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私の魅力がないせいなの?

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こんなにも魅力がないのだろうか。私は。
彼に好きって言いたい。でも、私には言えない。
「……っ」
なんでだろう。どうして、こうも弱いんだろう。もっと強ければ良かったのに。
そういうのを、魅力がないせいにしているんだ、きっと…
でも、実は知ってる。私は魅力ある。友達が言ってくれる。
お胸がおっきいね、とか、太もも綺麗だよ、とか、おしりも大きいよ!とかも言ってくれてた。
そう言われる度に、少しだけ嬉しかった。だけど、同時に虚しくもあった。
私はルックスが全てなんだろうか。
優しさがないわけじゃないはずだし、あんまり人には怒らないようにしている。それでもダメなの? じゃあどうすればいいの? 教えて欲しい……
彼は私に話しかけてくることはなかった。私から話しかけても、「ん?」とか「ああ」しか言わない。
そのくせ、私のことをじっと見つめているのだ。(これは多分自分がそう感じているだけ)彼が何を考えているのかわからない。けど、何かを期待してしまう自分がいるのは確かだった。
だから今日こそ勇気を出して聞いてみようと思った。
「ねぇ……」
「あのさ……」
2人の声が重なった。
「えっと……そっち先にどうぞ」
「いや、別にいいよ」
また被った。もう嫌だ。この空気。早く終わらせないと。
「私、あなたが好き」
「……」
「あなたのことが好きなの!」
ついに言ってしまった。
ずっと言いたかったこと。言いたくなかったこと。
返事はすぐに返ってきた。
「ごめんなさい」
やっぱりダメかぁ~、なんて思っている余裕はなかった。だって、彼の顔が真っ赤になっていたからだ。
「俺から言えばよかった」
え?どういうこと?
「俺も多分、好きなんだと思う。君のこと。」
「へ?」
思わず変な声が出てしまった。
「君と話してる時が一番楽しいし、一緒にいて落ち着くっていうか……」
彼も同じ気持ちでいたなんて知らなかった。
私は今まで自分の魅力がないと思っていたけれど、それは違ったらしい。
「そ、そんな…私、魅力ないし…」
「俺はあると思ってるんだけどなぁ~」
彼は苦笑いしながら言った。
それから2人は付き合うことになった。
まだキスもしてなくて、手を繋ぐこともなかったけど、いつか彼と結ばれる日が来ると信じて、私は頑張ろうと決めた。しかし、現実は残酷なものだ。彼が浮気をした。
しかも、相手は同じクラスの子。私とは正反対の体型の子だった。
彼女はとても可愛いらしく、性格もいいと評判の子で、学校では人気者なのだそうだ。
彼はその子と付き合ってると知った時、すぐに別れた方がいいと言ったのだが、彼女が泣きながら必死に訴えてきたため、結局別れることはなかった。
そして、いま、三人で教室に集まった。俗に言う修羅場。
「あんた、なんで浮気したの?」
「ごめんって…」
「あなたが選んだのは私でしょ?」
「ごめんなさい」
「謝れば済む問題じゃないわよ」
「ごめ……」
「うるさい!!」
「ひぃっ!?」
浮気相手の怒鳴り声にビクッとする彼氏。情けない。
すると、そいつはこちらを向いてこう言った。
「ねぇ、こいつをフってくれません?こいつは私を選んだんですよ?私の方が断然いいはずですよね?」
確かに彼女の方が圧倒的に美人だ。それにスタイルもいい。胸もある。何より凛々しい。
でも、
「断る」
はっきり言ってやった。これで諦めてくれるといいけど……。
「なんでですか?こんなやつを選ぶ理由なんてないですよね?」
「自分がどんだけ可愛くてモテるかわかってんの?こんなやつといる方が損だよ」
お互いこの男を批判しているが、本当はお互いに彼が欲しいという本心なのが分かる。
「とにかく!この男は私がもらうから!じゃあね!」
私はそう言い残して、彼を無理やり連れて帰った。
家に着いてからも大変だった。彼に問い詰めたら、
「好きだからだよ!」
と言われた。
理由になっていないけど、もう彼を手放したくない。絶対に離さない。そう誓った。
あれから3年が経った。
私たちはまだ一緒にいる。結婚もしていないし、子供もいないけど、幸せだと思う。
「ねぇねぇ、最近どう?」
「んー、特に何もないかな」
でも、その日、またあの浮気相手が現れた。
結局彼は、あっさりあっちに行ってしまった。
あの子がもっと綺麗になって現れたから。
「ねぇ、あんたはあいつのこと好きだったんでしょ?」
「…」
「ふざけないでよ!私の魅力がないせいなの?」
「違う…あの子が魅力的すぎるんだ。」
私は意味が分からない。浮気した理由があの子が魅力的すぎるから。つまり私はあの子には到底及ばない存在と知ってしまった。
どうしてそこまで言うのだろうか。傷つけることに躊躇は無いんだろうか。
「じゃあ、さよなら」
私と彼は、別れた。
これで良かったと思う。冷静に考えて彼はやばい。おかしい。
あんなやつ、くれてやる。
だけどちょっと寂しさも残る、そんな終わり方だった。
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