僕らと異世界

山田めろう

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第四章 旅路の始まり

血生臭い兆し

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「――――っ」

 おそらく、その場の全員が言葉に詰っただろう。
 ただ一人、冷静――いや、この場にあっては冷血であるほどの剣士を除いては。

「・・・・・・あ、いやっ」

 その女性は、明らかに混乱している様子だった。
 助けを求めているのは明らかだが、その窮状に輪をかけるようにして長剣の切っ先を向けられているという事実が、彼女の恐怖を駆り立てる。
 本来なら整っているであろう顔をくしゃくしゃに歪め、ついにはその場にへたり込んでしまった。

「お、おねが、い・・・・・・やめて、たす、けて・・・・・・」

 焚き火から距離があるせいか、子細まで確認はできないが、どうにも無事ではない様子だ。
 僕は身を乗り出しそうに荷台の出入り口に手をかける。

「来るな!」

 がしかし。
 それは、クロッキアさんの張り上げた声によって制止されてしまった。

「け、けど・・・・・・」
「彼女が釣り餌なら、荷台から出た瞬間、良い的だぞ」

 そう言われても。
 頽れたその女性を目にすると、ここで傍観していることが間違っているような衝動に駆られるのだ。
 しかし、そんな僕を制止するのはクロッキアさんだけではなかった。
 僕の後ろで控えるターナも、控えめではあるが僕の片手を掴んでいる。
 背中越しに見据えた彼女の瞳は、まるで懇願するように揺れていた。

「やめて・・・・・・わたし、ちがう」
「あぁ、こちらも敵意はない。だが、君のその言葉を信用するには、些か状況が読めない。余裕がないのはお互い様だ。・・・・・・何があった?」

 まともな受け答えができるようには見えないが、それすら有無を言わさない語調でクロッキアさんは問いかける。
 しばらく問題の女性は頭を振っていたものの、とにかく助かりたい一心がそうさせたのか、嗚咽を挟みながら答え始めた。

「しらない、わたし何もしらない。・・・・・・突然、こえがあがって、それでみんな・・・・・・みんな、おそわれてっ」
「皆とは誰だ?」
「分からないっ。けど、悪いひとたち・・・・・・わたしたちを、売るっていってたわ」
「・・・・・・では、何に襲われた?」
「しらない。しらない知らないっ! あっという間だったの、あっという間にみんな、みんな食べられてっ」

 何に襲われたかを聞いた瞬間、女性は見る見るうちに錯乱していく。
 余程の恐怖だったのだろう。
 もはや満足に歩くことさえ叶わず、泣き崩れながら女性はこちらへ手を伸ばしていた。
 おねがい。たすけて。たすけてください。
 ――じっとしていられるはずがなかった。

「クロッキアさん!」

 これ以上は我慢できない、と声が出た。
 依然としてクロッキアさんの警戒は弱まる様子を見せないが、それでも僕の心中は伝わったらしい。

「私が連れてくる。二人はそこを動くな。いいな?」
「は、はいっ」

 渋々ではあるが、クロッキアさんは女性を保護する意志を見せてくれた。
 長剣を手にしているからだろう、歩み寄るクロッキアさんに怯えた様子を見せる女性だったが、しばらくして少しずつ落ち着きを取り戻していった。
 クロッキアさんが周囲を見渡すような仕草をすると、そこでようやく剣を鞘に収め、女性を抱きかかえる。
 二人が荷台に辿り着くと、既に準備していたターナが毛布でその女性をくるんであげた。
 見れば、その若い女性は至る所に小さな擦り傷や切り傷を負っており、身につけている服もかなり痛んでいる。おまけに素足で靴さえなかった。
 これでは、夜が明ける頃にはよくて凍傷、普通ならば凍死している。

「もう大丈夫ですよ」

 がたがたと震える女性を毛布の上から擦り、ターナが優しく声をかける。
 その傍らで、クロッキアさんが僕へ視線を向けていた。

「かなり濃い血の匂いがする。・・・・・・おそらく、襲われたというのは嘘ではない」
「・・・・・・この、女性からですか?」
「あぁ。自分の服で血を拭った後があった。外傷からしても、ほとんどが彼女自身のものではない」

 再度、毛布から覗く女性の服に目をやる。
 確かに、彼女の腕部分や肩口がひどく汚れていた。
 赤黒いから何かとは思っていたけど、これ・・・・・・まさか全部、血?

