“元“悪役令嬢は二度目の人生で無双します(“元“悪役令嬢は自由な生活を夢見てます)

翡翠由

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未来の先

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「街に来て鍛冶師をやってくれない?」

「街だと?」

 そう聞いた瞬間明らかにドワーフは機嫌を悪くした。

「俺は街にはいかんよ」

「なんで?この森が好きとか?」

「そういうわけじゃねえけど。とにかく俺は外に出るわけにはいかないんだ」

「そう……とりあえず、今日はありがとう。また遊びに来るね」

 そう言って私は森を抜けた。


 ♦


 ふーむ、一体どうしたんだろう?何か嫌なことでも言ったか?

 特に思い当たるところがない。

 でも、こればっかりは本人が嫌がっているからしょうがないよね。公爵領を盛り立てようとしてくれているみんなには何もできてなくて申し訳ないけど、それも父様を連れて帰ってくれば変わるはずだ。

「よし!そうと決まったら早くしないと!」

 善は急げだ。

 とはいってもそもそも大陸がどこのあたりにあるのかすらわからない。日ノ本の国の更に東ということだけが分かっている。

 大陸というくらいだから適当に東にまっすぐ進めば着くのかもしれないが、流石にそんなばくちは嫌だ。

 というわけで、これは冒険者組合本部に問い合わせかな。

 と、そんなことを考えていた時。

 《次元移動を感知しました》

 おっと?

 私はとっさに異納庫から武器を取り出し、鞭に形態変化させる。それを次元移動してきた相手に向かって放った。

 鈍い音が響き、毎度のことながらすさまじい衝撃波で土煙が……。

 人として強くなりすぎたせいか、毎度毎度土煙が舞ったり地面にひびが入ったり……戦闘スタイルも改善しないとそのうち自分の攻撃に翻弄されそうだ。

 《訂正いたします、人ではございません》

 あーそうですかい!知ってるわそんなもん!

 と、ツムちゃんと押し問答を繰り広げていたら、

「酷いな……直撃したらどうするんだい?」

「あのさぁ、毎回毎回人の背後に回り込んでくるあなたに言われたくなんだけど?」

 しかも初対面の時は謎に挑発してきたくせに。そこにいたのは大賢者マレスティーナ。

 なんだかレジェンド感のかけらもなくなってしまったマレスティーナが結界で私の攻撃を防いでいた。

「その武器は?」

「森の奥のドワーフさんに作り直してもらったの」

「へぇ?気に入ってるんだね?」

「それはそうでしょ。これしかまともな武器ないしね」

 砂ぼこりを払いながらマレスティーナはいつもの調子に戻ったようだ。

「それで?いきなり次元移動してきた理由は何?」

「まあまあ、それは一旦置いておこうよ」

 そっちの都合で来たわりに後回しでいいの?と思いつつ、まいっかと思ってしまう私である。

「そういえば、マレスティーナはあのドワーフさんと知り合いみたいに話していたよね?」

 ドワーフさんに最初の武器を作ってもらった時、マレスティーナは言っていた。そして、ドワーフさん自身もなんだか含みのある言い方をいくつかしている。

「気になっちゃう?ねえねえ気になっちゃう?しょうがないなぁ!教えてあげよう!」

「やっぱうざいからいいです」

「冗談冗談だからちょっと聞こうよ?」

 武器をしまいながら耳を傾ける。

「あいつは随分と前から私と知り合いだったよ。昔から頭が固いおやじって感じだったけど、まさかここまで来るとはねぇ」

 森の奥の方を見ながらマレスティーナはそんなつぶやきを漏らした。

「なんでドワーフさんはあの森から出てこないの?」

「さあ?私にはわからないな。私はの悩みは分からないからな~」

 そうとぼけるマレスティーナ。あの顔……絶対何か知っている。

 だけど、教えてくれないのはいつものこと。ヒントをくれただけでもありがたいと思っていおこう。

「はい、そんなわけで今度は私の要件を伝えるね」

「……なに?」

「魔族領に来てほしいんだ」

「え?」

 魔族領とはその名の通り、魔族が治める領地のこと。

 なぜ、魔族領という名前なのかといえば、人類至上主義の人間たちが魔族に自分たちの土地を取られたということを皮肉って『領』と呼んでいるらしい。

「なんで私が魔族領に?」

「そろそろじれったいから言うけど、今あなたのお友達を私のもとで預かってるんだ」

「え?友達?」

「フォーマって、飲み込み早いよね。しかも無口なのに感情豊かなんだよー」

「っ!?」

 フォーマが魔族領にいるだって?

