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一対十五
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数日後
たくさんの設備に囲まれて、レインは魔術の制作を行っていた。
「できた!これだ!」
新たに作り上げた魔術を早速使ってみる。
レインの魔力が空中に溶け出し、広がっていく。その魔力は空気の一部となり、空気に触れたそのすべてをレインの脳に認識させる。
情報量がとてつもなく、頭が割れそうになるほどに痛み出す。ズキズキとする痛みは常人なら発狂していてもおかしくないだろう。だが、その時のレインにはワクワクとした探求心が勝り、そんなもの微塵も気にしていなかった。
「おお、頭の中でマップが作られていく……」
頭の中でその情報は地図のように整理された。レインのこともその地図にはのっており、緑色がつけられて表示された。そして、無機物は黒色として表示されている。
「殺意や敵意を纏っている人間は赤色。これで、敵と味方の区別がつくはずだ」
これで敵を見失ってもどこから現れるのかがわかる。これは大きなアドバンテージだ。
『異常現象』の中にはそれなりに危険な奴らが山ほどいる。それはレインの認識すらも凌駕して認識外から攻撃を仕掛けてくる可能性もあるのだ。そう言った時に、見失った敵を再度発見できるというのはとても優秀だ。
「さて、久しぶりに外の空気を吸いに行こうかな」
♦
「おお、レイン。久しぶりだな」
「ああ、お久しぶりですね」
「今までどこに言ってたんだ。訓練に言ってたやつはさぼりさぼりってほざいていたぞ」
「ええ、ちょっと新しい魔術の研究をしてたんですよ」
なんせ、数日間ずっと研究室に籠っていたのでね。屋敷にはもちろん食堂なんてものもあるのだが、それを使うことはなく、ロゼリーから運ばれてくる食事を研究室で取りながら研究をしていた。
「ちょうどいい、お前も訓練に参加してくれ」
「えー、僕はやらなくてもいいんじゃないんですか?」
やっと参加するのか、というわずかな期待の視線がいくつも飛んでくる。今は朝方。無限とも思える走り込みを終えた彼らは死にかけながらもこちらを見ていた。
「いや、お前は教師役だ」
「え?」
「俺と一緒にそこで寝ているガキどもに知恵を授けてやるのさ」
いやらしい笑みを浮かべるグレンにレインはドン引きしながら引いた目で見る。
「おい、お前ら!今日はいつもとは違う訓練をやることにした!」
致死量とも思える程の汗水を垂らしながら生徒たちは愕然とした顔をしていた。憎々し気にレインを凝視する生徒たちの瞳に思わずレインは目を瞑って顔を逸らす。
ご愁傷様です。
「今日はお前ら十五人をレインが相手する」
「一対一ってことですか?」
一人の生徒がそう疑問を投げかける。だが、グレンはそれを否定した。
「いや?そんなんじゃお前ら、何も学べずに負けるだけだろ?」
悔しそうな表情、憎々しい表情がこちらに向けられる。
あぁ……視線が痛い。唯一同情ともいえる視線を投げかけているの一年生三人と魔術大会に出場するヘイゼルの四人だけだった。
「お前らにやってもらうのは一対十五だ」
「「「!?」」」
「お前らはレインの周りを囲んだ状態からスタートしてもらう。無論、同時に魔術を撃とうが順番に撃とうが何でもいい。まあ安心しろ。十五人いようとレインが負けるとは思っちゃいねえよ」
……………もはや殺意にも近しい怨念が向けられている気がする。ちょっと、そこまで煽るのはやめていただきたいのだが……?
「そういうわけだ、レイン。出来るだけ魔術でぶちのめしてやれ」
レインにかかれば自身の持つ身体能力のみで十五人に勝つことが出来る。グレンはそう考えていた。身体強化ありきのものなのはグレンは知る由もないのだが。
身体強化を使えば、もはや生徒たちには目で追うことすら難しい速度で動き回ることが出来る。それは攻撃を当てることはおろか攻撃を避けることすらもできないかもしれない。
「まあ流石にそこまではしませんよ」
実際にレインはそれが出来る。だからと言って、それを真似してみろと言ってもできるわけがない。普通の人ではありえないのだ、身体強化というものは。
人間の身体の限界を超えた強化を付与するのは、とんでもない激痛を伴う。
レインの魔術を見て奪えと言われているのだ。
「仮にも同じ学校に通ってるんだから、そこまで差はないと思いますけど……」
「何言ってんだ、成績は100点までだが、実力は青天井だぞ?」
今にも噛み殺しそうな目でコチラを見てくる視線が多数。辛いよ、心が。
「レイン!」
声の下方向を向くとリシルがいる。
「負けないからね!レインを倒して見せるよ!」
「あ、うん。期待してる……?」
ものすごい意気込みでリシルが鼻をふんと鳴らす。
「やる気満々だね、僕も負けてはいられないな」
「ヘイゼル?」
そういえばヘイゼルも魔術大会に出るらしかったのを思い出した。ヘイゼルは実力も成績もトップクラス。さすが生徒会長。さすが皇子である。
「僕だって、悔しくないわけじゃないからね。こんなにグレン先生が褒めるほどの実力があるのか……確かめようじゃないか」
「あ、あの……ヘイゼル?目が怖いよ?どうしちゃったの?」
「はは、僕はいつも通りさ。ちょっと燃えてきてるだけだよ」
その燃えている目が怖いと申しているのだが?
