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第 71 話
しおりを挟む人間の傭兵ゼニスは、獣人の獣王子と夫婦になる約束を交わしていた。シリルのカラダは見た目こそ男のつくりだが、女性特有の生殖器官を持っており、成体期の発情中に雄と交接すれば妊娠は可能である。ただし、両性具有に交接できる雄の条件は、厳しく限られていた。
ゼニスとシリルが最初に遭遇した場所は、コスモポリテスの北東に位置する国境の荒れ地である。隣接するオルグロスト共和国で大規模な内乱が勃発し、周辺国から編入された傭兵団の中に、若いゼニスがいた。
また、16歳で独り立ちをしているため、性格は粗野な面があったが、けっして悪人というわけではない。各地を渡り歩く剣士として旅をする内に、傭兵業が肌に合うようだと自覚したゼニスは、武力闘争を鎮圧するため、一時的に配置される部隊に身を置くことが多くなってゆく。
強い風に吹かれて土烟があがる荒野で、ゼニスは運命的な出会いを遂げる。
「おい、知ってるか? 内大臣が政変を起こすらしいぞ。」
「ああ、町中が大騒ぎさ。この辺りに陣を敷かれたら、北の荒れ地が戦場になるからな。」
「だが、戦が始まれば、町の人間も布陣の準備や食糧を提供することで、国から協力金が得られるんだよな。」
「反勢力に加担した場合でも、義援金が手に入るし、この手の内乱が起きるたび、どっちに味方すべきか悩むよな。」
「ああ、まったくだ。武装してまで戦地に足を運びたくはないが、いよいよ傭兵も招集されているから、着実に戦闘態勢は整ってきている。町から避難する家族も増えているようだ。われわれ男衆の中には、一旗揚げようといきり立つ連中もいるしな。」
「お隣さんのコスモポリテスは、ここ数百年、平和な感じだが、こちら側はどうしてこうも内乱が多いんだ。」
「仕方ないさ。先代の王がご病気で急死されて、政治が混乱してるのさ。」
「それは3年前の話だろーが。まさか、未だに玉座は空なのか……?」
「たぶんな。でなければ、こんなに世上が不安定なはずがないだろう? 世継ぎ問題は内紛の火種になるから、早く決めてほしいもんだ。」
今まさに、北の辺境で戦の気配と動きがある。腰に剣をさげたゼニスは、酒場で会話する男衆の声に耳を傾けていたが、必要な情報を得られた時点で立ち去った。町役場へ向かい、傭兵団への参加を名乗り出る。
「へぇ、あんた、若いのにずいぶんと輝かしい戦歴を持ってるな。」
戦歴とは、戦いに参加した期間や度数を記した戦績書のことである。渡りの剣士や傭兵は、自らの力量を雇い主に示す必要があるため、各地の行政窓口へ経歴を報告し、身分証明代わりに発行してもらう制度ができあがっていた。戦歴を詐称する者は、たいてい戦刃で命を落とすため、腕前に疑惑があるかどうかは、あまり問われない。もしくは、雇い主個人によって、模擬試合などを取り組ませてから採用したりする。
とはいえ、臨戦態勢時はひとりでも多くの兵士を求める動きが優先されるため、スムーズに手続きは完了した。役場の窓口で傭兵団の切符を発券してもらったゼニスは、歩兵隊用に仮設された宿舎へ案内された。すでに40人ほどの力自慢が肩を寄せあって生活していたが、ゼニスは手荷物ひとつと身軽につき、壁際に腰をおろすと、体力を温存するため眠りにつく。
現在、ゼニスが身を置く宿舎から南へ位置する山合いに、獣人が棲まう小さな村があった。オルグロストは人間が開拓した土地につき、あとからやって来た獣人族は、共棲を許されるかたちで村をつくり、細々と生活している。その村を来訪する予定で、ふたりの護衛獣と国境付近を歩くシリルに、将来の伴侶となるべき理想の男との出会いが待っていた。
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