「野生の動物でしょうか?」

 ターナが不安げに聞くが、クロッキアさんは首を横に振った。

「推測だが、彼女は商品として運搬されていた。つまり、悪い人達というのは奴隷商だ。それを専門にしていたかどうかは定かではないが、連中が護衛もなしに旅をすることはない。悪人は悪人をよく知っているからな。そして、奴隷商に雇われるような人間が、野性動物ごときに遅れをとるとは到底思えん」

 確かに、そういう人達というのは争いに慣れているだろうし・・・・・・。

「けど、じゃあ一体・・・・・・」

 はっ、とするものの、やはりそれもクロッキアさんが先読みで否定した。

「魔族の可能性は低い。位置的に領土の外周沿いだとしても、それならば我々も無事ではないはずだ。斥候であっても、魔族はこの人数で生き残れるほど生半可ではない」

 そうなると、いよいよ僕では予想がつかなくなる。
 しかし、実際に襲われたという本人が生きて目の前にいる以上、主犯である存在がまだ周囲をうろついている可能性は無視できないはずだ。
 クロッキアさんもそれには賛同らしく、じっとしているつもりはないらしい。

「君、名前は言えるか?」

 クロッキアさんが呼びかけるが、女性に反応はない。
 錯乱の色は消えたものの、今度は茫然自失の状態にあるようだ。
 本当はそっと休ませてあげたいけど、ここで僕らも襲われては彼女の安全さえ確保できなくなってしまう。

「大丈夫です。私はターナと言います。お名前を教えて頂けませんか?」

 あくまで急かさず、柔和な物腰で話しかけるターナ。
 いや、どちらかというと語りかける、というくらい穏やかな口調だ。
 一度では反応しない女性も、ターナが根気強く何度か語りかけると、遠くに伸びていた視線がゆっくりと僕らを捉え始めた。

「・・・・・・あ」
「ゆっくりとで大丈夫ですよ。ご自分のお名前、言えますか?」
「・・・・・・ワ、ワク、ナ」
「ワクナさん、ですか?」

 ターナが微笑みかけると、その女性――ワクナさんは、弱々しく頷いた。

「ターナ、どちらの方向から来たか聞いてもらえるか?」

 自分では怖がらせるかもしれないと思ったのだろう。
 クロッキアさんはあえて荷台の出入り口で留まり、応対をターナに任せる。

「ワクナさん。ワクナさん、私の目を見てください。大丈夫です、ここは安全ですよ」
「あ、あんぜん? ・・・・・・ほんとう?」
「はい。私だけではなく、ユウスケ様やクロッキア様もいらっしゃいます」
「あの・・・・・・あの、怪物は? もう来ない?」

 背中を丸め、少しでも何かから身を隠そうとワクナさんは身を震わせる。
 ターナは彼女の頬に触れると、肌についた汚れを取りながら、優しく続けた。

「はい。大丈夫です。ワクナさん、どちらから来たか分かりますか?」
「・・・・・・分からない。ずっと荷台に乗せられていたから。わたし・・・・・・気づいたら、森の中を走っていて・・・・・・」

 それで、明かりが見えたからその方向へ向かった、と。
 その明かりとは間違いなく、僕らの焚き火だろう。
 本当は怪物の姿なんかも聞きたいけど、また襲われた瞬間の光景がフラッシュバックすると大変だ。

「仕方ない。私が探る」
「え・・・・・・クロッキアさんが、ですか?」
「あぁ。正確な位置を割り出すのでもなければ、匂いは辿りやすい。ユウスケ、周囲を警戒していてくれるか?」
「ぼ、僕で大丈夫かな・・・・・・」

 クロッキアさんが荷台から離れると、僕が代わりにその位置につく。
 警戒するとはいえ、できることは目を凝らし、耳を澄ませるくらいだ。
 すると、僕らから少し離れたクロッキアさんは、背を向けたまま直立した。
 もし時計があったなら、その針の音がやけに響いただろう。
 そう思わずにはいられない、重圧を伴う静寂。
 何もしていないはずなのに、長距離を走ったような息苦しさから、首筋を汗が伝って落ちる。
 しばらくして、クロッキアさんが深く息を吐いたのが分かった。
 振り向きざま、木々の隙間から伸びる月明かりを受けた瞬間、クロッキアさんの双眸が獣のようになった――かもしれない。
 一瞬だったから、気のせいかもしれないけど。

