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おいおい、ファンタジーにそんなもん持ち込むんじゃねぇよ!?
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「……本気か?」
「本気だよ。国内は姉ちゃんがオル姉と基本的に守る。他は各自の判断でスタンビートの鎮圧、決まってるのは死なない事だけ」
真司は医療班から貰った魔法薬を飲み干してガラス瓶をそこらへんに投げる。
あっという間に流れる景色と一緒に遠ざかる空のガラス瓶。
現在時速200kmでウェイランドに出戻り中のバイク少女、キズナはため息をつく。
ここまでの経緯をざっくり真司から聞かされて自分の短絡さに、何度目かの自己嫌悪も降りかかった。
「……で、アイツ何する気なんだ?」
「わかんない」
「……お前、弟だろう?」
「ガチギレした姉ちゃんが何するかなんて僕程度に想像できると思う?」
「……もっともだ」
きっと禄でも無い改造した、禄でも無い爆薬や禄でも無い遠隔爆破装置とか持ち出してくるんだろうな。
キズナが想像できる弥生はいつも通り盛大にやらかす姿だ。
「で、レンと文香は?」
「レン? 今突っ込んでくると思うよ?」
「……なんだと?」
――ぱぁん!!
キズナたちの前方、北門の上から水平に黒い竜がすっ飛んできた。
闇夜に紛れてレンの姿が今まで見えにくかったのだ。
「今……問答無用砲を撃ってるのは文香だけだよ……」
景気良く降り注ぐ光の線は正確無比に騎士や空挺騎士の乗る飛竜を避けて、敵の戦車やベルファゴールを撃破していく。
そして……
「あ! キズナちゃぁぁ……………」
レンが通り過ぎる際、楓と牡丹がすれ違いざまに何か言っていたが……聞き取れない。
多分無事でよかったとかそんなんだと勝手に解釈しておくキズナだった。
「本気で守りを捨てやがった……」
万が一のレンと言う大型機相手に取っ組み合いができる存在まで前に送ってしまった。
それに戦場のあちらこちらで光る剣がばっさばっさとディーヴァを蹴散らしているのも見える。
「あれはなんだ?」
「付喪神の剣に気に入られたアルベルト陛下。戦果をあげないと部下の隊長さんに刺されるんだって必死だったよ?」
「……何したんだ一体」
そりゃあ、娘さんが……ねえ? 良い子は聞かない方が良いです。
「それに……」
真司が説明を続けようとするがもうすぐ北門に入る、そこにはすでに何機かの中型多脚戦車が無理やり城壁を壊して侵入路を広げようとしていた。
「ちょっと後でだ真司! くそ、武装はねぇのか?」
コンソールの表示を探すが武器のアイコンを見つけられず視線を泳がしていると……モニターに。
『不要、車線上から退避を推奨』
と表示される。
「退避?」
次の瞬間。
――ダァァァァン!!
――パタタタタタタタタタッ!!
鼓膜を直接ぶん殴られるような大音声と共に、門に群がっていた中型多脚戦車が数機。
バラバラになって宙を舞った。
「なんだぁ!?」
連続する機関銃の発砲音も聞こえてきて。
ぐい、とキズナは身体を傾けてバイクの進路を飛散する部品から逃がした。
一瞬、弥生の仕業かと思うが……その答えが悠々と出てきた。
長い砲身を持つ55口径120mm戦車砲、ギャリギャリと瓦礫も敵の残骸も踏み砕き進むキャタピラ……水冷4サイクル水平対向型8気筒水素エンジンと油圧、電磁併用の機械式無段階自動変速操向機を装備する……まごうことなき正統派のフォルムを持つ戦車。
「キズナ姉が突っ込んだ後、アレを起動させたり、魔法の術式を刻んでて一時間近くかかっちゃったんだよ」
しかも……
『あーあー、そこの格好いい青いバイクに乗った二人組。おっかない監理官補佐のお嬢さんが呼んでるからなるべく早くギルドの中庭に来てねー』
気の抜けた、けだるげな中年の声が戦車のスピーカーから発せられる。
「だれだあの声?」
「ぬらりひょんって言う妖怪のおじさんと夜音。二人で戦車動かしてる……」
「妖怪が……戦車?」
「夜音が免許持ってるから……」
諦めきった真司の言葉が重い。
「もう訳が分からない!!」
「わけわかんないよね。しかもあれも付喪神になっちゃったんだって……」
「追加情報ありがとよ!! もう考えんの止めるぞ俺は!!」
