5 / 12
第4話 星覇の問題児
しおりを挟む
今日はアンラッキーデイらしい。
クエストのタイムリミットは午後6時だ。残り30分、まだ例の薬草も見つけていない……E級クエストもクリアできるか疑わしいというのに、それに輪をかけてもっと不幸な事態に発展した。
「よぉ落ちこぼれクラスの雨衣くーん。こんなところで出会うなんてやっぱり運命ってやつー?」
「田島くん……」
星覇魔法学園1年Cクラスの田島迅。
短髪ピアスとチャラい。第一印象はそんなところだ。
入学式からの因縁があり、Eクラスの連中はみんな雑魚乙と馬鹿にして絡んでくる厄介者。
苦手なタイプであることは間違いなかった。
「で、ここで何してるわけ?」
「えっと……ニルフィナって珍しい薬草を探してて……」
「は?おいおいおい、ニルフィナなんかこんな所にねーっての。雨衣くんはやっぱりド素人だわー。それで薬草探しで片腕なくなるってどういう状況だよ」
腹を抱えて笑われた。
「つーか、ここは俺たちCクラスが仕切ってるテリトリーだっつうの。断りもなしに勝手に入ってくんなよー」
「えっと、クエストの邪魔しちゃったのなら謝るよ。ごめんね……それじゃあボクはこの辺で。一度、パーティーメンバーと合流してみるよ」
「あー待て待て待て。別に邪魔なんかとは言ってねーだろ~」
そう言っては雨衣が回れ右をした背後から羽交い締め、ではなく腕を肩に回し詰め寄った。それはまるで友達かのような距離感。
過去の経験上、一般社会であろうと魔法社会であろうと、いじめっ子には萎縮してしまう。
先ほどまでのゴブリン討伐クエストをつまらないと言って笑っていなかった男子が、落ちこぼれクラスを見つけては笑っているのだ。
これで、嫌な予感がしないというのは嘘だ。
「寧ろ逆だよ逆。俺が雨衣くんのためにニルフィナが沢山生えている場所を教えてやっからー」
「え、マジで……?」
「おーマジマジ。まぁ、こっから歩いて行けばギリギリ間に合うから俺が道中ニルフィナについてた~っぷりと教えてやるよ~」
「……」
そんなワケ絶対ないだろぉおお……ッ!!と、両者が違う感情で心の中で絶叫していた。
はっきり云えば雨衣は詰んでいて、でも希望をまだ捨てていない彼にはさらなる追い討ちがやってくる。
ひょっこりと木の陰から現れたもう1人のCクラス。
初めて見かける顔だが、新しいオモチャを見つけたかのようなニチャァとなる笑みに雨衣は身震いすら覚えた。思わず目を逸らして俯いてしまった。
「きゃはは、田島ぁ、アンタEクラスなんかと絡んでクエスト、サボんなよww」
「チッ、前川に感づかれちまったか。つまんねーなオイ」
「まーまー、そう言いなさんなって。アンタだけ面白そーなことしてんな。独り占め反対ーww」
膝よりも丈の短いスカートとひらひら揺らしながら、こっちへ近づいてきた。
ニヤニヤしながら、俯いている雨衣の顔を覗き込む。舌舐めずりしたところが視界に入ってしまい、それだけで思わず呻き声を漏らしてしまった。
直感的にわかる。
この女子も苦手なタイプだ。
で、そんな雨衣の反応を楽しむ前川白菜というCクラスの女子は田島に訊ねた。
「きゃははwwもしかしてこのおチビちゃんが例のEクラス?」
「あん?おーそうそう。コイツが例の落ちこぼれクラスの雨衣くんでぇ~す」
「きゃははっ、私知ってるよー。アンタがコイツに告ってフラれたんだっけ?ww」
「ばっか、ちげーよ!?」
なんて悪い噂も流れる始末。
本当にどうしたものかなーと雨衣は考えた。
言い争ってくれるならそのまま続けてもらって、その隙にこっそり逃げても学園に戻れば結局また絡んでくるだろうし、因縁付けてくるだろうし。
「というか、アンタが楽しいこと独り占めしたらそん時は佐生さんに言いつけるって言ったじゃんww約束は守れwww」
「ちっ、あーもうわかってるって!もういいや、計画変更だ!おい前川!このチビを逃さないように押さえつけとけ!」
「きゃはは、新しいおもちゃゲット~ww」
今度は前川にヘッドロックされる。
絶対に面白そうだから逃がさないと言うばかりに力が篭っていて、非力な雨衣では逃れることはできなかった。たぶん魔法で身体強化しているのだろう。雨衣は身体強化の魔法なんてやり方わからないから使えなくて厄介だ。力の差は歴然だった。
「きゃはは、なになに?これからこのおチビちゃんにナニやらせるつもりー?www」
「今これから杉浦と藤中をこっちに向かわせる。ゴブリン狩りはつまんねーし、ここは一発おもしれーショーを開始するぜ!」
「きゃははっ、もしかしてコイツをゴブリンの餌にでもするつもりー?ちょっとソレは寧ろ萌えるwww」