「彼女がやってきた方角と血の匂いが漂う方角が一致する」

 けど、それもクロッキアさんの言葉で脳裏から消えていく。

「嗅ぎ分けたりなんてできるんですか?」
「多少はな。何より、彼女から発するものよりも風にのってくる方が、より濃密だ。・・・・・・一人や二人の犠牲ではないな」

 状況が一つ一つ明らかになっていく度、どんどん悪い方向へ進んでいる気がする。

「ユウスケ、ターナと一緒にあの・・・・・・ワクナといったか? 彼女を安心させてやってくれ。この状況で半狂乱にでもなって森の中に消えていっても、さすがに面倒は見切れない」
「分かりましたっ」

 今は、嘘でもワクナさんを落ち着かせることが最重要だ。
 少なくとも、僕らと彼女の四人で夜を越えるつもりならば、そうするしかない。
 僕とターナでワクナさんの両脇を固め、荷台の左右に穿たれた窓は木の板で外が見えないよう閉じる。
 ごとん、と牛車が動き始めると、目に見えてワクナさんは動揺し始めるが、僕らはそれを精一杯なだめた。
 どこへ向かうのかと不安に満たされた胸中をこぼす彼女に、ターナが「安全な場所です」と答える。

「安全な場所? どこ? ヒノボリの国?」
「ワクナさん、ヒノボリの国から来られたのですか?」
「・・・・・・う、うん。そうよ、生まれも育ちも、ヒノボリの国」

 ただでさえ極限に近い緊張状態にあるからか、故郷の名前に僅かだけ緩んだところを、ターナは見逃さなかった。
 すぐに向かう先は森の外――ヒノボリの国を目指している、と伝える。
 すると、今まで怯えしか見せてなかったワクナさんが、一縷の望みを見つけたような顔つきになる。
 う、うまい。正直、僕の出る幕はほとんどない感じだ。
 最初は曖昧な言葉で濁しつつ、相手の出方を見て情報を確定させる。
 嘘も方便、とはこのことか。
 同性というのもあって、ワクナさんはすっかりターナを信用している風に見える。

(けど、これでひとまずは大丈夫かな? さっきみたいに、我を失うくらい錯乱することがなければいいけど)

 僕はターナの言葉に相づちをうちながら、ワクナさんへ水を手渡したり、替えの服があることを伝えたりする。
 そうしている内、牛車がその動きを止めた。
 たぶん、問題の場所付近に来たのだろう。

「道順を確認してくるね。ターナ、ワクナさんと一緒にいて」
「はい。・・・・・・大丈夫ですよ、私が傍にいますから――――」

 荷台から顔を出すと、御者台(※馬車などを走らせる人が乗る、前面の台)から降りたクロッキアさんが、頷いて合図を送ってきた。
 荷台から降りて振り返ると、もう焚き火の明かりは見えない位置まで来ているらしいことが分かる。
 既に陽が落ちてから結構な時間が経つ。
 周囲は暗闇に塗り込まれており、目が慣れていたとしても、視界はすこぶる悪い。
 クロッキアさんの先導で少しばかり歩くと、惨劇の地点が木々の合間からその凄惨さを覗かせていた。

「・・・・・・っ」

 思わず、口元を手で覆ってしまう。
 地面が雪で覆われているからだろう。
 夜の帳にあっても、雪明かりがまき散らされた鮮烈な色彩を際立たせている。
 これがもし昼間だったならば、間違いなくここで吐いていただろう。
 遠目でだって、人間はあんな風に「散らばって死ぬものではない」と僕の常識が警告を発していた。
 異常な死。普通ではありえない、惨たらしい死に様が脳を貫くような衝撃を送ってくる。

「ク、クロッキアさん・・・・・・あれって・・・・・・」
「食い散らかされた後、のようだな。ユウスケ、少し離れるが気を抜くな。ただ、そう時間はかけない」
「は、はい」

