映画をむさぼり、しゃぶる獣達――カルト映画と幻のコレクション

来住野つかさ

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073 比江島氏の遺言状④

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 比江島氏のマンションを出た後。少しお時間をもらいたいと言われ、西村課長と私は辻堂刑事に連れられて駅前のフルーツパーラーに入った。

「実は甘いものが好きなんです。日比野さんみたいな若い人がいれば入りやすいですからね」

 照れたように笑う辻堂刑事につられて、私達も甘いものを頼んでしまった。
 大きなパフェが届いて喜ぶ辻堂刑事とともにしばらく甘味を楽しみ、コーヒーで口直しをしたところで辻堂刑事が話を切り出した。

「あの遺言状ですが、少しおかしい気がしませんか?」
「どういうことです?」
「いや私は映画に関して門外漢ですから逆に教えていただきたいのですが、比江島さんの遺言状には遺産相続のことについて、注釈があったじゃないですか。『もし八頭早苗氏が遺贈を求めない場合、古書店の伊織堂に委託して売却を行い現金資産とすること』と。ヨシイ古書店と懇意だったというのに、伊織堂という他の古書店を指定している。
 これはどういうことだと思いますか?」

 西村課長が理由は分かりませんが、と前置きしてから答える。

「単純に老舗の伊織堂の方が売却手続きに慣れているので、スムーズに適正価格で処理してくれると思われたのかもしれませんよ」
「それでも一言添えておけば、友人の古書店の利益にもなるし融通も聞かせてくれるかもしれない。それなのにわざわざ違う店を指定している。二つの店の差は何でしょう? 何かあると思いませんか?」
「······それは分かりません。比江島氏がヨシイ古書店店主と付き合いがあったにせよ、友人と呼べるほどの関係ではなかったのかもしれません」

 それ以外言えることはない。西村課長の返答に私も頷いた。辻堂刑事もコーヒーを口にしながら納得した顔を見せる。

「まあ順当な考えですとそうなりますよね。
 それからもう一点。実は八頭さんのご遺族からも日比野さんに会いたいとの話があるんです」
「それは館宛にも来ています。あちらで何かトラブルが起きているようで、当夜の話を確認したいということらしいのですが」

 そんな話が来ていたのか。西村課長もため息をついているので、私に気を遣って情報をせき止めてくれていたのだろう。

「日比野さん、無理ならお断りしてもいいんだよ」
「課長、お気遣いすみません。······可能であれば、比江島氏の弟さんとお伺いして、先に弟さんにお話を済ませていただいてから私達もご挨拶させていただくのはどうでしょうか。差し障りがあるようでしたら後からお邪魔するようにしますが」

 
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