「アホか。そんなムゴい発想はお前だけだぞ前川。ちげーよ、そうじゃなくって、落ちこぼれクラスの雨衣くんが魔法社会で生きていくためのレッスンを俺たちがしてやるんだよ」
「フラれたのに未練たらーりじゃん。やっさしーwww」
「うっせー!こっから始まるのは雨衣くんVSゴブリンのドリームマッチだぜー!!」
本当に、Cクラスと関わるとロクなことにならない。クラスメイトからも評判の悪いクラスなのだから。
田島は周辺にいる仲間へ連絡を取り、ゴブリンの残党をここに上手くおびき寄せてEクラスの雨衣と戦わせよう……なんて不穏なやり取りをしている。
というか、電波障害は?田島たちは普通に通信していた。
「お~い、落ちこぼれクラスの雨衣く~ん。今から俺の仲間がゴブリンをこっちに誘導するからよぉー、君のカッコイイ所見せてくれよなー!」
そう言って雨衣から魔法銃【零式】を取り上げた。
数少な攻撃手段。学園側で支給された、攻撃魔法がロクに使えない魔法生たちにとっては必要不可欠の代物。
最悪だ。
あぁ、今日は本当にアンラッキーデイのようだ。
ここまで不運の連続するその先については考えることを諦めた。
まだこの2人は気付いていない。
雨衣の視線の先に確かにいた。はぐれたと思っていたらこんな所にいた。木の陰に隠れてこちらを睨みつけるおぜうさまがいた。
「あー、田島くん。君たち逃げた方がいいよ………」
「は?おいおいおい雨衣く~ん!寝ぼけてるのかー?俺らが誰から逃げた方がいいだって~?ほんと落ちこぼれが何言って……んだ……ッ!?」
たとえば、雨衣のピンチに駆けつける心強い味方がいたとしたら。
たとえば、Eクラスに売られた喧嘩を全て買う問題児がいたとして、相手が同じ星覇の魔法生だろうが問答無用で容赦無く奇襲をかけて銃撃なんかしたら。
ズドンっ……と、このように。
田島の首から上がごっそり、相棒の魔弾丸によって打ち抜かれた。
「「……」」
絶句するしかない。
どこの星の元に生まれたらクエスト中に、同じ学園の魔法生をPKキメる愚か者がいるのだろうか。
なんともあっけなく田島はこの異世界から退場した。
ゲームオーバーである。
クエストのタイムリミットは午後6時だ。残り30分、まだ例の薬草も見つけていない……E級クエストもクリアできるか疑わしいというのに、それに輪をかけてもっと不幸な事態に発展した。
「よぉ落ちこぼれクラスの雨衣くーん。こんなところで出会うなんてやっぱり運命ってやつー?」
「田島くん……」
星覇魔法学園1年Cクラスの田島迅。
短髪ピアスとチャラい。第一印象はそんなところだ。
入学式からの因縁があり、Eクラスの連中はみんな雑魚乙と馬鹿にして絡んでくる厄介者。
苦手なタイプであることは間違いなかった。
「で、ここで何してるわけ?」
「えっと……ニルフィナって珍しい薬草を探してて……」
「は?おいおいおい、ニルフィナなんかこんな所にねーっての。雨衣くんはやっぱりド素人だわー。それで薬草探しで片腕なくなるってどういう状況だよ」
腹を抱えて笑われた。
「つーか、ここは俺たちCクラスが仕切ってるテリトリーだっつうの。断りもなしに勝手に入ってくんなよー」
「えっと、クエストの邪魔しちゃったのなら謝るよ。ごめんね……それじゃあボクはこの辺で。一度、パーティーメンバーと合流してみるよ」
「あー待て待て待て。別に邪魔なんかとは言ってねーだろ~」
そう言っては雨衣が回れ右をした背後から羽交い締め、ではなく腕を肩に回し詰め寄った。それはまるで友達かのような距離感。
過去の経験上、一般社会であろうと魔法社会であろうと、いじめっ子には萎縮してしまう。
先ほどまでのゴブリン討伐クエストをつまらないと言って笑っていなかった男子が、落ちこぼれクラスを見つけては笑っているのだ。
これで、嫌な予感がしないというのは嘘だ。
「寧ろ逆だよ逆。俺が雨衣くんのためにニルフィナが沢山生えている場所を教えてやっからー」
「え、マジで……?」
「おーマジマジ。まぁ、こっから歩いて行けばギリギリ間に合うから俺が道中ニルフィナについてた~っぷりと教えてやるよ~」
「……」
そんなワケ絶対ないだろぉおお……ッ!!と、両者が違う感情で心の中で絶叫していた。
はっきり云えば雨衣は詰んでいて、でも希望をまだ捨てていない彼にはさらなる追い討ちがやってくる。
ひょっこりと木の陰から現れたもう1人のCクラス。
初めて見かける顔だが、新しいオモチャを見つけたかのようなニチャァとなる笑みに雨衣は身震いすら覚えた。思わず目を逸らして俯いてしまった。
「きゃはは、田島ぁ、アンタEクラスなんかと絡んでクエスト、サボんなよww」
「チッ、前川に感づかれちまったか。つまんねーなオイ」
