君の瞳は月夜に輝く

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幕開け

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 エドガーside




 …。




 アルス君が動く気配を感じる。僕はフォルストが書いた論文を閉じ、様子を見る。
 しばらく身動ぎをした後、すっと目が開かれる。


「…起きた?ここがどこだか分かるかな?」そう呼び掛けてみると、彷徨っていた視線がこちらを向く。

「え、エドガー先生…?」
「うん、そうだよ。調子はどうかな…?」
「調子…どこも痛くないし…。て、あれ何でエドガー先生が…。」

 そこで昨日のことを全部思い出したのか、徐々にアルス君の目が見開かれていく。


「そうだ、リュークさん…。リュークさんは…!!」そう言って部屋から飛び出ようとするアルス君を何とか抑える。

 …ほんと、考えるよりも先に体が動いちゃうのアラン君に似てるんだから…。


「落ち着いて、今行ったって無駄だよ。」
「え…。リュークさんは…?」
「残念ながら、まだ見つかってないんだよね…。まぁ、すでに国の機関には報告済みだし、色々調査も進んでる。今僕たちにできることは特にないかもね。」
「…。」
「それと、今のところ僕たちの見解としては、誘拐犯の本当の狙いはアルス君なんじゃないかって考えているんだ。」

 アルス君にはコシュートだとか細かいことは言うなって強く言われてるんだけど、さすがにこれくらいはいいんじゃないかな?

「狙いが、僕…?」
「うん。ほら、心当たりがあるんじゃないかな?夏祭りの誘拐事件、とかさ…。」


 アルス君はしばらく何かを考えた後、何かをひらめいたようだった。

 …顎触りながら考え込む癖も似てる。眉間の皺の感じもそっくり…。


「だからね、むやみやたらにこの部屋を出ることはできないんだ。けど、そうもいかないでしょ?自分でも何かしら手掛かり見つけたいでしょ?」

 なんで僕の考えていることが分かるんだ?と言わんばかりに驚いた表情を浮かべるアルス君。
 ふふ、僕ね結構勘が良いんだ。

「だろうと思って助っ人を呼んでおいたよ。だからその人たちが来るまでフォルストの論文読んであら捜しでもしてようよ。」そして今度は困惑した表情を浮かべるアルス君。


「意外と面白んだ、この論文。」そう言って僕はフォルストが『私と彼の力作だ!』と称していた論文を渡した。



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