浮気舐めてんでしょ

ヘロディア

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浮気舐めてんでしょ

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僕の彼女、美穂は浮気しているという噂が立っている。もちろんそれは根も葉もない噂だ。僕はその噂を否定するために今こうして必死になっているわけで……。
「ねぇ、聞いてるの? 亮介」
「えっ?」
「もう……私の話聞いてた?」「あぁごめん……」
いつの間にか僕の目の前には彼女の顔があった。その瞳に僕を映し出している彼女はどこか寂しげな表情をしていた。
僕は慌てて姿勢を正した。彼女との会話中に考え事なんて失礼にも程があるだろう。「あのね、今日私、学校早く終わる予定だからさ……デートしない?」
「いいよ」
「やった!」
嬉しそうに微笑む彼女が可愛くて思わず抱きしめてしまった。でも、ひょっとしたら浮気されているかもしれないんだよな…そんなことを考えると、少しだけ気分が落ち込んでしまった。
「わーい! 亮介とデート~♪」
「はいはい、じゃあまずは宿題を片付けようね」
「うへぇ」
僕の腕の中でぐずる彼女に苦笑しつつ、頭を撫でてやる。
(やっぱり浮気の噂なんて噓じゃないかな…)
だから、翌日友達に浮気の証拠写真を見せつけられた僕は信じることができなかった。『お前付き合ってんなら別れろ』
その言葉を聞いた瞬間、目の前が真っ暗になった気がした。頭がぐらぐらして足元がおぼつかない。なんでこんなことになったんだろう。どうして俺が浮気されたんだろう。俺はただ彼女を愛していただけなのに。
「これ、どういうこと?」
彼女に証拠写真を突きつける。彼女は怯えているような顔をしたが、それでも視線を逸らさなかった。
「……だって亮介が最近構ってくれないから」
「は?」
「私が話しかけても上の空だし、それにずっと携帯いじってばっかりじゃない」
なんだそれ、今色々忙しい時期なんだよ。携帯いじるだけで不満なのか?それに俺が携帯ばかり見てるのはゲームをしているだけだ。
「浮気したのは認める。だけど私は本当に亮介が好きだったの! 信じてよ!!」
「……信じられるか」
俺は彼女に背を向けた。もうここにいる意味はない。荷物をまとめて帰ろうとした時、背後から抱きつかれた。
「お願い、行かないで……」泣きそうな声で訴えてくる彼女を振り払うことはできなかった。だが、このままではいけない。ここはちゃんと話し合うべきだと思ったのだ。
そして話し合いの結果がこれである。
『ごめんなさい』
「……わかった」
『許してくれる?』
「うん」
『ありがとう!』
浮気相手とはもう別れると言っていた。これで一件落着だ。
(俺もちょっと冷静さが足りなかったかな……でも、浮気する方が悪いと思うんだけどな)
俺は反省の色を見せることなく、平然としている彼女を見てため息をついた。まぁ、この人は昔からこう言う人なのだ。仕方がないと言えばそれまでだ。
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