバレた時点ですぐに勝負を仕掛けたほうがいいというのに。

 対策を打たれる前に動くだろうから、動くなら今日しかないわけで……。

「ん?反対?」

「なにか気づいたのか?」

 反対方向にはナターシャの部族と敵対しているグラートの部族がある。そこの部族が挟み撃ちを行えば、ナターシャの部族の全滅は避けられないだろう。

 ということは、鬼族は私たちが動くのに合わせて強襲する気?

 確かにそれなら、偵察がバレても対策が打たれようともごり押しできる!

「グラート……一つ案があるわ」

「案だと?」

 私は思いついたその案をグラートに伝える。

「そんな簡単にいくか?」

「そこはあなたたちの実力次第ってところね」

「ふん、抜かせ。我らにできないことはないさ」

「頼もしい限りだわ」

 その案には案外グラートも乗り気で参加してくれた。単純な案ながら、鬼族と龍族の両方を騙すことが出来る。

「じゃあ、私はもう戻るから、グラートたちも準備を始めて」

「今日やるのか?」

「私は早く帰りたいからね」

「どこに住んでるのかは知らないが、わかったさ」

 作戦の決行が教に決まったところで、私はそそくさと転移で帰っていく。

 再び視界が部屋の中に切り替わる。

「はぁ……」

 かなり疲れた。脱力感というかなんというか……でも、普段の私ならこんなに疲れないような気もする。

「あら、お帰り」

 そんな聞いたことある声が部屋に響くまでは、そう思っていた。それは、脱力感ではない。

 極度の緊張と恐怖で力が抜けていたのだ。

「あなた!?」

「見つけたわよ、ベアトリス♡」

 その時、私の頭の中に作戦の失敗の予感が流れた――。
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