遠い目をしながら進路を戻すと今まで油まみれだったディーヴァが戦車砲の起こした火花で燃え始めたのか……立ち上がり、作戦行動に戻ろうとしていた。
「やべぇ、燃えて油が……」
そう、油が燃えて滑らず立てるようになったのだ……このままでは。
「大丈夫。後……キズナ姉、気をしっかり持って」
「はあ?」
見る見るうちにアリが砂糖に群がっていくかの如く、ディーヴァが国内に入ろうとする。
その隊列が再度吹き飛ばされた。
「来たよ……怖いの」
ベルファゴールも数機、国内の敷地内に侵入されたがその中の一機が見覚えのある細い剣で下から貫かれ、撃墜される。
カタカタと、歯を鳴らして真司が震える。
「戦車以上に怖いのって……おい、嘘だろ」
――ズシン
――ズシン
――ズシン
――ズシン
一歩一歩、その地を踏みしめて。
己が統治する貴族の誇りをかけて。
そんな存在に物言わぬ鋼の兵器が殺到する。
どう考えても生身だもん、障害になるわけがない。こんぴーたーでそう判断した。
間違いですハイ。
「危機なのであっる」
気合一発、先頭の大型陸戦兵器へその拳を握りしめて叩きつける。
ひしゃげる装甲、深々と食い込む生身の腕。
遅れてやってくる大気が破裂する衝撃音。
音速を超えているらしい、その右ストレート。
「一体誰の許可を得て、我が王の領地に踏み込んだであるか? 吾輩激おこぷんぷん丸なのであっる!!」
悠然と、気品を体現し、撫でつけていつも通りのてっかてかのオールバック。
名前を呼んではいけないウェイランドの貴族……
フレアベル・ウザインデス三世が立つ。
「……キ、キン」
キズナの全身に鳥肌が立ち、悪寒が全身を支配する。
「あれ、姉ちゃんの指示だからね? 僕関係ないからね?」
なりふり構わない、の意味を辞書で調べやがれ!!
あ、正しいや。
「なんで、アイツは……ぜ、全裸なんだ?」
「よく見なよ、ちゃんとパンツと靴だけは身に着けてるからBANされないよ」
「見れねぇんだって!! 知ってるだろ!? 嫌がらせの度合いがあのちょんぱよりひでぇぞ!?」
「はは、いまさら何言ってんの? 姉ちゃんが本気で悪乗りしたらかなう奴なんていないって」
「やよいぃぃ!! 俺が悪かったぁ!! もう俺二度と命令無視しねぇ!! 絶対!! 誓う!!」
そんな懺悔なんかで許さないんだからね! を代弁するかのようにウェイランドの貴族は過去一番輝いていた。
その強すぎる強さゆえに、恐れられ……てはいないな。
単純にうぜぇから避けられてただけだった。
「なんか刺さったっぽいのである!! 痛いので返すのである!!」
表皮で大型兵器の大口径ライフルの弾丸を食い止め、素手で投げ返すフレアベル。
その勢いは火薬で発射した時の数倍の速度で放たれる。
木っ端みじんに直線状のディーヴァや中型戦車が数体ゴミと化した……。
「あらあらお兄様、便利なやり方を見つけましたのね」
真紅のドレス、純白の日傘……そして。
キズナの愛用するオートマチック拳銃そっくりな、金色の拳銃。
「でも、これも……結構便利ですのよ?」
――タタタタタタン!!
無造作にディーヴァの群れに向けて淑女が引き金を引く。
その弾丸は正確に眉間を貫き、機能停止に追い込んだ。
「……なんでアイツが銃を?」
「禁忌武装の銃だって……なんか意気投合したらしいよ? 変態的に」
「数の暴力に変態で立ち向かう国に居たくねぇよ!?」
もっともである。
「あ! キズナ! 真司様! そこにいると危ないですわよ!!」
かなりの距離があるのにマリアベルが正確に二人の存在を見つけ、注意を促す。
もうこれ以上危ない物なんてねぇよ。とキズナが内心叫んだ瞬間。
――キィィィ……………………ィィィィン!!
轟、とキズナたちの乗るファングの傍。
かすりかねない距離を一条の何かが通過する。
「うおっ!」
「ひあっ!!」
ぐらりと車体が揺れて危なく転倒するところだった。
「何だ今の!?」
あまりにも早すぎて認識できなかったキズナが悲鳴を上げる。
「弥生ので、でんじれーる何とか砲? なんかすごい攻撃ですわ!」
正式名称を覚えられなかったが、確かすごい武器だったのだけは覚えているマリアベル。
がんばって避けてくださいまし! お兄様がついうっかりぶつかって背中をちょっとやけどしましたわ!!
