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わたしの生業は巫女だ。
毎日毎日、聖職者のみが入ることを許されている塔の最上階まで行き、太陽――わたしたちの宗教が祀っている神さまの仮の姿とされている――に向かって祈りを捧げる。
そう、今日も――
「神さま。どうかこの世に平穏をもたらしてください。だれもが幸せな時間を過ごせますように、そのみ力をお貸しください」
雨の日もくもりの日も、同じく祈りを捧げる。太陽が見えないのにどこを見ながら祈るのかといえば……ぶっちゃけ適当な方角だ。それでも、誰にも文句は言われない。
だって、この国にはわたしだけしか巫女がいないから。
わたしは巫女というだけで尊重され、丁寧に扱われ、敬われて生活している。
わたし自身は、亡き母の跡を継いで巫女になれただけなのにね。
代々の巫女は全員わたしのご先祖さま――つまり、この国の巫女は世襲制なのだ。
だからその家に女として生まれただけで、簡単になれてしまう。ちなみに複数女児が生まれた場合は、その全員が巫女になることができるシステムだ。
つまり、巫女は同時代にひとりしかなれない、なんて決まりがないのである。姉妹間で職の取り合いが起こらないようになっているなんて、実に平和でいい。
わたしの場合は兄ふたりがいる三兄妹だから、今代の巫女はわたしひとりだけ。
……ここだけの話だけれど、わたしは巫女という生業にやりがいとか誇らしさとか別に感じていなかったりする。
衣食住には困らない素敵な仕事ではあるけれど、ぶっちゃけわたしは神さまなんて信じていないから、祈りの時間や年に何度も行われる祭事にも身が入らないのだ。それに祭事って長い上に退屈だし。
どうして巫女のくせに神さまを信じてないのかって?
だって神さまが本当にいらっしゃるなら、わたしたちは病気や怪我、貧乏、他者との不仲で苦しまなくて済むはずなのにって、どうしても思ってしまうから。
天候が大きく荒れたりせず、自然にもおびえることなく、平和に暮らせるんじゃないかって思ってしまうから。
こんなこと、誰にも言えないけどね。
そんな秘密を抱えながら、わたしは太陽に向かって祈りを捧げる演技をするために、明日も塔の階段をのぼるのだ。
毎日毎日、聖職者のみが入ることを許されている塔の最上階まで行き、太陽――わたしたちの宗教が祀っている神さまの仮の姿とされている――に向かって祈りを捧げる。
そう、今日も――
「神さま。どうかこの世に平穏をもたらしてください。だれもが幸せな時間を過ごせますように、そのみ力をお貸しください」
雨の日もくもりの日も、同じく祈りを捧げる。太陽が見えないのにどこを見ながら祈るのかといえば……ぶっちゃけ適当な方角だ。それでも、誰にも文句は言われない。
だって、この国にはわたしだけしか巫女がいないから。
わたしは巫女というだけで尊重され、丁寧に扱われ、敬われて生活している。
わたし自身は、亡き母の跡を継いで巫女になれただけなのにね。
代々の巫女は全員わたしのご先祖さま――つまり、この国の巫女は世襲制なのだ。
だからその家に女として生まれただけで、簡単になれてしまう。ちなみに複数女児が生まれた場合は、その全員が巫女になることができるシステムだ。
つまり、巫女は同時代にひとりしかなれない、なんて決まりがないのである。姉妹間で職の取り合いが起こらないようになっているなんて、実に平和でいい。
わたしの場合は兄ふたりがいる三兄妹だから、今代の巫女はわたしひとりだけ。
……ここだけの話だけれど、わたしは巫女という生業にやりがいとか誇らしさとか別に感じていなかったりする。
衣食住には困らない素敵な仕事ではあるけれど、ぶっちゃけわたしは神さまなんて信じていないから、祈りの時間や年に何度も行われる祭事にも身が入らないのだ。それに祭事って長い上に退屈だし。
どうして巫女のくせに神さまを信じてないのかって?
だって神さまが本当にいらっしゃるなら、わたしたちは病気や怪我、貧乏、他者との不仲で苦しまなくて済むはずなのにって、どうしても思ってしまうから。
天候が大きく荒れたりせず、自然にもおびえることなく、平和に暮らせるんじゃないかって思ってしまうから。
こんなこと、誰にも言えないけどね。
そんな秘密を抱えながら、わたしは太陽に向かって祈りを捧げる演技をするために、明日も塔の階段をのぼるのだ。
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