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第七章

第七章第五節 大団円5

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数日後、一行の姿はシールドランドへ続く街道筋にあった。

近衛兵の装束に身を固め、立ち姿が一層堂々としたゼファーがリザ男のもとへと近づいてきた。「しかし、もうここでお別れとは、名残惜しい」と彼が声をかける。

リザ男も同じ気持ちで応えた。「全く、俺ももっとお前と酒を酌み交わしたかった。」と。二人の間には、これまで共に過ごした日々の絆があり、それは簡単に言葉にはできないものだった。

本国にリザ男の結婚話を連絡したところ、あれよあれよという間に話が大きくなってしまった。リザ男は今やシールドランドが誇る勇士としての立場を確立しており、その結婚ともなれば、下手な相手では済まされない。その結果、ネコ美は盾の王の子女として扱われることになってしまったのだ。
こうなってしまっては、儀礼的にネコ美は一度、盾の王にお目通を願わなければならない。グリフォンズは、帰還がてら彼女を護衛するという任務を新たに命ぜられたのだ。

「盾の王の子女か‥」リザ男は遠くを見つめながら呟いた。この結論に至るまでには、数多くの議論と調整が必要だった。しかし、最終的には全てがリザ男とネコ美の愛と将来を考えた上での決断であった。

ゼファーはリザ男の肩を軽く叩き、「我はお主のことを信じている。お前とネコ美様の幸せを願っている。だから、どんなに時が経っても、我はお主の味方だ。何かあれば、この国を、我を頼れ。」と力強く言った。

その言葉に、リザ男は深く感謝の意を表し、「ありがとう、「極北の暴風」。お前のような友がいてくれて、本当に幸せだ」と心からの言葉を返した。


一行はゼファーと別れ、シールドランドへの帰路を急ぐ。

リス蔵は言った。「ま、行きと違って、帰りはグリフォンズのみんなも、ネコ美さんもいるし、賑やかでオイラ嬉しいですよ!」

しかし、ネコ美は不安を隠せずに、「しかし、わたくし、心配です。盾の王様とはどのような方なのでしょうか?」と問いかけた。

リザ男はそれに対し軽口を叩いた。「ん? 言っておらなんだか? 聞かん坊主の俺を国の外に放り出すために、漫遊の旅に追い立てた頑固なジジイよ。」

ネコ美は少し困ったように「もう、リザ男様!まじめに聞いてくださいまし!」と言い、周囲は笑いに包まれた。「はははは!」とリザ男も笑った。

そのやり取りの最中、ネコ美はリザ男の腕を取り、体をすり寄せた。「でも、リザ男様と出会って、こうしてすぐに旅に出かけられるなんて、新婚旅行みたい‥」。その仕草に、リス蔵(リス子)は妬ましさを隠せず、リザ男の反対側の腕を取って同じように身をすり寄せた。

「リザ男様!バークレンでの戦いの疲れ、本国で癒して差し上げます!」とリス蔵(リス子)は言った。

ターロックはその様子を見て口笛を吹き、冷やかし始めた。リザ男は、そんな二人の間で顔を真っ赤にして耐えるしかなかった。シールドランドへの帰路は、こんなにも賑やかで、心温まるものになるとは、リザ男自身も予想していなかった。

バルドが、賑やかな雰囲気をひとまず断ち切るように言った。「さあ、お惚気もその程度にしていただいて。そろそろ参りましょう。今日中に峠を一つ越えてしまわなければ!」

彼の言葉に、全員から一斉に「おおーっ!」という声が上がった。それぞれが冒険の準備を整え、新たな旅立ちに向けての意気込みを見せる。

その瞬間、リザ男は心の中で、本当に良い仲間たちに恵まれたものだとしみじみと感じるのだった。これまでの困難を共に乗り越え、今も彼の側で支えてくれる仲間たち。彼らの存在があったからこそ、リザ男は今の自分がいる。彼らと共に新たな未来に踏み出すことへの期待と感謝の気持ちで、リザ男の心は満たされていた。

一行は、シールドランドへの長い道のりを進み始める。峠を越え、新たな試練に立ち向かう覚悟を決めたリザ男と彼の仲間たち。その旅路は、まるで彼らの絆をより一層深めるための冒険のように感じられた。
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