猫の魔術師〜その猫がいずれ最強になるまでの話〜

翡翠由

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 時すでに遅し、レインが訂正を入れる間もなく、同じクラスの生徒たちは特級魔術師と知り合いであったという事実に驚きを隠せずにレインを凝視していた。

(なんでこうなる?)

 支部長……たしかにグレンは優秀だけど、絶対にこういう任務には向いてないよ……。

「それと、もう一人新任の先生がやってきました。その先生は短期間のみ特別授業を開いてくれるそうで、いつも学ぶ授業よりもより深い内容を教えてくださります。もし、授業を受けたければ、その先生の元を訪ねてください。それと、グレン先生には実技を担当してもらいます。残念なことに私は仕事が入ってしまったのでね」

 学校長はもちろんレインが七人目の特級魔術師であるということを知っている。よって、今回発生した『異常現象』についてある程度知らされているし、その処理に追われることになるだろう。

 最近になって発生が続いているこの謎の現象を暴かなくては……こんなことがずっと続いているとやがて凄まじい災害レベルのものが発生してしまうかもしれない。

 それを防ぐためにもレインは頑張らなくてはならない。

 頭を抱えるレインに、グレンが近寄ってくる。

「どうした?頭を押さえて……」

「今頭を押さえていたのは別の理由ですが、頭痛がしているのはあなたのせいです」

「俺か!?」

「良いですか?グレンさんは何もしなくていいです。ただ、ちゃんと生徒たちの面倒を見て授業をしてください?」

 グレンは馬鹿正直なところが多いが、察しは良い方だ。レインの言いたいことをくみ取ってにやりと笑う。

「わーってるよ。ったく、偉そうに指示しやがってな」

 特級魔術師という点で立場は同等なんだが?なんなら僕、今回の事案の責任を負っているポジションで、グレンよりも立場上なのだが?

 レインだけ唯一魔術界直属部隊の隊長という立場だ。他の特級魔術師よりも若輩ではあるが、発言権はそれを引いても同等レベルである。

 いつか、グレンを部下に引き込んで僕が上になってやる……。

 そんな計画を密かに企みつつ、レインは教室から逃げるように立ち去った。これから朝の授業が始まるのだが、その前にやっておきたいことがあった。

「『テス、テス……聞こえる?』」

 もう一人の新任教師というのはグレンとは違って、完全に『アノマリー隊』から任務を命じられた者だ。一応魔術無線でつながっているから、音が拾えるか確認しておかなくてはならない。

 耳に手を当て、返答を待っていると、声が耳の奥から聞こえてきた。

「『こちら、アノマリーβ部隊隊員シエラ。感度異常なし、どうぞ』」

 女性の声であまりにも冷徹な声が聞こえてくる。いや、声に抑揚がなく、人間味を感じさせないような……レインの会ったことないタイプの声だった。一瞬人かどうかを疑ったが、その考えを振り払って返答を返す。

「『うん、こちらも異常なし。無線効果範囲は?』」

「『おおよそ2マイルです』」

「『了解、今日から一か月〈凶弾〉のグレンと共同で『異常現象』の監視を行ってもらう。君は午前の警戒を、グレンは午後。僕は朝方から夜にかけて授業の時間以外すべてを監視に当てる』」

「『了解しました』」

 感度に異常はない。少し変わった子のようだけれど、ヴァージさんの部隊の子なら安心安全だ。ヴァージさんは意外とスパルタな教育をしているそうなので、きっとβの隊員の中でも精鋭の中の精鋭なはず。

「『緊急事態につき、魔道具の使用を許可する。最悪、生徒に正体がバレても構わない。僕が責任を持つから』」

「『はっ、索敵の魔道具ですね?』」

「『そうだ、よろしく頼む』」

 無線を切ったタイミングで後ろからリシルの声がした。

「レイン君ー!もうすぐ授業始まっちゃうよー?」

「ごめん、今行くよ!」

「もう、どこ行ってたの?」

「え?えーっと……まあ、どこでもいいじゃん」

「何隠してるのよ、まあいいけど」

 少しすねたような顔でリシルが頬を膨らませる。

「ほら、早く教室戻るわよ」

「うん」
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