 勇気を振り絞っても、僕はあそこに近づける自信がない。
 情けないけど、大人しく遠目で待つしかなかった。
 クロッキアさんは真っ直ぐにその場所へ向かうと、赤と黒が同居するような血溜まりじみたそこへ踏み込んでいく。
 時折屈んだりしながら視察していたクロッキアさんも、言葉通り、思ったよりもすぐに引き返してきてくれた。

「確認した。彼女の言葉と、状況に乖離は見当たらない。馬車は上半分が吹き飛んでいたし、馬も内蔵を食い荒らされていた。・・・・・・死体の損壊を見ても、普通の動物ではないな」
「・・・・・・に、人数は?」
「『確認できる内では六人』だ。ただ、散乱する身体の一部が、人数と合わない。あくまで、今言った数は胴体の数にすぎない。戦闘の痕跡はあるが、ほとんど抵抗できずに死んでいる」

 ・・・・・・どうかしている。
 人間の数を、まさか「胴体の数」で数える時がくるなんて。
 あまりにも現実離れ――いや、猟奇的な事実に、何かしらが喉元まで迫り上がってくるのを堪えるので精一杯だった。
 普通の動物ではない。
 けれど、魔族の仕業でもない。
 ・・・・・・じゃあ、まさか人間がこんなことをしたとでもいうのだろうか?

「ワクナさん、あの怪物って、言ってましたよね?」
「少なくとも、人の姿であの惨状を作り出すのは、かなり難儀だろう。まぁ・・・・・・順当に考えれば、魔人。噂が本当ならば、人を喰うという蜘蛛の獣憑きか」
「・・・・・・・・・・・・」

 言葉を失う。
 だって、それは東での噂ではなかったのだろうか。
 ここはまだ森の中、東方の土地でさえないというのに。

「ユウスケ、考え事は移動しながらにしよう。あまりあの二人を長く放っておきたくない」
「あ、はいっ」

 事実確認ができた、という収穫は大きいが、確定した不安もまた、大きい。
 そもそも、事を起こしたであろう存在が不明なのだ。
 もしかしたら、今も周囲の暗闇の奥底から僕らを見張っているのではないか、と精神が張り詰めていく。
 急ぎ足で牛車まで戻ると、すぐに荷台へと上がり二人の無事を確認する。

「ユウスケ様」

 ほっとした表情のターナが、出て行った時と同じ様子で待っていてくれた。
 物音や気配にひどく怯えている様子に変化はないが、ワクナさんの双眸にも光が戻ったような印象を受ける。

「あ、ありがとうございます」

 背中を丸めながら体育座りみたいな姿勢のワクナさんが、震える唇を動かして、そう言ってくれた。
 僕は一瞬面食らったけど、すぐに笑顔を作り、「いえ、気にしないでください」と答える。

「私、気が動転していて・・・・・・ついさっきまでの記憶も、飛び飛びで・・・・・・」
「無理もありません。今は、思い出すよりも心身を休めましょう、ね?」
「う、うん・・・・・・ありがとう、ターナちゃん」

 親しみを感じる口調に、僕もほっとする。
 やはり女の人だし、いくら助けてくれたといっても、同性が傍にいた方が何かと安心できるようだ。
 再び荷台が軋む音を立てると、ゆっくりと動き出す。
 荷台と御者台の間は小窓で通じており、僕はそれを薄く開けると、小声でクロッキアさんに行き先を聞いた。

「とりあえず、ヒノボリの国を目指す。まぁ、森を抜けるのが先決だ」
「移動しても大丈夫でしょうか? このままじっとして夜を明かすのも、こわいですけど・・・・・・」
「正直、運次第だな。息を潜めるにしろ、先を急ぐにしろ、危険なことに変わりはない。だが、こういう時の夜は長い。怯えて待つよりも、移動していた方が気も紛れるだろう」