「まーまー、そう言いなさんなって。アンタだけ面白そーなことしてんな。独り占め反対ーww」
膝よりも丈の短いスカートとひらひら揺らしながら、こっちへ近づいてきた。
ニヤニヤしながら、俯いている雨衣の顔を覗き込む。舌舐めずりしたところが視界に入ってしまい、それだけで思わず呻き声を漏らしてしまった。
直感的にわかる。
この女子も苦手なタイプだ。
で、そんな雨衣の反応を楽しむ前川白菜というCクラスの女子は田島に訊ねた。
「きゃははwwもしかしてこのおチビちゃんが例のEクラス?」
「あん?おーそうそう。コイツが例の落ちこぼれクラスの雨衣くんでぇ~す」
「きゃははっ、私知ってるよー。アンタがコイツに告ってフラれたんだっけ?ww」
「ばっか、ちげーよ!?」
なんて悪い噂も流れる始末。
本当にどうしたものかなーと雨衣は考えた。
言い争ってくれるならそのまま続けてもらって、その隙にこっそり逃げても学園に戻れば結局また絡んでくるだろうし、因縁付けてくるだろうし。
「というか、アンタが楽しいこと独り占めしたらそん時は佐生さんに言いつけるって言ったじゃんww約束は守れwww」
「ちっ、あーもうわかってるって!もういいや、計画変更だ!おい前川!このチビを逃さないように押さえつけとけ!」
「きゃはは、新しいおもちゃゲット~ww」
今度は前川にヘッドロックされる。
絶対に面白そうだから逃がさないと言うばかりに力が篭っていて、非力な雨衣では逃れることはできなかった。たぶん魔法で身体強化しているのだろう。雨衣は身体強化の魔法なんてやり方わからないから使えなくて厄介だ。力の差は歴然だった。
「きゃはは、なになに?これからこのおチビちゃんにナニやらせるつもりー?www」
「今これから杉浦と藤中をこっちに向かわせる。ゴブリン狩りはつまんねーし、ここは一発おもしれーショーを開始するぜ!」
「きゃははっ、もしかしてコイツをゴブリンの餌にでもするつもりー?ちょっとソレは寧ろ萌えるwww」
「アホか。そんなムゴい発想はお前だけだぞ前川。ちげーよ、そうじゃなくって、落ちこぼれクラスの雨衣くんが魔法社会で生きていくためのレッスンを俺たちがしてやるんだよ」
「フラれたのに未練たらーりじゃん。やっさしーwww」
「うっせー!こっから始まるのは雨衣くんVSゴブリンのドリームマッチだぜー!!」
本当に、Cクラスと関わるとロクなことにならない。クラスメイトからも評判の悪いクラスなのだから。
田島は周辺にいる仲間へ連絡を取り、ゴブリンの残党をここに上手くおびき寄せてEクラスの雨衣と戦わせよう……なんて不穏なやり取りをしている。
というか、電波障害は?田島たちは普通に通信していた。
「お~い、落ちこぼれクラスの雨衣く~ん。今から俺の仲間がゴブリンをこっちに誘導するからよぉー、君のカッコイイ所見せてくれよなー!」
そう言って雨衣から魔法銃【零式】を取り上げた。
数少な攻撃手段。学園側で支給された、攻撃魔法がロクに使えない魔法生たちにとっては必要不可欠の代物。
最悪だ。
あぁ、今日は本当にアンラッキーデイのようだ。
ここまで不運の連続するその先については考えることを諦めた。
まだこの2人は気付いていない。
雨衣の視線の先に確かにいた。はぐれたと思っていたらこんな所にいた。木の陰に隠れてこちらを睨みつけるおぜうさまがいた。
「あー、田島くん。君たち逃げた方がいいよ………」
「は?おいおいおい雨衣く~ん!寝ぼけてるのかー?俺らが誰から逃げた方がいいだって~?ほんと落ちこぼれが何言って……んだ……ッ!?」
たとえば、雨衣のピンチに駆けつける心強い味方がいたとしたら。
たとえば、Eクラスに売られた喧嘩を全て買う問題児がいたとして、相手が同じ星覇の魔法生だろうが問答無用で容赦無く奇襲をかけて銃撃なんかしたら。
ズドンっ……と、このように。
田島の首から上がごっそり、相棒の魔弾丸によって打ち抜かれた。
「「……」」
絶句するしかない。
どこの星の元に生まれたらクエスト中に、同じ学園の魔法生をPKキメる愚か者がいるのだろうか。
なんともあっけなく田島はこの異世界から退場した。
ゲームオーバーである。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
精霊姫の追放
あんど もあ
ファンタジー
栄華を極める国の国王が亡くなり、国王が溺愛していた幼い少女の姿の精霊姫を離宮から追放する事に。だが、その精霊姫の正体は……。
「優しい世界」と「ざまあ」の2バージョン。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる