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計画は(×××視点)
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暗い部屋の一室、そこで一人歯をギシギシがと鳴らし、苛立つ。
「クソガキがっ!私の獲物をよくも……!」
ムカつくムカつくムカつく、ホントだったら霊峰の渓谷で塵すら残さず殺してやるところだったのに。
「天使の姿をした奴に、幻花……あれを巻き込んで殺すのはあまりにもリスキー……か」
幻花の希少性は知っていた、できれば回収もしたかったが……あれを使えばベアトリスが生き返ることだってできる。だからみすみす見逃した。
そして、あの天使。
「いや、あれは人間だった……ということは、人間の体に取り付いている天使は少なくとも上位三隊のどれか」
座天使?それとも智天使?
「もし、熾天使なら面倒なことになっていたわね」
生憎と、侵攻の最中にまた天使共を相手にするのは厳しい。
かと言ってあのクソガキ相手に天使が巻き添えを喰らわないように殺すことはできない。腐ってもあいつは数千年生きてきた猛者。
私が手加減した攻撃で簡単に死ぬような奴ではない。
「くそが、中途半端に強い奴はこれだから嫌いなんだ」
「愚痴を言いに来たのなら、回れ右で帰ってくれないか?」
部屋の中に明かりが差し込み、その部屋……もとい城の主が入ってくる。
「なによ、こっちの苦労も知らないで!あんたを粉微塵にしてあげましょうか?」
「それはぜひとも遠慮願いたい」
大柄なその男は苦笑いでもって返す。
「貴殿がそこまで苦悩するとはな。そこまでベアトリス殿に心酔しているのか?」
「心酔?勘違いしないでほしいわね。あれは私にとって最高の獲物なの。誰の横取りもさせないわ。あれがもっともっと強くなって熟れた時、初めて私が直々に相手をする。誰であろうと手出しはさせないわ」
「そんなことをしていて、悪魔門を開く準備は進んでいるのか?」
「進めてるわよ」
髪の毛で遊びながら、私は左目を閉じ手を当てる。二つの目には違う視界が映り、右目には大柄な男が、左目には徐々に……ほんのわずかな大きさずつ広がる次元のゲートがあった。
悪魔門と呼ばれるそれは、悪魔が暮らす世界とつながるただ一つの入り口。その大きさはいまだに数ミリ単位でしかない。
「爵位持ちの悪魔どもを入れるには全然足りない。それに、高祖系の悪魔たちや『王』を迎えることも後何十年かかることか」
「そんなに時間をかけていて怒られやしないのか?」
「いいのよ、私はこの一人の時間を満喫したいの。私以外の悪魔は誰一人としてゲートなしではこちらに来れないのだから」
「支配の権能か」
時空間を丸ごと支配できるこの権能があれば、世界の行き来など容易にできる。
「それにしても、あんたも物好きよね」
「なにがだ?」
「今目の前に世界の敵ともいえる悪魔がいるのに、あなたは何もせずただ傍観しているなんて」
「頭を使うことは得意ではないが、少なくとも俺に止めるだけの力がないのは分かっている」
男はそう言って自分の手を見た。
「私とタメ張れるくらいには強いのに、弱気ねぇ?」
「貴殿とは違って、俺は敗北を知っているからな」
「マレスティーナね、確かにあの女は私の権能と似たような力を持っている」
権能で時空間を支配している私とは違って、あの女は魔法でもって時空間を操っている。支配力は私の方が上だが、魔法で時空間に干渉できるあの女は流石メアリの仲間と言える。
「そういえば、あの女は変なことをよく繰り返していたわね。勇者パーティに賢者としてくっついていったと思いきや自分一人だけ生き残って勇者パーティを全滅させたりとか」
一体何がしたかったのだろうか、今の私に知るすべはないがあの狡猾なマレスティーナのことだ。おそらく何かを狙っているのだろう。
「知らん。あと、貴殿はもう少し任務に忠実に動きべきではないか?」