「いつから預かってるの?」

「二年前」

「私がいなくなってすぐじゃない……」

「その間君は何をしていたのかな?」

「えっと、とある場所で仮死状態で二年間倒れてたけど?」

「え、それはちょっと予想外……」

 珍しくマレスティーナが苦笑いをこぼした。

「フォーマに会わせてくれない?あなたならすぐに連れてこれるでしょう?」

「それはできない相談だよ」

「どうして?」

「魔族領に来てもらう理由が無くなっちゃうからね」

「あのさ……なんで私が魔族領に行かなくちゃいけないの?」

 そう聞くと、マレスティーナが頭を掻きながら言った。

「うーん、強いて言うなら、そこで運命が分かれるっていうか?」

「運命……?」

「ご存じの通り、私はすこーしだけ未来が見えるんだよね」

 マレスティーナは単に魔法の天才だからという理由で大賢者という二つ名を与えられたわけではないのだ。

 この世界の地上にあるすべてを見渡す力と、未来が見える力……この二つを持っていてさらにそこに天才的な才能が加わった結果が今である。

「私は未来を詳しく知ることはできないし、見たい未来を見ることが出来るわけじゃない。ただ、たまに見えてくるんだ。運命の分かれ道だけは私が見ようとしなくても勝手に見せてくる」

 運命の分かれ道というと……今後の世界にかかわる影響が変わってくるということか?

「それで?運命の先には何があるの?」

「そこまでは……ただ、魔族領に訪れた君が、魔族領を解放するということは見えた」

「解放……って?」

「さあ?」

 くっそ適当だなこいつ!

「少なくとも悪い影響が及ぶ未来には見えない。だから、来てくれないかい?」

「それはすぐにでも?」

「そうだね、できればすぐ来てほしいけど」

 魔族領を解放するという、よくわからないことに私の存在が必要らしい。それは魔王とも対峙することを指しているのだろうか?

 弱体化している元魔王のユーリよりも確実に今の魔王は強い。いくら強くなったとはいえ、一筋縄でいくとは限らないのだ。

 だが、それ以前に私は……

「魔族領にはいかないわ」

「え!?」

 マレスティーナ素で驚いたような声を上げる。

「どうしてさ!?」

「私は父様を探しに行かなくちゃいけないの。だからしばらくは無理」

「えー!?父親の方が大事!?魔族領解放したらきっと何万と人を救えるよ!?」

「そう?私には魔族が住処を失うだけに聞こえるけど……?」

 マレスティーナは難しい顔を作った。

「まあ選択する権利は君にあるわけだから私は何も言わないよ。ただ、言っておくけどもう一つの未来は魔族領に向かう未来よりも過酷だよ」

「あら、そっちも見えてたの?」

 顔を見る限りあまりよさげな話ではなさそうだ。

「どんな未来だろうと私は父様を救うわ」

 ただそれだけである。マレスティーナの顔的に父様の安否はやっぱり心配いらなそうだし。

「ちなみに、どんな未来が見えたの?」

「……絶望の未来、かな?ただ、絶望っていっても漠然としているというか……私の目じゃまだ見通せない。まあ、日ノ本で一度死んだ君にはそれ以上の絶望なんてあんまりなさそうだけどね!忠告はしたよ。私は、少しお昼寝してくる」

 そういってマレスティーナは次元移動で、再び消えたのだった。

「絶望ねぇ?」

 あんまりなさそうと言われたけど、私、まだまだ未練たらたらだから、俗世に。

「不安だわぁ」

 《お供いたします》

 ツムちゃん、かっこいいこと言うのはいいけど、あなたはどう頑張っても私のスキルなんだから一心同体なんだよ……。

 《……早く帰りましょう》

 あ、誤魔化した。
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