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第154話〈北の自然領域へ〉
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* * * * * *
墓地の近くに建つ監視塔に身を置くゼニスは、辞表を提出し、長らく世話になった関係者への丁寧な挨拶をすませた。帯巻きに剣をさげると、荷物をまとめて森へ向かう。いくらも歩かないうち、こちらに近づいてくる足音を発達した聴覚が捉えた。〔第74話参照〕
「……シリルか?」
ゼニスは、片方の耳から詰め物を取り除くと、西緯の方角へ視線を向けてつぶやいた。足音はまだ遠く、はっきりと断定できない。だが、軽やかに真っ直ぐ走ってくる足音が聞こえるため、シリルではないかと察した。
「頃合だろうと思って職を離れた途端、まさかのドンピシャとはな。」
ゼニスもまた、獣人族の領地を目ざして歩き出していた。ふたりが合流した場所は、アカデメイア川だった。向こう岸に佇むゼニスの姿を見つけたシリルは、パァッと表情が明るくなる。
「ゼニスだぁっ!!」
アカデメイアの川幅は数十メートルほどあるが、シリルは勢いよく飛び込むと、バシャバシャと力強く前脚で水を掻き、びしょ濡れになったままゼニスへ抱きついた。
「ゼニス!! ゼニスっ!! ゼニスぅ!! ぼくを待っててくれたの!?」
「ああ。……少し落ちつけ、シリル。」
再会を喜んで大興奮するシリルだが、ゼニスの鼓膜には痛いほどビリビリと声音が響く。同時に、シリルの声に変化を認めたゼニスは、微かに眉をひそめた。背丈こそ最後に会った時と同じようだが、全体的にふくよかな躰つきに成長していた。いつ女体化してもおかしくはない状況につき、ゼニスはすぐに計画を説明した。
「シリル、聞け。これから北緯へ行くぞ。」
「うん、いいよ。それじゃあ、出発しようか!」
「理由を最後まで聞かないのか、」
「うん、大丈夫だよ。ゼニスが決めたことなら、まちがいないから平気だもん。だから、ぼくは北緯へ行くよ。」
相変わらず無条件で信用されているゼニスだが、こんな時、シリルの危うさをどう諌めるべきか悩んでしまう。ふたりきりの危険な旅が、再び始まった瞬間だった。
* * * * * *
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