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こんなに魅力的な私を愛せないの!?

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私は彼のことが大好きだ。付き合い始めて半年になる。彼は控えめな態度だが、紳士的ですばらしい。もう私にはこの人しかいないと思ってしまう。
「ね~え、今日もエッチなことでもいいからイチャイチャしようよぉ~」
「ごめん、今日は忙しいからさ…」
彼はこんな風にすごく控えめなのだ。私が求めれば応じてくれるが、自分からは全然してこない。
正直言って欲求不満だ。
もっと彼から求められたい。彼に思いっきり甘えたいし、私のこともいっぱいかわいがってほしい。
そんなことを考えていると、不意にあることを思いついた。
(ひょっとして私のこと興味薄いんじゃない?)
付き合い始めてと言ったが、実は告白とかはしていない。無理やり流れに私がのっけた感じだ。彼がどう思っているかわからない。
だからもし、付き合ってると思っているのが私だけだったら……。そう考えると急に不安になった。
(ちゃんと話し合おう!)
私は決意した。
そして翌日、学校帰りに彼を呼び出した。
「何?どうしたの?」「あの……ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「うん、なんでも聞いて」
「あなたってさぁ……私のこと好きじゃないでしょ?」
「……え?」
突然の質問に彼は動揺していた。
「どうしてそう思うの?」
「嫌いじゃないとは分かっているんだよ?だけど、あんまり私の方に気持ち寄ってこないし…いつもあなた受け身だし…」
「それは君がかわいいからだよ。僕なんかじゃ釣り合わないし……」
彼は困った顔をしている。
「でも!そういう態度だと、いつまで経っても私たち進展しないじゃん!」
「いや、別に僕はそれでも……」
「嫌!それじゃダメなの!!」
つい感情的になってしまった。すると彼は黙ってしまった。
「あ、ごめんなさい。今のは言い過ぎたわ……」
「ううん、大丈夫。君の言う通りかもしれないね。僕の方からも歩み寄るよ」
「……」
これでいいのだろうか…彼は結局『付き合う』ということには触れてこなかった。後日、彼に言い寄る女がいるという噂を聞いた。
浮気を疑った私は彼のいる教室へ向かう。
「ねえ!私は!?私のことはどうなのよ!」
「え、あぁ…その…ですね…」
(浮気なの?違うかも…)
本当に詰め寄る感じで迫られている。でも、先日のことで、私にマウントを取れる自身はない。だから見ているしかできなかった。
「私、結構イイ身体してんのよ?ほら、触ってみてよ!」
彼女は制服の上着を脱いで胸元を見せる。確かに大きいし形も良い。思わず見入ってしまう。
「ねぇ、どう?こんなに魅力的な私を愛せないの?」
彼女がさらに距離を詰めてくる。悔しいほどいいスタイルしている。
彼はタジタジ。流石にそんなものを押し付けられては赤面してしまうのも無理はないだろう。
更に彼女は自分の太ももを彼の脚に絡める。色仕掛けだ。完全に彼女のペースになっている。このままではいけないと思った私は二人の間に割って入った。
「ちょっと、どういうつもり?」
「何のことかしら?」
「今、この人に色目使ってたよね?」
「あら、いたの?」
ムカつく言い方だ。「悪いけど、今は私が彼と話してるところなんだから」
「ふん、誰もあなたみたいなちんちくりんに興味はないわ」
「誰がちんちくりんですってぇ!?」
喧嘩腰になる。
「そもそもあんた、彼女とかじゃないでしょ!」
「それは…そう…だけど」
痛い所を突かれた。
「いや、この人は僕の彼女だよ。」
(え?)
「は?嘘つかないでよ、何この女の肩持ってんの!?」
「もういいでしょ、帰ってよ。」
「全く!なんなのもう!」
彼女は帰って行った。残された彼と私。
「どうして、あんなこといったの?」
勇気が必要だが、あの場ではベストな解にはなるはずだ。しかし、そんな勇気も、あえてあそこで私を選ぶ理由も彼にはないと思っていた。
「ああ言えば、帰ってくれると思ったのと…」
そう言って彼は私を見つめる。ちょっとドキッとする。
「僕だって男だもん。ちょっとくらい我慢できない時もあるんだ」
顔が真っ赤になっていた。私は少し嬉しかった。私のために言ってくれたのだ。そして、私は彼を抱き寄せた。
「ありがとう」
「うん……」
その後、彼は私に告白した。
「あのとき、割って入ってくれた君に惚れました。付き合ってください。」こうして私たちは付き合うことになった。
「さっきの女程じゃないけどさ、私も結構イイ身体してんのよ?…って、あぁぁんっ!」彼に思いっきり抱きしめられた。もう離さないという強い意志を感じる。私は幸せ者だなぁと実感する。
ふと見上げると彼の横顔が見える。とても愛おしい。こんなにも素敵な人が私を選んでくれて、私は世界一幸せな女の子だと思う。
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