 クロッキアさんはクロッキアさんなりに、ワクナさんを気遣っているようだ。
 少なくとも、ワクナさんを安心させるための嘘が、これで真になったのだ。この点に関して、変に隠し事をしなくてもよくなったことは嬉しい。
 ここだけの話、僕はお世辞にも嘘や隠し事が上手い方じゃないから。
 木々と暗闇の合間を行進する。
 僕には、もう完全に遭難している風にしか感じられないのだが、クロッキアさんには方角が掴めているのだろうか。
 自分の不安を紛らわせるためか、ふとワクナさんとターナの方を見やると、二人とも静かな寝息を立てていた。
 無理もない。
 ターナだって、落ち着いているように見えて、必死に自分を押し殺していたに違いない。
 とはいえ、こんな寝てしまえば早いのに、と思う時に限り眠気は襲ってこないものである。
 とりあえずの急場を凌いだ感覚から、僕は再び小窓を薄く開け、夜通しで牛車を走らせるクロッキアさんに声を掛けた。

「クロッキアさん」
「ん、どうした。眠れないか?」
「はい。なんだか、目が冴えちゃって」
「他の二人は? 随分と静かだったが・・・・・・」
「ターナとワクナさんは眠っています」
「そうか。まぁ、それなら安心した。かなり消耗していたようだからな」

 理由が、脳裏に浮かび上がる。
 あんな現場に居合わせては、あの錯乱のしようも致し方ない。
 きっと、僕だってあんな中、命からがら生き延びれば助けを求めることさえ限界を超えた行為だろう。
 最悪、心が壊れてしまい、元に戻らなくなるかもしれない。
 それを持ちこたえたのは、ターナとワクナさん本人の頑張りがあったからだ。

「ユウスケ」
「はい」

 少し話をしても構わないか、とクロッキアさんは前置きをする。
 女性二人が寝入ったタイミングというのもあってか、僕は真剣な声で「大丈夫です」と答えた。

「襲撃された者達だが、おそらくは彼女の言っていた商人とその護衛だろうと思われる」

 ここでの彼女、とはワクナさんのことだろう。

「それも、狩人の村落からこの森に入った可能性が非常に高い」
「え・・・・・・じゃあ、ワクナさんもあの村に?」
「あぁ。売られる予定なら、彼女は商品だ。人間としては扱われない。あの宿屋のどこかで保管されていたか・・・・・・いずれにせよ、人目のつかない場所に置かれていたのだろう。護衛もまた然りだ」
「護衛って、いつも近くにいるものだと思ってました」
「普通はな。だが、あそこは狩人の村落だ。門番の目つきを見ただろう。あそこは、村人全員が手練れの射手みたいなものだ。事を構えようなんて考え自体が、そもそもの間違いになる。商人達も、護衛同士をつきあわせていたら、どんな喧嘩を始めるか分かったものではないからな」

 あぁ、確かに・・・・・・その考えは、分かりやすく想像できた。
 なんていうか、すごく血の気が多そうだもんね・・・・・・。
 だから、わざわざ自由行動みたいにさせてたのかな。
 それだって、どこで何するか分かったもんじゃない気もするけど。

「それでだ・・・・・・彼女、ワクナか。生まれも育ちもヒノボリの国、と言ったのを覚えているか?」
「はい」
「ということは、彼女を連れる商人とその護衛は、東側から北へ来ないと説明がつかない」
「あー・・・・・・そうですね。北部でヒノボリ出身の人を買い付けるっていうのは・・・・・・」
「まず、無理だ。人身売買は、厳重な管理の上で許可されている」
「・・・・・・・・・・・・え?」

 ん、聞き間違えだろうか。
 あれ、今――許可って?

「驚いただろう。当然の反応だ」

 振り向かなくても、クロッキアさんは僕の沈黙から、こちらの表情を察したらしい。

「俗に魔王討伐戦と呼ばれる、三十年以上前の外征大戦以降、世界の秩序は歪んでいった。それを維持するだけの体力が人類種そのものから失われ、仮初めの平和を用意するので手一杯だった。・・・・・・人身売買の認可も、その狂った歯車の一つだ」
「そんな、どうして?」
「私が自分の旅で得た所感だが、潜在化を防ぐためだろう」
「せんざいか?」
「禁じれば、自ずとひた隠しになる。いずれは秩序の目の届かないところで、それは行われるだろう。ならば、いっそ公式に認めることで、あまりにも非人道的な行いを排除しようということだ」
「それはなんというか・・・・・・無茶苦茶ですよっ」
「同感だ。だが、潜在化すれば、不当に弱者が取引されることになる。世界が認めた人身売買は、常に国家戦略を理由とする場合のみだ。私欲での売買は認められない。魔族との戦いに必要な人手を得る手段として、これは特例的に許されているんだ。もっとも、それでも悪事を働く人間はいるがな」