と、キズナを見送る。
「おい、真司」
「何、キズナ姉」
「アイツ何する気なんだ?」
「もう諦めたら?」
北門をくぐり……と言うかもはや門の跡地ともいうべき場所を通過し。
ギルドに向かう二人は……とりあえずどうやって弥生のご機嫌を取るかが一番の難題だった。
「本気だよ。国内は姉ちゃんがオル姉と基本的に守る。他は各自の判断でスタンビートの鎮圧、決まってるのは死なない事だけ」
真司は医療班から貰った魔法薬を飲み干してガラス瓶をそこらへんに投げる。
あっという間に流れる景色と一緒に遠ざかる空のガラス瓶。
現在時速200kmでウェイランドに出戻り中のバイク少女、キズナはため息をつく。
ここまでの経緯をざっくり真司から聞かされて自分の短絡さに、何度目かの自己嫌悪も降りかかった。
「……で、アイツ何する気なんだ?」
「わかんない」
「……お前、弟だろう?」
「ガチギレした姉ちゃんが何するかなんて僕程度に想像できると思う?」
「……もっともだ」
きっと禄でも無い改造した、禄でも無い爆薬や禄でも無い遠隔爆破装置とか持ち出してくるんだろうな。
キズナが想像できる弥生はいつも通り盛大にやらかす姿だ。
「で、レンと文香は?」
「レン? 今突っ込んでくると思うよ?」
「……なんだと?」
――ぱぁん!!
キズナたちの前方、北門の上から水平に黒い竜がすっ飛んできた。
闇夜に紛れてレンの姿が今まで見えにくかったのだ。
「今……問答無用砲を撃ってるのは文香だけだよ……」
景気良く降り注ぐ光の線は正確無比に騎士や空挺騎士の乗る飛竜を避けて、敵の戦車やベルファゴールを撃破していく。
そして……
「あ! キズナちゃぁぁ……………」
レンが通り過ぎる際、楓と牡丹がすれ違いざまに何か言っていたが……聞き取れない。
多分無事でよかったとかそんなんだと勝手に解釈しておくキズナだった。
「本気で守りを捨てやがった……」
万が一のレンと言う大型機相手に取っ組み合いができる存在まで前に送ってしまった。
それに戦場のあちらこちらで光る剣がばっさばっさとディーヴァを蹴散らしているのも見える。
「あれはなんだ?」
「付喪神の剣に気に入られたアルベルト陛下。戦果をあげないと部下の隊長さんに刺されるんだって必死だったよ?」
「……何したんだ一体」
そりゃあ、娘さんが……ねえ? 良い子は聞かない方が良いです。
「それに……」
真司が説明を続けようとするがもうすぐ北門に入る、そこにはすでに何機かの中型多脚戦車が無理やり城壁を壊して侵入路を広げようとしていた。
「ちょっと後でだ真司! くそ、武装はねぇのか?」
コンソールの表示を探すが武器のアイコンを見つけられず視線を泳がしていると……モニターに。
『不要、車線上から退避を推奨』
と表示される。
「退避?」
次の瞬間。
――ダァァァァン!!
――パタタタタタタタタタッ!!
鼓膜を直接ぶん殴られるような大音声と共に、門に群がっていた中型多脚戦車が数機。
バラバラになって宙を舞った。
「なんだぁ!?」
連続する機関銃の発砲音も聞こえてきて。
ぐい、とキズナは身体を傾けてバイクの進路を飛散する部品から逃がした。
一瞬、弥生の仕業かと思うが……その答えが悠々と出てきた。
長い砲身を持つ55口径120mm戦車砲、ギャリギャリと瓦礫も敵の残骸も踏み砕き進むキャタピラ……水冷4サイクル水平対向型8気筒水素エンジンと油圧、電磁併用の機械式無段階自動変速操向機を装備する……まごうことなき正統派のフォルムを持つ戦車。
「キズナ姉が突っ込んだ後、アレを起動させたり、魔法の術式を刻んでて一時間近くかかっちゃったんだよ」
しかも……
『あーあー、そこの格好いい青いバイクに乗った二人組。おっかない監理官補佐のお嬢さんが呼んでるからなるべく早くギルドの中庭に来てねー』
気の抜けた、けだるげな中年の声が戦車のスピーカーから発せられる。
「だれだあの声?」
「ぬらりひょんって言う妖怪のおじさんと夜音。二人で戦車動かしてる……」
「妖怪が……戦車?」
「夜音が免許持ってるから……」
諦めきった真司の言葉が重い。
「もう訳が分からない!!」
「わけわかんないよね。しかもあれも付喪神になっちゃったんだって……」
「追加情報ありがとよ!! もう考えんの止めるぞ俺は!!」
遠い目をしながら進路を戻すと今まで油まみれだったディーヴァが戦車砲の起こした火花で燃え始めたのか……立ち上がり、作戦行動に戻ろうとしていた。
