“元“悪役令嬢は二度目の人生で無双します(“元“悪役令嬢は自由な生活を夢見てます)

翡翠由

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戦いの始まり

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「もう!お嬢様は私の知らないところでいつも何かやらかして!」

「いつもではないよ……」

「まあ、緊急時なので怒りはしませんけど、事が終わったら覚えておいてくださいね」

 ミサリーのお叱り宣告を受けたところで、改めて現在の状況について軽くみんなに伝えておく。

「反乱軍ともう一人仙人?はあ?」

「油断できない戦いということだな?」

 ミサリーと服部長老には伝えられたが、残りの二人はどこにいるのだろうか?

「外で何かしてるのは間違いないわね。でもまあいいわ。レオ君は状況をちゃんと見れるだろうし、ユーリはは心配する必要なさそうだし」

「そうですね」

 その時、

「義妹殿ー!」

「ライ様?なんでここに!」

 組合の中へいきなりライ様が駆け込んできた。

「旦那様がいないんです!外にいる市民のみなさんは混乱して大変なことに!」

「お兄様?」

 私だってどこにいるかなんて知らない。だが、さっきは路地裏のほうにいたのは確かだ。

「ライ様、コウメイ様なら平原のほうで見かけました」

「え?」

「理由は分かりませんが、来る途中に見かけたのです」

「そんな!なんでそんなところに!」

 ライ様はとてもオロオロとしている様子だが、隣にいた蘭丸さんが支えているおかげでどうにか卒倒しないですんだ。

「ライ様、市民の誘導はお願いできますか?」

「私が?」

「大丈夫です。みんなあなたの指示を聞いてくれるはずです!」

「はい、やってみます!」

 ライ様はすぐさま組合の外へ飛び出していった。

「私たちも出ましょう」

 その場にいた二人を引き連れて私も外へと出ると、そこはもうお祭り騒ぎ状態だった。恐慌状態というのだろうか、みんなどこへ逃げていいのかもわからず道を走り回っている。

「こんなに動き回られると守るのも一苦労よね」

「大丈夫ですよお嬢様。そもそも私たちが中に入れないようにすれば――」

 ミサリーの言葉を最後まで聞く前に、私の視界にきらりと光る何かが映った。

「『止まれ』!」

「っ!」

 刀を持っている男の動きを止める。斬りかかろうとしていたその男は市民と同じように私服で外へ出ていた。

「どういうことですか?」

「混乱のし過ぎで……ではないわね。あなた、反乱軍?」

 反乱軍からどうか尋ねた瞬間、明らかに動揺していた。

「まさか!?もう中に入り込んできているの!?」

「いつの間に……」

 ケガを負っていた八呪の仙人のほうをちらりと見てコンタクトを交わす。

「我もわからぬ。確実に誰も中へと入れさせていないはずだ」

「ということは最初から紛れ込んでいた?」

「そんな……」

 相手のほうが一枚上手だったわけか。

「こうしちゃられない!ミサリー早く反乱軍の本隊に行って!」

「はい!」

「では、わしも行こうか」

 二人がすぐさま行動を開始したのを確認したのち、反乱軍の男から刀を取り上げた。

 話術スキルを使っているため、動けこそしないものの憎悪の眼差しがこちらに向いている。

「どうやって中に入ってきたの?」

「どうやって、だと?そんなの簡単さ。ここの領主様に入れてもらったんだよ」

「それは……どういう意味よ!」

「ひっ!?」

 思わず殺気がだだ洩れてしまった。幸か不幸かその殺気のせいで、混乱で走り回っていた人々の動きまでも一瞬硬直した。

 そして、私がその反乱軍の男を殴り飛ばそうとする前に、声は聞こえてきた。


「皆さん聞いてください!」

 広場の一段上がった場所、そこにライ様がいた。

「今!この街はまたとない危機にあります!ですが、皆さんどうか安心してください。この街にはとても強い方々が何人もいらっしゃいます。今も反乱軍の元へ出向いて戦っています!だから、私が信じる彼ら彼女らを信じてほしいんです!」

 ライ様の訴えは市民にはかなり響いたらしく、冷静さを取り戻す人が何人が出始めた。ライ様はそれを見て、更に強く訴えを続けている。

「殺さないでよかったかな?」

 今、目の前にいるこの男を殺していたらさらに混乱していたことだろう。感謝感謝。

「私と八呪の仙人、あなたで八光の仙人の相手をするとして、そうなると市民の守り手がいなくなっちゃう……どうしよう」

 あーもう何で肝心な時にレオ君たちはいないのだ!?

「その心配には及びませんわ、義妹殿」

 どれだけ地獄耳なのか十メートルほど離れた位置からライ様は高らかに宣言した。

「この街の市民は私たちが守ります。これ、お分かり?」

 市民は武士団の面々……もといライ様たちが守るという意味だろう。その意味を理解した私はグッと親指を立てておく。

「やつはきっと我の本体を狙ってくることだろう。霊峰の山に急ぐぞ」

 そう言った仙人だったが、

「ぐっ……」

「ちょっと、大丈夫?傷が深いからあまり動かない方が」

「問題ない。仙人に対し心配など、無用の長物だ」

 そう言って起き上がる仙人。だが、あまりにもつらそうな姿を見かねた私が肩を貸そうとした時、

「ベアトリスさん、私にも何か手伝わせてください」

「ミハエルさん?」

 そこには最近顔をあまり見ていなかったミハエルがいた。

「こう見えてお裁縫は得意なんです。傷くらいすぐに縫ってあげます」

 大丈夫なのかそれ……。

「我は構わん」

「えっ!?」

「なんだ、その顔は」

「人に頼りたくないみたいな顔しておきながらミハエルさんには頼るの?」

「何を言っている?ただ我は……何かを感じたのだ。この女の中に」

 そのなにかって何なんだよ。

「もう……なんでもいいけど、ミハエルさん。この人は任せたよ?」

「はい!」

 私は一足先に転移で霊峰の頂上へと向かうのだった。
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