怪談掃除のハナコさん

灰色サレナ

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12:踊る人体模型 学校潜入編

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「ユウキ、こっち」

 あれから一週間、こそこそと準備した俺とカコはこっそりと学校近くの公園で合流する。
 まだ午後6時、暗くなりかけてはいるけどまだまだ人は多い。俺は荷物満載まんさいのリュックを抱えながらカコの所まで急いだ。
 
「わりぃ、遅れた」
「大丈夫、おばさんとおじさんは?」
「問題ないよ……カコのお母さんに感謝かんしゃだな」
「この間泊めてもらったお礼だから、今日一日だけだよ? 準備は良い?」

 そう、カコにお願いして俺の母さんに電話を一本入れてもらったんだ。
 内容はこうだ『先日娘が泊めてもらってありがとう、お礼をしたいから勇樹君を我が家に招待したい』……要約ようやくするとこんな感じ。

「……よく考えたら6年で初めてだな」
「そうだっけ? 私がユウキの家に泊まる事はめちゃくちゃ多かったけど」
「今でも覚えてる……お前、初めてうちに来た時は児童虐待ぎゃくたい事件と勘違かんちがいされて母さんと父さんに保護されたんだもんな……」
「あれは大変だった……引っ越して来たばかりでお母さんとはぐれて説明もろくにできないから大事おおごとになりかけたんだよね」

 半泣きどころか泣きじゃくるカコの相手に当時の俺はもう頭を抱えた。
 結局あの時はどうやってカコを泣き止ませたのか覚えてなかったけど……それが最初だって事は覚えている。

「お前が俺の部屋でお昼寝してる時に迎えに来たんだっけ?」
「そうそう、でもそれからだよね。ユウキの家に駄々だだこねてお泊りする事増えたの」
「あったあった……でもその話は今度にしようぜ。急がなきゃ」
「うん、どうせ今晩お泊りだからね……学校で」
「そういう事、今日で3つ全部コンプリートだ行こう」

 そう言って俺は学校へと向かってカコと歩き始めた。
 途中でクラスメートにサッカーとかさそわれたけど、なぜかすぐに引き下がってしまう……なんでだろう? なんか、カコを見ておびえてた気がするのは気のせいなのかな???
 そこでふと思い出したことがあって、口にする。

「そういえば……カコが居るとサッカーとか誘われないなぁ」
「にゃっ!?」
「……猫?」
「に、にゃー……じゃなくて! 何よそれ!! びっくりして変な声が出ちゃったじゃない!!」
「ご、ごめん。なんかそんな気がしただけで」
「もう! 変なこと言わないで!!」

 ……猫耳としっぽが在ったらすげえ立っているような幻覚が見える。
 そんなに俺……変なこと言っただろうか?
 結局、学校に着くまでそのしっぽは『ぴーん』と立ったままだった。

「さて、と……先生たちの車は?」

 職員用の扉を二人で乗り越え、木の陰から双眼鏡そうがんきょうを通して先生の車が何台残っているかチェックする。1、2……4台。
 1台はユリちゃん先生の車で残りの3台は誰のかわからない。

「ユウキ、貸して」

 背中越しに手を伸ばしてきてカコが俺の双眼鏡を取り上げる。
 「邪魔」と幼馴染に一言で切って捨てられて、無理やりしゃがまされる俺……頭に乗った手が重い。

「ええと、ユリちゃん先生と目黒先生……教頭先生。あれ? あの車って……校長先生のだよ」
「まじ? 校長先生の病気って治ったのか?」
「まあ、ただの風邪なら一週間もあれば治るよね」
「そりゃそっか……ところで、俺の頭からそろそろ手をどけてくれませんかね? カコさん」
「ちょうどいいからまだ駄目……あ、ユリちゃん先生と目黒先生が帰るよ」

