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第21話
しおりを挟むジェイクの毅然とした姿と行動力を目の当たりにした島民は、次々と海へ駆け込み、縄を摑んだ。「おいらたちも協力します!」といって、数十人がかりでの救出作業が始まる。しばらくすると、鯨のほうでも尾びれをバタつかせ、海中へ潜ろうと動きだした。ジェイクは網と縄を解き、あとは波に乗って泳ぎだす瞬間を見まもった。
「さあ、行け。おまえはまだ助かる。しっかり生きろ」
「がんばれ、がんばれっ!!」と、プルプァも応援する。海水を飲みゲホゲホと咳込む島民もいたが、鯨の動きが読めず、どうなるのか不安そうに見つめた。巨大な海洋生物は、いったん深く潜ってから力強く浮上し、噴孔から潮を吹くと、巨体を横に捻り、ドパーンッと沈んでいく。大量の水飛沫がキラキラと光り、その迫力に島民たちは「す、すごい!!」「やったか!?」と、声を上げた。プルプァも大きな拍手を送った。海からあがりった漁師は、力尽きたかのように浜辺に座り込み、互いの肩をたたき合った。
「いやぁ、すごかったなー!」
「ああ、すごかった!」
「まさかこの海に、あんなでかい魚がいるとはなァ」
「今でも信じられないくらいだ。見ろよ、手のふるえが止まらん……」
それぞれ興奮して語り合う。波打ち際に佇むジェイクは、立入禁止の方角へ視線を向け、ロンファの姿が見られないか確認した。今回の件で青年はあらわれなかったが、のちに耳へ届くことになる。駆け寄ってきたプルプァは、憧憬のまなざしで軍人の横顔を見つめた。
「やっぱり、ジェイクさんってすごいや。陸にあがった魚を、わざわざ海に還すなんて、島民なら誰も考えないよ。本当に〈水竜の化身〉みたいで、かっこよかった!」
プルプァの言葉に深い意味はない。しかし、ジェイクは「フッ」と小さく笑っておく。ちなみに、島民の漁場は浅海部にかぎられているようで、これまでいちども鯨を見たことがないらしい。奇跡の瞬間に立ち合ったと興奮する漁師をよそに、ジェイクは短靴を拾うと、白い布に目を留めた。
(……あれは、帆前船のものじゃないか? それもかなり大型だ。船体らしき木材も見られる。波に乗って打ち上げられたのならば、漂流者はひとりもいないのか?)
思わず、最悪の事態を想像し、眉をひそめた。
(海上で大破した場合、沈没は免れない。客も乗組員も無事ではすまんな……)
ジェイクは、沖に向かって黙祷した。その仕草をふしぎそうに見あげるプルプァだが、なんとなく胸の奥が熱くなった。この出来事はクムザから長老に報告され、おおいに称賛された。
✓つづく
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