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第14話「緊急クエスト」
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ギルドの酒場に向かうと、多くのプレイヤー達がなにやら騒がしく密集していた。
トール「(なんだろう?)」
辺りを見回すと、掲示板の貼り紙の前にシラーさんの姿があった。
トール「おはようございます」
シラー「おはよう」
トール「シラーさん体調は大丈夫ですか?」
シラー「問題ないわ」
トール「なら良かった。てか、朝から凄く騒がしいですね。なんの騒ぎですか?」
シラー「これよ………」
シラーはそう言いながら、掲示板を指さした。掲示板を見てみると、緊急クエストと記された貼り紙が大量に掲示されている。
トール「緊急……クエスト?なんですかこれ?」
シラー「ここクウェール近辺の全エリアにおいて、魔物の大移動が発生しているらしいわ。昨日いたナキガシラやキンモクオドシもそのひとつ。緊急クエストは普通のクエストと違って報酬が倍になる。金稼ぎとランク上げには打って付けの機会ね」
トール「えっ、マジっすか!受けましょうよ!」
シラー「どうして?アナタはもう十分一人でもやれるでしょう。私は単独で出るわ……」
トール「そ、そっすか………」
そこで俺はスパイルの言葉を思い出した。シラーさんはジェードバインの討伐にとても拘っている。標的を討伐するためなら、自らの命だって投げうる覚悟。今彼女を一人にしたら、またジェードバインの討伐に向かうのではないか?そう考えた俺は多少強引にシラーさんを呼び止めた。
トール「シラーさん!」
シラー「なに?」
トール「俺にはまだ魔物の知識とかソウルギアのこととかよく知らないし、魔物が大量に発生してるんなら、一人でやるより人数が多い方がいいと思うんだ!」
シラー「……………で?」
トール「だ、だからお願いします!引き続き俺と一緒に討伐して下さい!」
俺はシラーさんに頭を下げた。
シラー「他の人と組めばいいじゃない。私にはやるべきことがあるの……」
トール「それって、ジェードバインのことですよね?」
ジェードバインという言葉を聞いて、しだいにシラーの表情が曇っていく。
シラー「……………ええ、そうよ」
トール「俺もそいつの討伐に協力します!」
シラー「えっ?」
シラーはかつて、スパイルやその他大勢の人達とジェードバインのクエストに挑んでいた。つまり、シラーは別に自らの手でジェードバインを討伐したい訳ではない。ジェードバインが討伐されること自体を望んでいるんだ。ジェードバインが討伐されるのなら誰でもいいはず。それが例え俺であっても。
トール「俺はまだ初心者だけど、Aランクの魔物を倒せました。今はまだ実力が不足かもしれないけど、俺ならいずれジェードバインを討伐できるかもしれません……」
シラー「それは…………」
トール「……………ダメですか?」
シラー「……………私は、ジェードバインが討伐されるのであればどんなことだってする。ジェードバインが討伐されるのであれば、例え討伐するのが私でなくてもかまわない。けど、私以外の人間にはもう死んで欲しくない。確かにアナタは強い。けれどジェードバインに殺されないとも言いきれない。だからアナタとは組めない」
トール「じゃあ、俺が殺されないよう、シラーさんが俺を教育してくださいよ!」
シラー「え?何を言ってるの?」
トール「俺がジェードバインを倒すんで、俺がジェードバインに殺されないよう色々教えてくださいってことです!」
シラー「…………分からないわ。どうしてそこまで私に拘るの?」
トール「だって、今止めないと行くつもりでしょ?あの場所へ」
シラー「……………止めないでよ」
トール「止めますよ!魂獣石、それ使うと死ぬかもしれないんでしょ?スパイルさんから聞きましたよ!」
シラー「…………」
トール「どうしてそこまで急ぐ必要があるんですか?」
シラー「もうこれ以上、ジェードバインによって死人が出ないようにするためよ」
シラー「その為には、一刻も早くあれを討伐しなきゃいけない。私が解放させてあげないと………」
トール「えっ………?」
シラー「………………。いや、なんでもないわ………」
シラーは俺に背を向けて、受付の方へと向かって行った。
受付嬢「申し訳ございません。現在、緊急クエスト発生中のため、カイズラ島行きの船が手配不可能のなっております」
シラー「……………そう、分かったわ」
どうやらジェードバインの討伐は現在不可能なようだ。良かった。
トール「シラーさん………」
シラー「ふぅ……。あの島に行けないのなら、わざわざ急ぐ必要も無いわね……」
トール「じ、じゃあ……!」
