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第1章 異世界転生してみたいのです

まさかの出会いなのです

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「……着いたぞ」
「ふぃー、久しぶりに来たわぁー!疲れたー!」
「ぼ、僕はちょっと気持ち悪ぃぉぇぇ……」
「え、ちょっと磨冬大丈夫?今までこんなことなかったからどうしたらいいか分からないわ!」
「おおおおぃ、とりあえず病院の中入るぞ!」

おとうさ……ん?こと千秋さんが僕を担いで歩き始めました。
さっきからお父さんとお母さんという単語がいずいよ……
ずっとお父様、お母様だったからなぁ…


それにしても…………病院?って思ってたよりも小さいなぁ。
ウーノ王国のホスピタルはもっと大きくてたくさんの人が働いていたなぁ。
回復魔法が使えるナースさんが忙しそうだったっけ……


「ここはね、千秋さんのお兄さんが経営する病院なの。個人医院だから小さいけれど、ここの周辺の人からは腕の良いお医者さんだって評判なのよ?」
「そうなんですか……」


春華さん……お母さ…んは僕の心が読めるのでしょうか。
小さいなぁと少し馬鹿にしてたのがわかってしまったのでしょうか。
まさか心眼使い……?


「門野磨冬さん、診察室にどうぞ!」

「あら、呼ばれたわ。行くわよ、磨冬。」
「………はい。」







*****






診察室に入った瞬間、空気が変わった。
僕の故郷の匂いがした。
僕は、思わず立ち尽くしてしまった。
目の前に、僕のお父様に似ている人がいる。

「…お父様……?」

何故か涙が出てきた。

目覚めたら知らない場所で知らない人たちに自分とは違う人物として扱われて、相手の明るい態度にのせられて今までわかんなかったけど、やっぱり不安で仕方がなかった。
緊張の糸が切れちゃったみたいだ。

「俺は君の“お父様”じゃないよ、磨冬くん。」

目の前の人は、少し微笑んだ。

「千秋、春華さん。少し、二人きりにしてもらえるかな?」







*****






「君の本当の名前を教えてくれる?」


門野椎夏(かどの しいな)──お父様にそっくりなこの人はそう名乗った。

「マフュール・カドノ・ウーノ。ウーノ王国の第二王子のはず、です。えっと椎夏さん、僕は記憶喪失だってあの人達に言われたんですけど、僕は磨冬なんて人知らないんです。ほんとなんです信じてくださいお願いします」
「落ち着いて。マフュールくん、かな?」

自分の本当の名前を呼ばれてびくりと反応してしまう。

「信じてくれるんですか?」
「信じるも何もウーノ王国創ったの俺だしね?」
「……………………?」

1分くらい固まっていたかもしれない。
だってサラッと変なこと聞いた気がするんですけど。
俺が創った・・・・・

「おーい、大丈夫?」
「え、…あ、…………へぁ?」
「大丈夫じゃないか。まぁ、そうだよね(笑)」

えへへ、と笑い、

「ウーノ王国だけじゃなく、ドーシュ王国もトゥレス王国もだけどね(てへぺろ)」

ウインクを決めたあと、

「いやぁ異世界転生してからチート能力フル活用して楽しんだ後、子供が出来て、マーズ星で一生を終えることを決意したらまさかのまさか、戻ってきちゃってさぁー(笑)」

照れたように笑って、

「あっちではナーシャ・カドノって名乗ってたんだ。知ってる?ほら、“しいな”を“しーな”にして、反対にして、外国風にして、“ナーシャ”。洒落てるでしょう?」

眼鏡をくぃ、と上げた。


「ようこそ、ナーシャ・カドノの故郷、地球へ!あ、そっちではアース星っていうんだっけ。インターネットはまだちゃんと機能してる?……きっと君は僕のひひひひ曾孫くらいだよね?(笑)子孫として、歓迎するよ!」




「えええええええええええ」




神様に遭遇しちゃいました。



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