 クロッキアさんが言うには、一定の効果は発揮しているらしい。
 けど、それでも感情的な部分では受け入れられなかった。
 命をものみたいに扱うなんて、いくらなんでもあんまりだ。

「まぁ、その話はいずれまた機会がある。今は、この問題についての話をしたい。・・・・・・戻すが、紛れもないヒノボリの民を連れ出すには、東から北へ来るしかないんだ。つまり、今回襲われた連中は、わざわざ北へ向かっていたのに、東へ引き返してきた、という推測が成り立つ」
「・・・・・・でも、どうして? 北部でその・・・・・・ワクナさんたちを、売るつもりだったんですよね?」
「あぁ。ユウスケ、雪が踏み固められた場所を覚えているか?」
「はい。先客がいたのかなって思いましたけど・・・・・・」
「それだ。森に入った時から違和感はあったが、早朝に村を発った商人達の内、私達を襲撃しようと企んでいた者らがいた。旅慣れた集団ならば、この程度の森、先回りして戦場を調えておくことは造作もない」
「ちょ、ちょっと待ってください。な、なんで僕らを?」

 必死に脳内で内容を整理していく。
 だってそうだ。いくら金になりそうだからって、そんな回りくどいこと、するのだろうか。
 けど、その疑問もクロッキアさんが取り出した一枚の金貨を見て、気づいてしまう。

「王貨を狙って?」
「まぁ、王貨と君達二人だな。だが、主目的は王貨だ。この手の貨幣は、普通ならば価値が高すぎて通常の市場では手に余る。だが、王族でなくとも高位の地位を持つ人間・・・・・・貴族相手ならば、話は別だ。一介の商人が扱えずとも、貴族であれば越権的な使い道もあるだろう。がしかし、王貨自体を貴族が手に入れるのは至難の業だ。そもそも、金を積んで手に入るものではないからな」
「でも、商人からなら・・・・・・お金次第で手に入る?」

 クロッキアさんは、ご明察とばかりに頷いた。

「おそらく、貴族との交渉事に何らかの足がかりを持つ商人だったのだろう。・・・・・・違和感の全容はこんなところだ。だがな、まだ引っかかる部分がある」
「・・・・・・?」
「ワクナは、私達を、と言っていた。つまり、まだ他に商品として囚われていた者がいたということだ」
「はい。でも、その人達も・・・・・・」
「ユウスケ、彼らは東から来ているな?」
「は、はい。じゃないと、ヒノボリの人が奴隷商に囚われているのはおかしいですし・・・・・・」
「獣憑きは、魂に魔を宿す。人狼と比べても、外的変化で見極めることは難しい」

 言われ、僕は息を呑んだ。
 クロッキアさんが言いたいことって、つまり。

「噂自体、怪しくなってきた。私から見ても、ワクナは非力な女性そのものだ。・・・・・・彼女を信じるならば、他に運んでいた奴隷の内、誰かが獣憑きであった可能性がある」
「でも、その奴隷全員がヒノボリの人達ってことはあるんですか?」
「逆に、そうじゃない可能性の方が考えづらい。いくら人身売買が認可されているとはいえ、管理は厳重だ。出入国一つにとっても、馬鹿にならない担保金を取られる上、私欲での売買と疑われればそれだけで最悪、斬首刑になる。見返りこそ大きいが、奴隷なんてものを積んで各国をまわること自体が利益に反するんだ」
「でも、じゃあなんでわざわざ北部を目指していたんでしょう?」

 疑問自体は、ふと浮かんできたものだった。
 しかし、それを聞いたクロッキアさんは、一層語気を鋭くさせ、続けた。

「奴隷以外にも、獣憑きであった人間がいる、ということかもしれない」
「え? え、え? それって、どういう――」
「噂自体が怪しいのは、そういうことだ。まず、東から蜘蛛の獣憑きの噂を持ち込んだという商人自体、本当にただの人間だったのか? 獣憑きは元来、魂が獣に浸食されるほど自我を失うというが、それは我々も変わらない。魔性にかぶけば、人の在り方など簡単に消えてしまう。・・・・・・だが逆に、魔性を宿しながら人の理性を留めることも可能だ。それは、人狼や吸血鬼が証明している」
「・・・・・・クロッキアさん、ぼく、頭が破裂しそうです」