「さあお前ら並べ!囲め!そこから俺の合図で試合を始めるぞ!」
たくさんの設備に囲まれて、レインは魔術の制作を行っていた。
「できた!これだ!」
新たに作り上げた魔術を早速使ってみる。
レインの魔力が空中に溶け出し、広がっていく。その魔力は空気の一部となり、空気に触れたそのすべてをレインの脳に認識させる。
情報量がとてつもなく、頭が割れそうになるほどに痛み出す。ズキズキとする痛みは常人なら発狂していてもおかしくないだろう。だが、その時のレインにはワクワクとした探求心が勝り、そんなもの微塵も気にしていなかった。
「おお、頭の中でマップが作られていく……」
頭の中でその情報は地図のように整理された。レインのこともその地図にはのっており、緑色がつけられて表示された。そして、無機物は黒色として表示されている。
「殺意や敵意を纏っている人間は赤色。これで、敵と味方の区別がつくはずだ」
これで敵を見失ってもどこから現れるのかがわかる。これは大きなアドバンテージだ。
『異常現象』の中にはそれなりに危険な奴らが山ほどいる。それはレインの認識すらも凌駕して認識外から攻撃を仕掛けてくる可能性もあるのだ。そう言った時に、見失った敵を再度発見できるというのはとても優秀だ。
「さて、久しぶりに外の空気を吸いに行こうかな」
♦
「おお、レイン。久しぶりだな」
「ああ、お久しぶりですね」
「今までどこに言ってたんだ。訓練に言ってたやつはさぼりさぼりってほざいていたぞ」
「ええ、ちょっと新しい魔術の研究をしてたんですよ」
なんせ、数日間ずっと研究室に籠っていたのでね。屋敷にはもちろん食堂なんてものもあるのだが、それを使うことはなく、ロゼリーから運ばれてくる食事を研究室で取りながら研究をしていた。
「ちょうどいい、お前も訓練に参加してくれ」
「えー、僕はやらなくてもいいんじゃないんですか?」
やっと参加するのか、というわずかな期待の視線がいくつも飛んでくる。今は朝方。無限とも思える走り込みを終えた彼らは死にかけながらもこちらを見ていた。
「いや、お前は教師役だ」
「え?」
「俺と一緒にそこで寝ているガキどもに知恵を授けてやるのさ」
いやらしい笑みを浮かべるグレンにレインはドン引きしながら引いた目で見る。
「おい、お前ら!今日はいつもとは違う訓練をやることにした!」
致死量とも思える程の汗水を垂らしながら生徒たちは愕然とした顔をしていた。憎々し気にレインを凝視する生徒たちの瞳に思わずレインは目を瞑って顔を逸らす。
ご愁傷様です。
「今日はお前ら十五人をレインが相手する」
「一対一ってことですか?」
一人の生徒がそう疑問を投げかける。だが、グレンはそれを否定した。
「いや?そんなんじゃお前ら、何も学べずに負けるだけだろ?」
悔しそうな表情、憎々しい表情がこちらに向けられる。
あぁ……視線が痛い。唯一同情ともいえる視線を投げかけているの一年生三人と魔術大会に出場するヘイゼルの四人だけだった。
「お前らにやってもらうのは一対十五だ」
「「「!?」」」
「お前らはレインの周りを囲んだ状態からスタートしてもらう。無論、同時に魔術を撃とうが順番に撃とうが何でもいい。まあ安心しろ。十五人いようとレインが負けるとは思っちゃいねえよ」
……………もはや殺意にも近しい怨念が向けられている気がする。ちょっと、そこまで煽るのはやめていただきたいのだが……?
「そういうわけだ、レイン。出来るだけ魔術でぶちのめしてやれ」
レインにかかれば自身の持つ身体能力のみで十五人に勝つことが出来る。グレンはそう考えていた。身体強化ありきのものなのはグレンは知る由もないのだが。
身体強化を使えば、もはや生徒たちには目で追うことすら難しい速度で動き回ることが出来る。それは攻撃を当てることはおろか攻撃を避けることすらもできないかもしれない。
「まあ流石にそこまではしませんよ」
実際にレインはそれが出来る。だからと言って、それを真似してみろと言ってもできるわけがない。普通の人ではありえないのだ、身体強化というものは。
人間の身体の限界を超えた強化を付与するのは、とんでもない激痛を伴う。
レインの魔術を見て奪えと言われているのだ。
「仮にも同じ学校に通ってるんだから、そこまで差はないと思いますけど……」
「何言ってんだ、成績は100点までだが、実力は青天井だぞ?」
今にも噛み殺しそうな目でコチラを見てくる視線が多数。辛いよ、心が。
「レイン!」
声の下方向を向くとリシルがいる。
「負けないからね!レインを倒して見せるよ!」
「あ、うん。期待してる……?」
ものすごい意気込みでリシルが鼻をふんと鳴らす。
「やる気満々だね、僕も負けてはいられないな」
「ヘイゼル?」
そういえばヘイゼルも魔術大会に出るらしかったのを思い出した。ヘイゼルは実力も成績もトップクラス。さすが生徒会長。さすが皇子である。
「僕だって、悔しくないわけじゃないからね。こんなにグレン先生が褒めるほどの実力があるのか……確かめようじゃないか」
「あ、あの……ヘイゼル?目が怖いよ?どうしちゃったの?」
「はは、僕はいつも通りさ。ちょっと燃えてきてるだけだよ」
その燃えている目が怖いと申しているのだが?
「さあお前ら並べ!囲め!そこから俺の合図で試合を始めるぞ!」
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