猫の魔術師〜その猫がいずれ最強になるまでの話〜

翡翠由

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魔力感知

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 魔術というものは一日にしてならず。魔術とは長年の積み重ねであり、その積み重ねを学ぶことである。故に、魔術は基本遅咲きなのだ。

 魔術と呼べるような技が使えるようになるまでかなりの時間がかかり、そこで辞めて仕舞えばそれ止まり。だがしかし、その後も継続して訓練すればしっかりとした技が身につくのだ。

 忍耐力が大事になる。

「これどこまでやるの?」

「魔力をはっきりと感じることができるまでだよ」

 早速、レインとアルフレッドの修行は始まった。一刻でも早く訓練を始めたいというアルフレッドの希望により、放課後を使って毎日訓練を行うことになった。

 ああ……研究の時間がどんどんと溶けていく。まだ作りたい魔術がいくつもあるんだ。早く研究に戻りたいという気持ちを心のどこかに抑えつつ、レインはアルフレッドとの訓練のことだけに集中することにした。

 アルフレッドは他の生徒と比べても魔術の理解度が圧倒的に悪かった。まず、基本である魔力を感知するというのができていない。なんとなく感じたような魔力をぼんやりと使っていたに過ぎない。

 だからこそ、今は魔力を完璧に感知するまで座禅を組んでもらっている。だあ、これもかなり苦戦しているようだった。

「うーん……全然わからないよ」

「まさか、諦めないよね?魔術大会に出るんだよね?」

「も、もちろん!」

 アルフレッドのやる気は十分であるが、まだ完全に魔力というものを理解していない。

 魔術大会まで日にちはまだあるが、選考までの日にちは短いから早めに次のステップに入りたいのだが……。

 このままのペースだと間に合わないな。

 レインは悩んだ。『これ』をアルフレッドにやっていいのかどうかわからなかった。だが、少なくともレインはこれをやることで魔力について学んだのだ。

『師匠』のようにやるならば、きっとこうなる。

「水よ……」

 レインの力によって生み出された『水球』は瞬く間に大きく膨れ上がり、レインの持てる膨大な魔力はその一つの『水球』に収縮されていく。そして、それは素早い軌道を描くながら、アルフレッドのすぐ近くを通過した。

「うわ!?」

 当然、瞳を閉じて集中していたアルフレッドは驚き飛び上がった。

「何してんだよ!」

「もちろん訓練のためだよ」

「当たってたらどうなる!?」

「絶対に当てないから安心して。それより……目を瞑っていても今『水球』が見えてたよね?」

「……え?」

 アルフレッドは確かに反応していた。瞳を閉じて、見えるはずのない『水球』が自身の近くに向けて飛んできていることに気がついていたのだ。それこそ、接近する魔力を感じたからに他ならない。

「ほ、ほんとだ!今、目を閉じててもなんかわかったぞ!」

「それが魔力を見る感覚だ。もう一度やる?」

「うぐ……」

 少なからず、これは術者の魔術のコントロールがいかに優れているかで危険度が変わってくる。膨大な魔力を用いる魔力はたとえそれが初級魔術であろうとも、人を簡単に吹き飛ばす力を持っている。

 ぶつかれば大怪我。だが、今回の場合、術者は他の誰でもない、レインなのである。魔術界で七人いる特級魔術師の一人なのだ。術者のコントロールについてはなんの心配もいらないのである。

「大丈夫、僕に任せて」

「うわっ、びっくりした……驚かすなよ」

 深く考えている様子だったアルフレッドお耳に囁くと、囁かれた耳を押さえながら文句を言う。

「……耳が弱いのか?」

「ち、違うからな!?」

 顔がみるみる赤くなる。図星か。

「と、とにかく……もう一回お願いできるか?」

「もちろん」

 危険ではあるものの、これは大変有効な術であった。少なくとも「水の中で一週間暮らす」という訓練よりも圧倒的に簡単なのは間違いなかった。

 今更であるが、アルフレッドの魔術属性は『風』である。

 レインの場合、水の感覚を掴むために溺れさせられた。なら、風の感覚を掴むには何をしたらいいだろうか?

「そうだ……いいこと思いついた」

「?」

 ニヤリと笑うレイン、これからやってくる地獄を全く知らないアルフレッドはただただ魔力を感じる訓練に時間を費やすのであった。
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