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第四話
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「そう。過去の気持ちの中には、たしかに愛情もあったと思うのです。でも今思い返すと疑問になってしまいました。その思いは『愛』や『恋』で正解なのかしらって。
小説のように、燃えるような、身を焦がす感情を彼に持ったことはないですから。好きすぎて殺してしまおう、なんてこともね」
「ミステリ好きの表現ですね」
「古今東西、本の中では、恋愛のもつれで殺人が起きる事が多いでしょう? でもわたくしは殺人を犯すほどの気持ちは持ち合わせていないし、なんならもう彼のことは好きではなくなってしまったようなのです。
家のために、貴族として、どうしてもこの方と添い遂げなくてはと思い込んでいたけれど、······彼の元から帰宅する道すがら、『ああ、もう解放されたんだわ』って。縛っていたあれこれがなくなった、ただのわたくしは、彼が好きではないわ、と」
「お嬢様が罪を起こさなくてよかったです」
「そうね、うふふ」
ザラメの濃く残ったコーヒーを飲み切ると、わたくしはふうと息を吐きました。このカフェでは柱時計がコチコチと静かな音を立て、レースカーテン越しの陽光までも柔らかく感じられます。とても居心地がいいのです。
「整理がついてしまわれたのですね」
「そうなのです。たとえ恋愛に準拠した愛ではなくても、広義の意味での愛として、『過去の愛の証明』とやらは出来ないものかと思案していましたの。意外と負けず嫌いだったのですね、わたくし」
「出来ますよ」
「えっ?」
「ただし手帳とは違う方法で、です」
小説のように、燃えるような、身を焦がす感情を彼に持ったことはないですから。好きすぎて殺してしまおう、なんてこともね」
「ミステリ好きの表現ですね」
「古今東西、本の中では、恋愛のもつれで殺人が起きる事が多いでしょう? でもわたくしは殺人を犯すほどの気持ちは持ち合わせていないし、なんならもう彼のことは好きではなくなってしまったようなのです。
家のために、貴族として、どうしてもこの方と添い遂げなくてはと思い込んでいたけれど、······彼の元から帰宅する道すがら、『ああ、もう解放されたんだわ』って。縛っていたあれこれがなくなった、ただのわたくしは、彼が好きではないわ、と」
「お嬢様が罪を起こさなくてよかったです」
「そうね、うふふ」
ザラメの濃く残ったコーヒーを飲み切ると、わたくしはふうと息を吐きました。このカフェでは柱時計がコチコチと静かな音を立て、レースカーテン越しの陽光までも柔らかく感じられます。とても居心地がいいのです。
「整理がついてしまわれたのですね」
「そうなのです。たとえ恋愛に準拠した愛ではなくても、広義の意味での愛として、『過去の愛の証明』とやらは出来ないものかと思案していましたの。意外と負けず嫌いだったのですね、わたくし」
「出来ますよ」
「えっ?」
「ただし手帳とは違う方法で、です」
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