「あ?どういう意味よ」
「先代魔王がベアトリス殿の手に渡っただけでもかなりの誤算だろう?しかもあの何を考えているかよくわからない先代が、なついたんだぞ?」
「最強の魔王ねぇ……正直興味あったから『支配』しようかなとか思ってたんだけど。思った以上に抵抗が激しくて、呪うのがせいぜいだったわ。魔力を封じたからどこかで朽ち果てると思わない普通?」
「ベアトリス殿の周りに付きまとう人物たちは誰であろうとそれなりの力を手に入れている……災害級とまではいかずとも、人類の切り札になれるほどには優秀だ。このままだと次の『聖戦』はかなり危ういぞ?」
「ふん、大丈夫よ。今度は『王』が出てくるから」
私は立ち上がり、口笛を鳴らす。
「はっ!」
すぐさま部下である隊長格の悪魔が一体現れた。
「人間に取り付いている天使の階級を調べてきなさい。上位三隊なのはわかっているか無駄な報告はしないよう。絶対にバレるな、いい?」
「かしこまりました」
そして素早く闇の中に溶けて消えた。
「んじゃ、そろそろ私は一度帰るわ。『お姉さま』達ったらすぐに私を呼び出すんだから」
「愚痴は済んだか?」
「ええ、ちょっとはね。八光の仙人とかいうクソガキに会ったら私の代わりに殴っといて」
「それは……わかった」
影が動き、次第に門のような形を作り始めた。
「また邪魔しに来るわね、魔王」
「もう来ないでほしいのだが?」
そう言って、私はゲートをくぐり地獄のような世界に帰ってきた。燃え滾るマグマが広がり、地面という概念は存在せず常に目の前では争いが起こっている。
「ったく、臭いわねここは」
そうして、少しの間その場で待機していると、途端に先ほど私が使った闇のゲートが開いた。
「帰ってきたのね、我が妹」
「お姉さま、ただいま帰りました」
目の前には紫の色を三つ編みにした女性が立っていた。三人いる姉の中の一人である。
「あなたには話したいことが色々あるの、さあ早く行きましょう。わが家へ」
「はい、かしこまりました」
そう言って私は姉についていく。
「クソガキがっ!私の獲物をよくも……!」
ムカつくムカつくムカつく、ホントだったら霊峰の渓谷で塵すら残さず殺してやるところだったのに。
「天使の姿をした奴に、幻花……あれを巻き込んで殺すのはあまりにもリスキー……か」
幻花の希少性は知っていた、できれば回収もしたかったが……あれを使えばベアトリスが生き返ることだってできる。だからみすみす見逃した。
そして、あの天使。
「いや、あれは人間だった……ということは、人間の体に取り付いている天使は少なくとも上位三隊のどれか」
座天使?それとも智天使?
「もし、熾天使なら面倒なことになっていたわね」
生憎と、侵攻の最中にまた天使共を相手にするのは厳しい。
かと言ってあのクソガキ相手に天使が巻き添えを喰らわないように殺すことはできない。腐ってもあいつは数千年生きてきた猛者。
私が手加減した攻撃で簡単に死ぬような奴ではない。
「くそが、中途半端に強い奴はこれだから嫌いなんだ」
「愚痴を言いに来たのなら、回れ右で帰ってくれないか?」
部屋の中に明かりが差し込み、その部屋……もとい城の主が入ってくる。
「なによ、こっちの苦労も知らないで!あんたを粉微塵にしてあげましょうか?」
「それはぜひとも遠慮願いたい」
大柄なその男は苦笑いでもって返す。
「貴殿がそこまで苦悩するとはな。そこまでベアトリス殿に心酔しているのか?」
「心酔?勘違いしないでほしいわね。あれは私にとって最高の獲物なの。誰の横取りもさせないわ。あれがもっともっと強くなって熟れた時、初めて私が直々に相手をする。誰であろうと手出しはさせないわ」
「そんなことをしていて、悪魔門を開く準備は進んでいるのか?」
「進めてるわよ」
髪の毛で遊びながら、私は左目を閉じ手を当てる。二つの目には違う視界が映り、右目には大柄な男が、左目には徐々に……ほんのわずかな大きさずつ広がる次元のゲートがあった。