 そう言ってカコは俺の隣にしゃがみ込んで隠れる。
 今度は長い髪が俺の顔にもしゃもしゃと絡みつく……勘弁かんべんしてくれ。とはいえ声を出すと見つかるかもしれないから我慢がまんして息をひそめた。

 そんな俺たちに二人の先生の会話がとぎれとぎれに届く。

「あの二人…………でしたね……」
「まあ、バレる訳にはいきませんから……6不思議は……危険」
「勇樹君の事を考えると……ても……」

 意外と近い所を歩く先生達とのニアミスに……俺とカコが互いの口を手でふさぎ、目を見開いて緊張する。
 ……6不思議??? え、全部で5つじゃないのか?
 しばらくそのまま我慢していたら、二台の車が通過していく……。
 そのまま30数えて俺とカコは互いの手を口からゆっくりと外す……。

「……ごめんユウキ、髪の毛絡まっちゃった」

 笑いをこらえながらカコが俺の顔から髪の毛をどけた。

「もう慣れた……笑うなよ」
「ごめんごめん……はい、もう良いよ」

 そうして俺たちは堂々と職員通路から学校内に侵入する。
 この一週間、こっそり確認してたんだけど学校のこの扉……夜の7時くらいまでは確実に開いているんだ。
 そして……夜の7時を過ぎると当番の先生が見回りを終えてここの鍵を締める。その間だけはここの扉は安全に入れる場所だった。
 
「どう?」
「誰も来ない、大丈夫だ……まずは二階に行こう」
「あたしたちの教室だね」
「あそこは秘密の出入り口があるからな」

 こそこそと二人で身を屈めながら、靴を回収して二階への階段へと向かっていく。
 幸い階段を上ってすぐの廊下は見通しのいい一本道、段差を利用して奥の様子をうかがうと予想通り誰も居ない。
 唯一……三階からはコツコツと誰かが歩く音が遠くで響いてる程度……多分あれが見回りの先生、教頭先生か校長先生のどちらかだろう。

 俺とカコはもうすぐ暗くなる学校内の廊下をゆっくりと壁伝いに進んでいく、俺たち6年生の教室は二階の南校舎。校庭側に面している教室だから道路からは見えにくいし、まさかそこで一泊するとはだれも思わない。
 しかもなんで今日かと言うと予報では夜から大雨なので先生たちも早めに帰るだろうと予想したからだ。

「カコ」
「分かった」

 勝手知ったる学校内、すぐに俺たちの教室に着いた。
 前と後ろの出入り口はもちろん鍵がかかっているけど……秘密の入り口がある。背中のリュックがあるので俺じゃなく身軽なカコが潜入役だ。
  
 実は二階の教室の壁、この下の部分が数か所開くことをこの数年で知っている。
 なぜかというと感染症かんせんしょう対策に換気かんきをすると言って先生が開けてたんだよ……そのおかげで小柄な生徒がくぐる遊びを編み出して大目玉を喰らう事があった。
 6年生ともなるとさすがにくぐれる生徒は限られて……カコが実はギリギリだったりする。

「……意外とせまい」

 もぞもぞと潜り込んだカコの言葉に嫌な予感が的中してトラブルが発生する。
 後もう少しと言った所で……ものの見事にカコのお尻がつっかえていた。
 しばらく悪戦苦闘して腰をよじったり、勢いをつけて通過しようとしているけど……。

「ユウキ……お尻押して」

 あきらめたようにカコの足が力を失くしてカコが救助を要請する。

「……お前、自信満々に入れるって言ってたよな」
「その……お、お尻を触んないでお尻を押して……くれないかな?」
「なんだそのなぞなぞみたいな要求、良いから押すぞ」

 俺は呆れつつ、仕方なくカコのお尻を両手で無理やり押し込んだ。
 声を我慢して痛みに耐えながらもカコは潜入せんにゅうを果たす。始まる前から大変だったけど……俺とカコは教室を探索たんさく拠点きょてんとすることに成功したのだった。
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