貞操逆転の世界で、俺は理想の青春を歩む。

やまいし

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第6話 入学式①

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 ついこの間まで感じていた肌寒さは姿を消し、春らしい暖かな陽気が感じられる。
 街は新緑の濃い緑に彩られ生き生きと、そして学園に続く道では綺麗な桜が咲き、空には雲一つない青空が広がっていた。

 満開の桜。快晴の空。そして新たな生活への期待。
 この素晴らしき日である今日、清明学園の入学式が行われる。

 これからどんな出来事が起こるのか。
 それは今の俺では想像もつかない事だ。……しかしきっと沢山の楽しいことが起こるだろう。
 
 昨日なんて楽しみすぎてあんまり眠れなかった。……少し寝不足かもしれないな。
 まあこれは仕方ないだろう。何てったって清明学園に男子は俺一人なんだ!ほぼ女子高だぞ!ワクワクしない方が男じゃない!
 そ、それに! 皆も俺と同じ立場になればこうなる事はずだ!
 
 ……べ、べつに言い訳じゃないんだからね! 勘違いしないでよね!!
 

「 はーくん大丈夫? どうかしたの? 」


――と、俺が心の中で葛藤していると、母さんが声をかけてきた。
  まさか声に出てたのか……?! 

 
「い、いや大丈夫だよ! かか、母さんこそどうかしたの?」

 俺はなるべく動揺が伝わらないように返事をしようとした……が、めちゃくちゃ動揺してしまった。


「そう?なら良かったわ!  母さんには、はーくんが何かと葛藤しているように見えたから!心配になったのよ!」

「そ、そうだったんだ!うん!俺は大丈夫だよ!心配してくれてありがとう!」

 凄すぎだろ母さん!マジで焦ったわ……。
 いくら俺が女子に好意的に接すると言っても、こんな邪なことを考えていると知られたらどうなることか……。
 気を付けないとな……。

――いや、もしかして美空には気づかれて……

 
 嫌な予感がした俺は、隣の席をそっと伺う。
 しかし、そこには寝ている美空の姿があった。……助かった。美空は何かと鋭いからな……。

「母さん。美空寝てるけどどうかしたの?」

 普通に心配になったので母さんに聞いてみた。体調悪いのだろうか? 

「実はね、美空ははーくんの入学式が楽しみだったみたいで、昨日なかなか寝付けなかったみたいなのよ。」

「楽しみ? 俺の入学式なのに? 」

「そうよ? 美空だけじゃないわ! 母さんだって楽しみにしてたんだから!」

……そういうものなのか? 俺には良くわからないがそういう事らしい。

「写真も撮らなくちゃね! この日のためにカメラを買った甲斐があったわ!」

「……ははは。天気良いから良い写真撮れるといいね。」

「そうね! 何百枚でも撮れる準備はしてきたわ!」

「そんなに?!10枚で十分だよ!」

「甘いわはーくん! 甘すぎるわ!」

――それからしばらくの間母さんと話していると前方に大きな建物が見えてきた。
たぶんこれが清明学園なのだろう。パンフレットに載っていた写真で見たことがある。
写真で見た時も大きいと思ったけど実物はそれ以上だな……。前世で通ってた大学と同じくらいはあるぞ。

「美空! 起きなさい!そろそろ着くわよ!」

未だぐっすりと寝ている美空に母さんが声をかける。

「んん……。――――あっ! 美空寝ちゃってた!もう!  せっかくお兄ちゃんと沢山話せると思ったのに……。」

美空はそう言って落ち込みだした。――俺の妹が可愛すぎる件について。


「美空!そんなに落ち込むことないぞ!家に帰ったら沢山話そう!な? 」

お兄ちゃんとして妹を悲しませることなんてできない!これは兄として当然の事だ!――決して妹といちゃいちゃあわよくば……などとは考えていない!

「……ほんとに? 」

「当たり前だ!俺は美空のお兄ちゃんだぞ!」

「……学校始まっても美空との時間作ってくれる?」

「もちろん!俺だって美空と話したいからな!」

「……ボソボソ……お兄ちゃん好き……」

「うん? ……ごめん良く聞こえなかった。」

「――!! もう! ……お兄ちゃんが好きって言ったの!!」

そう顔を赤らめ上目遣いで言う美空に、俺は兄として良くない気持ちになりかけた。
しかし直ぐに、それは妹として兄を慕っているということを言っているのだと気づいた。
……危ないところだった。もし俺が鈍感だったら大変なことになってたぞ。後で説教しないとな。

「そっか! ――でも俺だって美空の事好きだぞ? 」

「なっ!な、な、な、ななに言ってるのお兄ちゃん!!まだ心の準備が!」

お返しとばかりに好きと伝えると、美空は俺の想定していたのと違う反応をした。
……何かまずかったのだろうか?

「もちろん母さんも好きだよ。」

「あら嬉しいわ!私もはーくんの事大好きよ!世界一ね!」

「あ、ありがとう!少し照れるけど嬉しいよ。」

母さんの言葉に思わず照れてしまった。やはり面と向かって好意を伝えられるのは家族でも恥ずかしいな。
いや、家族だからこそか? まあけど、こうして家族で言い合うのもたまには良いかもしれないな。

……俺がそんなことを呑気に考えていると、隣の席から大きく息を吸い込む音が聞こえてきた。
そして――――

「お兄ちゃんのばかああああああああ!!!」

――と、美空の叫び声が車の中で木霊こだました。……俺の耳を破壊して。


こうして俺は、耳が破壊されたのに加えて美空から何度も何度も叩かれたのだった。な、なんで……??

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