49 / 63
しあわせ計画
第49話 ※閲覧注意
しおりを挟むグレリオは飛びぬけて容姿の優れた男ではない。上品で知的な風貌は完璧な身なりや渋い香調によって演出された効果であり、生来の見栄えのよさは、洗練された内部から立ちあがってくる。向かい合ってことばを交わすうち、それは顕著にあらわれた。
「ん、……ぁんっ、グレ……リオ……!」
タドゥザの幻影による胸騒ぎから一転、好きな男に肌を愛撫される夢をみるリツェルは、ベッドの上で腰をひねり、甘い吐息を洩らした。
「あっ、……グレリオ! グレリオぉ!」
やさしい指づかいは、もどかしくてたまらない。無理やりでもグレリオのぬくもりを体内へいれてほしいと思った瞬間、「あぁんっ!」と、大きな声がでた。案の定、廊下をとおりかかったアロンツォに聞かれてしまい、食堂で吹かれた。
「おまえな、いい加減にしろよ。夜な夜な、あえぎ声が聞こえてくる宿舎なんて、洒落にならねぇぞ」
「う、うるさい。仕方ないだろう、無意識なんだから! ってか、そんなに云うほどあえいだ覚えはないぞ!」
前掛け姿で朝食を配膳するリツェルは、ジョルディに耳打ちされた。
「こんど、町の寡婦を紹介してやろうか?」
「寡婦って……」
「夫と別れて再婚していない女のことだ。適度に性欲を充たしてくれるぜ。向こうのほうが手馴れているからな」
ジョルディは真顔なので困る。リツェルは首をふってそばを離れた。席について食事を始めると、となりのロビンスから「聞いてもいい?」と前置きされた。
「だめって云っても、知りたいんだろ」
やや拗ねて返すリツェルだが、ロビンスは笑顔でつづけた。
「ぼくさ、辺境伯さまに抱かれてみたいって思ったことあるよ。あのひと、どんなふうに躰を動かすのか、ちょっと想像できないからさ」
かじったばかりのパンが咽喉に詰まったリツェルは、「げほっ、ごほっ」と咳こんだ。
「ロビンス、なに云って……!」
「もちろん、たとえばの話だよ。辺境伯さまって、つかみどころがない御人だけど、ベッドの上では激しいのかなぁって考えたら、めちゃくちゃにされる女性って、最高じゃない?」
「グレリオに、めちゃくちゃに……」
されても構わないと思った瞬間、ゾクッと下半身が反応を示した。実際、公爵令嬢のアミシアは、グレリオと肉体関係に発展した正妻である。どんなふうに裸体の女性を愛でるのか、興味がないといえばうそになる。ゴクンッと唾をのむリツェルに、アロンツォが「単細胞め」と口をはさんだ。
「単細胞で悪かったな。おれだって、たとえばの話だよ。もし、おれが貴族令嬢だとしたら、グレリオと結婚して、ロザリアみたいにたくさん子どもを産んで、跡継ぎが成長したら、ベルナルド領は安泰だ。だから、グレリオをしあわせにできるのは、男じゃなくて、身分の高い女でないと……」
ことばにして落ちこむリツェルは、スプーンを置いて席を立つ。廊下へでたところで、クレメンテが追いかけてきた。
「リツェルくん、だいじょうぶですか」
「……なにが」
「とても悲しそうな顔をしています」
「おれが?」
「はい」
自分が今、どんな顔をしているのかわからないリツェルは、無理やり笑って「平気だよ」とこたえた。コンラッドの子どもを身ごもるロザリアは、しあわせそうだった。リツェルは急に切なくなり、思考力が低下した。
「おれ、グレリオの子どもが産みたい……」
「リツェルくん、残念ながらそれは不可能です」
「どうして?」
「きみの生殖機能は雄性です。妊娠器官を持っていません」
「そんなの、わかってる。おれだって、ばかじゃない……。でも……、グレリオとしあわせになりたいって、どうしても、そう思ってしまうんだ……」
リツェルが吐露した胸のうちは、食事をするアロンツォやジョルディ、ロビンスの耳にもとどいた。グレリオへの思いが日増しに募るリツェルは、すっかり気の抜けた顔をして、その場にしゃがみこんだ。
《つづく》
1
あなたにおすすめの小説
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました
歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と
罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが
やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、
エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」
辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。
商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。
元夫が「戻ってこい」と泣きつくが——
「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」
平凡高校生の俺にイケメンアイドルが365回告白してくる理由
スノウマン(ユッキー)
BL
高校三年生の橘颯真はイケメンアイドル星宮光に毎日欠かさず告白されている。男同士とのこともあり、毎回断る颯真だが、一年という時間が彼らの関係を少しずつ変えていく。
どうして星宮は颯真に毎日告白するのか、そして彼らの恋の行方は?
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される
Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。
中1の雨の日熱を出した。
義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。
それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。
晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。
連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。
目覚めたら豪華な部屋!?
異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。
⚠️最初から義父に犯されます。
嫌な方はお戻りくださいませ。
久しぶりに書きました。
続きはぼちぼち書いていきます。
不定期更新で、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる