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先程の連絡で指定された場所へ向かう。
森からさほど遠くない場所にある民家だった。
家の周りは柵に囲まれ、その広い敷地には畑とたくさんの牛に似た動物がゆったりと草を食んでいた。
中から出てきたのは年配の男。
ズルズルと血の道を作りながら歩いてきた冬に、少しばかり驚きながらも、助かりました。と頭を下げる。
「いやぁ。まさかこんなにお若いお方が来て下さっていたなんて。それにネテロス様までいらっしゃるとは。大した挨拶も出来ずにすみません。」
麦わら帽をおさえながら、男は笑う。
「挨拶なんて必要ねぇよ。仕事だ。それに俺は今日は付き添いだ。」
「なんと!お若い方、貴方様がこれを。」
「あぁ。ともかく仕事は終わった。こいつの処理はどうする?」
「ウェアウルフの毛皮は暖かく、寒い季節にはもってこいです。こちらで捌きますので、今回はそちらもお渡しいたします。」
「それはどうも。納屋まで運ぶ。」
「ありがたい。捌き終えるまでどうぞ上がっていってください。何も用意出来ませんが、湯を張りましょう。お体を清めていきなさいな。」
「あぁ。悪ぃな。」
男はとんでもございません。とニコニコしながら冬たちを家へ招き入れ、納屋へ歩いていった。
「お前腹の傷は?」
風呂場へ向かおうとした冬にネテロスは声をかける。
「ん?あぁ。もう殆ど塞がった。」
「見せてみ?」
冬の破れた服を捲りあげれば、
乾いた血の下に、薄く皮膚を張った傷が見えた。
「へぇ。おもしれぇ。」
興味深そうにその凹凸を指でなぞれば、少しひくつく薄い腹。
「まだ痛てぇんだから急に触んなよ。」
眉を寄せて抗議する冬に、悪い悪い。とネテロスは笑う。
「もういいか?風呂入りてぇ。」
「ん。いってらっしゃい。」
ぱ、と手を離し冬を解放する。
冬は小さくため息をついて風呂場へと消えていった。
微かに聞こえる水音をききながら、ネテロスは先程の光景を思い出す。
あの身のこなしと魔法への理解度は目を見張るものがあった。
つい先日魔法を知ったものとは思えない練度の高さ。
発想も柔軟だ。
あれは鍛錬でどうにかなるものの類ではない。
恐ろしいまでの戦闘センス。生まれながらに持っている才能だ。
そしてあの目。暴力に身を晒すことに喜びを感じる人間、俺と同じ人種だ。
……魔物も魔法もない平和な世界はさぞ退屈だっただろうな。
先程の冬の嬉々とした表情を思い出し、ネテロスはクスリと笑う。
普段澄ましたその顔が、凶悪な笑みを貼り付ける様は酷くネテロスの劣情を煽った。
今度フレッドには酒でも奢ってやろう。と冬を連れて来た幼なじみに感謝する。
大方あいつも下心があって俺を紹介したのだろう。
うちにいれば自ずと顔を合わせる機会は増えるからな。
……まぁ、大人しく譲ってやる気は毛頭ないが。
依頼主が先程出してくれた紅茶に口を付け、ネテロスは久しぶりに高まっている気持ちを抑える。
「ここまでの血の量は初めてだけどよ、全然落ちねぇのな。」
やっと体綺麗になったわ。と風呂場から冬が戻ってきた。
「お前その服どうした?」
先程まで来ていた物と同じに見えるが、破れた箇所は愚か、真っ赤に染っていた血すら残っていない。
新品同様のそれを見てネテロスがそう声をかけた。
「ん?あぁ。俺もミコサマのなり損ないだからな。こんくらいは直せんだよ。」
すげぇ便利だよな、と掌に光を灯らせて言った。
「光魔法か。んな貴重な属性魔法を洗濯に使うやつ他にいねぇよ。」
「いいじゃん別に。わざわざ洗う必要ねぇの凄くね?」
上機嫌に椅子に座る冬をみて、その年相応な態度に微笑んだ。
相当先の戦いが楽しかったらしい。
可愛いとこあるじゃねえかとネテロスは再び紅茶に口をつける。
「報酬受け取ったら飯でも行くか。奢る。」
「……行く。」
ネテロスと食事と食費を天秤にかけ、冬はそう答えた。
金は節約するに限る。
「はっ。可愛いなお前。」
うるせぇよ。と呆れた表情の冬に、ネテロスはその笑みを一層深くするのだった。
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