 ここまでくると、僕は情報量に耐えきれず、オーバーヒート寸前だった。
 人身売買、奴隷商とその護衛、そして王貨に獣憑き。
 聞き慣れない単語が短時間で雪崩れ込んできたことで、未熟な僕の脳みそは音を上げていた。

「あぁ、すまない。そうだな、これは私が考えをまとめてから話す内容だったかもしれない。つい、時間があるからと君に甘えてしまった。許してくれ、ユウスケ」
「い、いえそんな・・・・・・けど、その獣憑きっていうのは、あちらこちらにいるものなんでしょうか?」

 ふと、呟くようにしてもれた疑問に、クロッキアさんは「良い勘だ」と返してくる。

「噂通りだとしても、ここはまだ北部だ。ヒノボリの領土を荒らし回っている、という内容と乖離する」
「じゃ、じゃあ・・・・・・噂が間違っている、とか?」
「いや、どちらかといえば・・・・・・事態が悪化している、と取るべきだろう。私が知る限り、獣憑きは表立って荒事を引き起こすような存在ではないのだが・・・・・・」

 獣憑き。
 最初は狩人の村落で、ぽっと出た話題だと思っていたものが、今では不穏の火種になっていた。
 拙い記憶を辿れば、それは確か魔人の一種なのだとか。

「獣の魂が憑依する、かぁ・・・・・・なんだか日本の幽霊みたいだな」

 夜ということもあり、ぼそり、と嫌なことを口にしてしまう。

「なんだ、君の世界にも霊魂は存在するのか」

 クロッキアさんは、意外そうな声をあげた。
 とはいえ、魔族や魔法なんかが実在するこの世界とは違って、あくまで眉唾の範疇を超えないものが、僕の元いた世界でいう「霊魂」だ。
 それをクロッキアさんに伝えると、逆に感心した風に頷かれてしまう。

「随分と物質主義というか、ある意味では冷静な視点を持っているな」
「そ、そんなことないですよ。なんていうか・・・・・・理屈に支配されてて、逆に説明のつかないものに対しては対処できないだけというか・・・・・・」

 良くも悪くも、文明に傾倒したのが僕の元いた世界だと思う。
 だからこそ、文明と調和できない現象や存在は、それだけで「超常」のレッテルを貼られてしまうわけだし。

「これから大丈夫でしょうか?」

 噂を噂と思っていただけに、僕は不安を隠し切れないでいた。
 おそらく、クロッキアさんの前だから、というのもあるけれど。

「問題に巻き込まれないか、という意味で言えば、なんとも言えないのが現状だ。ただ、くどいようだが君とターナは私が守る。まぁ、あまり気は進まないが同行する間はワクナもその内に入るが」
「そう言ってくれるのはすごく嬉しいですし、安心しますけど・・・・・・クロッキアさん、ワクナさんのこと苦手なんですか?」

 なんだか、はっきりと気が進まない、と聞こえたけど。

「好き嫌いではないな。私は、君とターナの守護を誓い、それに仕える立場だ。極端な物言いをすれば、君達二人以外は私が関わる義理もない。私がワクナを守ることがあるならば、それはあくまで君達の延長線上――つまりは、ついでだ」

 言葉だけを並べれば、それは完全に突き放した言い方だ。
 けど、それ以上にクロッキアさんの鋼のような精神を垣間見た気分だった。
 だって、守る義理はないとしながら、結局はついででも面倒を見てやる、と言っているわけだよね。
 自分の正義感よりも、僕がワクナさんを見捨てられないという「気持ち」を立ててくれているんだ。

「クロッキアさん」
「・・・・・・ん?」
「ありがとうございます」

 御者台にある大きな背中が、居心地悪そうに僅かに揺れた。
 少し間を置いた後、「あくまでついでだ」と、念を押すように繰り返す。
 それでもやはり、僕はさっきよりも随分と安心していた。
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僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

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