長女は家族を養いたい! ~凍死から始まるお仕事冒険記~

灰色サレナ

文字の大きさ
99 / 255

世界のルールを舐めちゃいけない ①

「幸太郎!? 何本矢を外してるのよ!!」
「無茶言わないでもらえるか!? 骨だけの連中だぞ!!」

 夜ノ華が蹴って、灰斗が即席の木刀で殴り、幸太郎が……なぜか弓にこだわってるせいで邪魔でしょうがない。骸骨と三人の戦いは膠着状態に陥っていた……。

「頼むからその弓でぶん殴れ! あんなスカスカの身体にこの暗闇で矢が当たる訳ないだろう!?」
「嫌だ! ストライカーに傷がついたら泣くに泣けない!!」
「幸太郎……面倒くさいな君……」

 幸いなことに骸骨の動きは機敏だけれども元の骨の強さしかないみたいで、夜ノ華なら蹴れば折れるし灰斗の木刀でも難なく砕ける。しかし、幸太郎だけは先ほどからずーーーっと狙撃を続けていて……金属を多用した弓は確実に鈍器としても優秀なのに。

「無理よ灰斗さん! 幸太郎バイオ〇ザードクリアできたことないの!! このチキン!!」
「そういう夜ノ華だってホラー映画見てトイレに行けなくて――「その先言ったら地獄を見せるわよ!! お父さん!!」」

 そう、実は二人ともこの手の敵が苦手で極力近寄りたくない、見たくないの悪循環でしかなかった。灰斗が平気なのは単純に『触れられるなら壊せる、問題ありませんが何か?』とちょっとズレた感性の持ち主だったりする。
 そして……こういう時こそ最高のパフォーマンスを見せるはずの令嬢様は……

「レティ、イイコイイコ、コワクナイコワクナイ」
「あれは夢あれは幻覚あれは……」

 四つん這いで耳を塞ぎ、現実逃避をしながらぶつぶつとつぶやき続けていた……むしろゴブリンのバニに宥められるという始末だ。

「このパーティの最大の弱点がホラーですか……みんな骸骨くらい簡単に壊せるでしょうに」

 ふかーーーくため息をついて灰斗が文句を言う。最初こそ土の中から出てきて元気に追い回されて驚いたものの、それ以上にレティシアの大混乱を見て冷静になってしまったのだ。
 それ以降は最前列でカタカタと元気に突進してくるガイコツを地道に蹴散らしている。

「怖いもんは怖い!!」
「奥さん最前列にけしかけて何情けないこと言ってるんですか君は」
「そうだそうだー!!」
「夜ノ華さん!? 便乗ついでにこっそり私の後ろに隠れるの止めてもらえませんかねぇ!?」

 割と一生懸命にガイコツを砕いているが一向に減っている気配が無い。そもそも多数の相手は灰斗は苦手で、洞窟という閉鎖空間ゆえに一度に迫りくる数も制限されているからこそ耐えていられる。
 このままでは灰斗の体力が尽きた時点でお終いだ。

「タバコ吸う暇もありゃしないっての……」

 とうとう後ろで夜ノ華と幸太郎が言い争いというか、一応どうしたら現状を打開できるか考え始めた。レティシアが前線に立てばあっという間なのだが……ちらりと灰斗がレティシアの様子をうかがうとお尻を突き出してそっぽを向いたまま。現状は悪化の一途をたどる。

「なあ、ゴブリンのお嬢さん。どっかに逃げ道はあるかな? 見ての通りおじさん結構ピンチだったりする」

 木刀で先頭のガイコツの頭を殴りつけ、ほかのガイコツへクリーンヒットさせたりと工夫しながら戦いつつバニにダメもとで話しかける。

「ガイコツ、ヨワイ」
「そうだな、弱いな……でもとにかく数が多いんだ。僕らの数十倍の数がいる」
「ワカッタ、ヘラス」
「そりゃ助かる……はい? なんだって?」

 バニからの予想外の答えが返ってきて思わず灰斗は聞き返す。

「バニ、マホウ、ガイコツヘラス」
「……確認だけど、魔法でガイコツ減らせるのかい?」

 ローブを目深にかぶったままバニが頷く。どうやらできるらしい。

「どれくらい時間を稼げばいいかな?」
「スグデキル」
「……魔法を使ったら君が倒れるとかないよね?」
「イッパイツカウ、ツカレル。ガイコツケス、ソンナニツカレナイ」
「じゃあ、僕がこのまま維持……ガイコツをとめるからお願いしていいかな?」
「ワカッタ、ウィスプ……ガイコツネムラセテ」

 バニが人差し指を骸骨の群れに向けるとその指先に淡い光が……数十個発生した。唐突な発生に灰斗はもちろん、夜ノ華と幸太郎ですら目が眩んで悲鳴を上げる!

「目が! 目がぁぁ!!」
「夜ノ華! 夜ノ華ぁぁ!!」
「二人とも!! ネタに走る余裕あるのならレティシアさんを抱えてください!! とにかくここから出ますよ!? でも、まぶしぃ!?」

 閃光弾の様に視界が光で閉ざされるくらいの光量をバニは平然と見据えて骸骨に飛ばす。
 目を押さえてその場にとどまる夜ノ華たちをゆっくりと撫でて、穏やかな声で歌い始めた。

「~~♪~~♪♪」

 その歌に呼応する光の玉は骸骨に飛び込み縦横無尽に踊る。その玉に触れたガイコツはそのまま崩れ落ち、物言わぬ躯へと還っていった。

「バ、バニ! 何にも見えないけど大丈夫なの!?」

 夜ノ華にはバニが歌っているのだけは分かるが、ほかにはカラン、と軽い音が鳴り響きだんだんと彼女の緩やかな声がはっきりとしていく。
 やがてバニがふう、と軽く背伸びをする頃には静かな夜が戻り。ずーっと目と耳を塞いでいたレティシアが恐る恐る振り向くとあれだけ騒がしかった骨の合唱は跡形もなく消え失せて、白い山が幾つかできあがっていただけであった。

「何があったんですの?」
「レティ、コワガリ」
「ひあっ!?」

 落ちていた頭蓋骨をひょい、とかぶってレティシアに笑いかけたバニを見て彼女が卒倒しても問題ない位に。
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。