悪魔門と呼ばれるそれは、悪魔が暮らす世界とつながるただ一つの入り口。その大きさはいまだに数ミリ単位でしかない。
「爵位持ちの悪魔どもを入れるには全然足りない。それに、高祖系の悪魔たちや『王』を迎えることも後何十年かかることか」
「そんなに時間をかけていて怒られやしないのか?」
「いいのよ、私はこの一人の時間を満喫したいの。私以外の悪魔は誰一人としてゲートなしではこちらに来れないのだから」
「支配の権能か」
時空間を丸ごと支配できるこの権能があれば、世界の行き来など容易にできる。
「それにしても、あんたも物好きよね」
「なにがだ?」
「今目の前に世界の敵ともいえる悪魔がいるのに、あなたは何もせずただ傍観しているなんて」
「頭を使うことは得意ではないが、少なくとも俺に止めるだけの力がないのは分かっている」
男はそう言って自分の手を見た。
「私とタメ張れるくらいには強いのに、弱気ねぇ?」
「貴殿とは違って、俺は敗北を知っているからな」
「マレスティーナね、確かにあの女は私の権能と似たような力を持っている」
権能で時空間を支配している私とは違って、あの女は魔法でもって時空間を操っている。支配力は私の方が上だが、魔法で時空間に干渉できるあの女は流石メアリの仲間と言える。
「そういえば、あの女は変なことをよく繰り返していたわね。勇者パーティに賢者としてくっついていったと思いきや自分一人だけ生き残って勇者パーティを全滅させたりとか」
一体何がしたかったのだろうか、今の私に知るすべはないがあの狡猾なマレスティーナのことだ。おそらく何かを狙っているのだろう。
「知らん。あと、貴殿はもう少し任務に忠実に動きべきではないか?」
「あ?どういう意味よ」
「先代魔王がベアトリス殿の手に渡っただけでもかなりの誤算だろう?しかもあの何を考えているかよくわからない先代が、なついたんだぞ?」
「最強の魔王ねぇ……正直興味あったから『支配』しようかなとか思ってたんだけど。思った以上に抵抗が激しくて、呪うのがせいぜいだったわ。魔力を封じたからどこかで朽ち果てると思わない普通?」
「ベアトリス殿の周りに付きまとう人物たちは誰であろうとそれなりの力を手に入れている……災害級とまではいかずとも、人類の切り札になれるほどには優秀だ。このままだと次の『聖戦』はかなり危ういぞ?」
「ふん、大丈夫よ。今度は『王』が出てくるから」
私は立ち上がり、口笛を鳴らす。
「はっ!」
すぐさま部下である隊長格の悪魔が一体現れた。
「人間に取り付いている天使の階級を調べてきなさい。上位三隊なのはわかっているか無駄な報告はしないよう。絶対にバレるな、いい?」
「かしこまりました」
そして素早く闇の中に溶けて消えた。
「んじゃ、そろそろ私は一度帰るわ。『お姉さま』達ったらすぐに私を呼び出すんだから」
「愚痴は済んだか?」
「ええ、ちょっとはね。八光の仙人とかいうクソガキに会ったら私の代わりに殴っといて」
「それは……わかった」
影が動き、次第に門のような形を作り始めた。
「また邪魔しに来るわね、魔王」
「もう来ないでほしいのだが?」
そう言って、私はゲートをくぐり地獄のような世界に帰ってきた。燃え滾るマグマが広がり、地面という概念は存在せず常に目の前では争いが起こっている。
「ったく、臭いわねここは」
そうして、少しの間その場で待機していると、途端に先ほど私が使った闇のゲートが開いた。
「帰ってきたのね、我が妹」
「お姉さま、ただいま帰りました」
目の前には紫の色を三つ編みにした女性が立っていた。三人いる姉の中の一人である。
「あなたには話したいことが色々あるの、さあ早く行きましょう。わが家へ」
「はい、かしこまりました」
そう言って私は姉についていく。
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