映画をむさぼり、しゃぶる獣達――カルト映画と幻のコレクション

来住野つかさ

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003 映画コレクター佐山氏亡くなる③

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休憩スペースの皆が息を呑む。

「それで、急ぎ今夜に佐山邸にお邪魔するのだ。佐山氏は、自身にもしものことがあった場合は当館に連絡し、友人知人はもちろん新聞等にも死去の一報は載せるなということを奥様や弁護士に言っていたらしい」
「それって」
「おそらく他のコレクターに家探しをされないうちに、秘密裏に国に保管してほしいということだ」

 私達は思わず息を呑んでいた。この間冗談混じりに話していたことは噂ではなく本当のことだったのか。

「だから、喪服も着ずに、夜人目を避けて来てほしいんだって。でも何があるか分からないから大型車で乗り付けたいけど、トラックで行ったらバレるかもだよねえ」

 調査資料課イチのおちゃらけ者、池上聡太いけがみそうたが彼のキャラクター通りに話してくれるが、いつもと違って目は笑っていない。

「ふーん、何か大変なのですね」

 それでは彼らは日が落ちたら佐山氏の邸に伺うのか。そんな風に思っていたら、西村課長がこちらを見やって申し訳無さそうに頭を下げる。

「すまないのだけど、館長からこれは調査資料課で内密に動いてほしいと言われているんだ。だからまずこの話は他言無用ということ。それから、現地で物品を運び出す際に仮に目録を作ることになりそうだから、どちらかに来てもらいたいのだけど」
「えっ、今夜ですか? 私無理です。子供のお迎えありますもん」

 山森が速攻で断り、当然全員の目は私に向かう。

「日比野さん、いい? 残業代は出すからさ」
「······はい。喪服なしでいいんですものね。それなら行きますよ」

 私が返答すると、「よろしくねー」と言いながらさっさと山森が立ち上がり、自席の片付けに行ってしまった。

「さすが『淡々系』の日比野さんだね」
「それ、前も言いましたけど分からないんですが」
「······僕は、おじさんなのか? 若者と話が合わない」

 落ち込む尾崎隆弘おざきたかひろ係長を宥めるように、池上が補足してくれる。

「昔、90年代~2000年始めくらいかな? 淡々と日常を描く映画とか漫画が流行って、『淡々系』とか『日常系』とか言ったんだよ。日比野ちゃんなんて下の名前もそう読めるし、今なら『ヒビノ系』ってことかな? 時代は巡るねえ」
「ああ、バブルの時の服を『渋カジ系』とか言うのと同じですか?」
「大雑把には同じだけど、ちょっと違うし傷ついた」
「俺も」

 何故か尾崎係長だけでなく田代剛史たしろつよし主任まで落ち込んでいる。どうしてだろう?
 
「えー、似合ってていいね! じゃあ私、これから日比野さんのこと『けいちゃん』って呼ぼう!」

 山森がまた戻って来て何故かあだ名まで決定してしまったところで、西村課長が手を叩いた。

「皆、悪いね。じゃあこの後会議室に集合しよう。詳細を話すから。ではまた後で」
 
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