「やべぇ、燃えて油が……」
そう、油が燃えて滑らず立てるようになったのだ……このままでは。
「大丈夫。後……キズナ姉、気をしっかり持って」
「はあ?」
見る見るうちにアリが砂糖に群がっていくかの如く、ディーヴァが国内に入ろうとする。
その隊列が再度吹き飛ばされた。
「来たよ……怖いの」
ベルファゴールも数機、国内の敷地内に侵入されたがその中の一機が見覚えのある細い剣で下から貫かれ、撃墜される。
カタカタと、歯を鳴らして真司が震える。
「戦車以上に怖いのって……おい、嘘だろ」
――ズシン
――ズシン
――ズシン
――ズシン
一歩一歩、その地を踏みしめて。
己が統治する貴族の誇りをかけて。
そんな存在に物言わぬ鋼の兵器が殺到する。
どう考えても生身だもん、障害になるわけがない。こんぴーたーでそう判断した。
間違いですハイ。
「危機なのであっる」
気合一発、先頭の大型陸戦兵器へその拳を握りしめて叩きつける。
ひしゃげる装甲、深々と食い込む生身の腕。
遅れてやってくる大気が破裂する衝撃音。
音速を超えているらしい、その右ストレート。
「一体誰の許可を得て、我が王の領地に踏み込んだであるか? 吾輩激おこぷんぷん丸なのであっる!!」
悠然と、気品を体現し、撫でつけていつも通りのてっかてかのオールバック。
名前を呼んではいけないウェイランドの貴族……
フレアベル・ウザインデス三世が立つ。
「……キ、キン」
キズナの全身に鳥肌が立ち、悪寒が全身を支配する。
「あれ、姉ちゃんの指示だからね? 僕関係ないからね?」
なりふり構わない、の意味を辞書で調べやがれ!!
あ、正しいや。
「なんで、アイツは……ぜ、全裸なんだ?」
「よく見なよ、ちゃんとパンツと靴だけは身に着けてるからBANされないよ」
「見れねぇんだって!! 知ってるだろ!? 嫌がらせの度合いがあのちょんぱよりひでぇぞ!?」
「はは、いまさら何言ってんの? 姉ちゃんが本気で悪乗りしたらかなう奴なんていないって」
「やよいぃぃ!! 俺が悪かったぁ!! もう俺二度と命令無視しねぇ!! 絶対!! 誓う!!」
そんな懺悔なんかで許さないんだからね! を代弁するかのようにウェイランドの貴族は過去一番輝いていた。
その強すぎる強さゆえに、恐れられ……てはいないな。
単純にうぜぇから避けられてただけだった。
「なんか刺さったっぽいのである!! 痛いので返すのである!!」
表皮で大型兵器の大口径ライフルの弾丸を食い止め、素手で投げ返すフレアベル。
その勢いは火薬で発射した時の数倍の速度で放たれる。
木っ端みじんに直線状のディーヴァや中型戦車が数体ゴミと化した……。
「あらあらお兄様、便利なやり方を見つけましたのね」
真紅のドレス、純白の日傘……そして。
キズナの愛用するオートマチック拳銃そっくりな、金色の拳銃。
「でも、これも……結構便利ですのよ?」
――タタタタタタン!!
無造作にディーヴァの群れに向けて淑女が引き金を引く。
その弾丸は正確に眉間を貫き、機能停止に追い込んだ。
「……なんでアイツが銃を?」
「禁忌武装の銃だって……なんか意気投合したらしいよ? 変態的に」
「数の暴力に変態で立ち向かう国に居たくねぇよ!?」
もっともである。
「あ! キズナ! 真司様! そこにいると危ないですわよ!!」
かなりの距離があるのにマリアベルが正確に二人の存在を見つけ、注意を促す。
もうこれ以上危ない物なんてねぇよ。とキズナが内心叫んだ瞬間。
――キィィィ……………………ィィィィン!!
轟、とキズナたちの乗るファングの傍。
かすりかねない距離を一条の何かが通過する。
「うおっ!」
「ひあっ!!」
ぐらりと車体が揺れて危なく転倒するところだった。
「何だ今の!?」
あまりにも早すぎて認識できなかったキズナが悲鳴を上げる。
「弥生ので、でんじれーる何とか砲? なんかすごい攻撃ですわ!」
正式名称を覚えられなかったが、確かすごい武器だったのだけは覚えているマリアベル。
がんばって避けてくださいまし! お兄様がついうっかりぶつかって背中をちょっとやけどしましたわ!!
と、キズナを見送る。
「おい、真司」
「何、キズナ姉」
「アイツ何する気なんだ?」
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