シラー「さっきの話、受けるわ。けど勘違いしないで。ジェードバインを倒しに行けない今、私がやるべき最善を尽くそうとしているだけ。確かにアナタの力ならジェードバインを討伐できる可能性がある。けどまだ確証がない」
つまり、今ここで俺と組んで、改めて実力を計るってことか。今は緊急クエスト中。実力を示すには絶好の機会だ。
トール「(なんだろう?)」
辺りを見回すと、掲示板の貼り紙の前にシラーさんの姿があった。
トール「おはようございます」
シラー「おはよう」
トール「シラーさん体調は大丈夫ですか?」
シラー「問題ないわ」
トール「なら良かった。てか、朝から凄く騒がしいですね。なんの騒ぎですか?」
シラー「これよ………」
シラーはそう言いながら、掲示板を指さした。掲示板を見てみると、緊急クエストと記された貼り紙が大量に掲示されている。
トール「緊急……クエスト?なんですかこれ?」
シラー「ここクウェール近辺の全エリアにおいて、魔物の大移動が発生しているらしいわ。昨日いたナキガシラやキンモクオドシもそのひとつ。緊急クエストは普通のクエストと違って報酬が倍になる。金稼ぎとランク上げには打って付けの機会ね」
トール「えっ、マジっすか!受けましょうよ!」
シラー「どうして?アナタはもう十分一人でもやれるでしょう。私は単独で出るわ……」
トール「そ、そっすか………」
そこで俺はスパイルの言葉を思い出した。シラーさんはジェードバインの討伐にとても拘っている。標的を討伐するためなら、自らの命だって投げうる覚悟。今彼女を一人にしたら、またジェードバインの討伐に向かうのではないか?そう考えた俺は多少強引にシラーさんを呼び止めた。
トール「シラーさん!」
シラー「なに?」
トール「俺にはまだ魔物の知識とかソウルギアのこととかよく知らないし、魔物が大量に発生してるんなら、一人でやるより人数が多い方がいいと思うんだ!」
シラー「……………で?」
トール「だ、だからお願いします!引き続き俺と一緒に討伐して下さい!」
俺はシラーさんに頭を下げた。
シラー「他の人と組めばいいじゃない。私にはやるべきことがあるの……」
トール「それって、ジェードバインのことですよね?」
ジェードバインという言葉を聞いて、しだいにシラーの表情が曇っていく。
シラー「……………ええ、そうよ」
トール「俺もそいつの討伐に協力します!」
シラー「えっ?」
シラーはかつて、スパイルやその他大勢の人達とジェードバインのクエストに挑んでいた。つまり、シラーは別に自らの手でジェードバインを討伐したい訳ではない。ジェードバインが討伐されること自体を望んでいるんだ。ジェードバインが討伐されるのなら誰でもいいはず。それが例え俺であっても。
トール「俺はまだ初心者だけど、Aランクの魔物を倒せました。今はまだ実力が不足かもしれないけど、俺ならいずれジェードバインを討伐できるかもしれません……」
シラー「それは…………」
トール「……………ダメですか?」
シラー「……………私は、ジェードバインが討伐されるのであればどんなことだってする。ジェードバインが討伐されるのであれば、例え討伐するのが私でなくてもかまわない。けど、私以外の人間にはもう死んで欲しくない。確かにアナタは強い。けれどジェードバインに殺されないとも言いきれない。だからアナタとは組めない」
トール「じゃあ、俺が殺されないよう、シラーさんが俺を教育してくださいよ!」
シラー「え?何を言ってるの?」
トール「俺がジェードバインを倒すんで、俺がジェードバインに殺されないよう色々教えてくださいってことです!」
シラー「…………分からないわ。どうしてそこまで私に拘るの?」
トール「だって、今止めないと行くつもりでしょ?あの場所へ」
シラー「……………止めないでよ」
トール「止めますよ!魂獣石、それ使うと死ぬかもしれないんでしょ?スパイルさんから聞きましたよ!」
シラー「…………」
トール「どうしてそこまで急ぐ必要があるんですか?」
シラー「もうこれ以上、ジェードバインによって死人が出ないようにするためよ」
シラー「その為には、一刻も早くあれを討伐しなきゃいけない。私が解放させてあげないと………」
トール「えっ………?」
シラー「………………。いや、なんでもないわ………」
シラーは俺に背を向けて、受付の方へと向かって行った。
受付嬢「申し訳ございません。現在、緊急クエスト発生中のため、カイズラ島行きの船が手配不可能のなっております」
シラー「……………そう、分かったわ」
どうやらジェードバインの討伐は現在不可能なようだ。良かった。
トール「シラーさん………」
シラー「ふぅ……。あの島に行けないのなら、わざわざ急ぐ必要も無いわね……」
トール「じ、じゃあ……!」
シラー「さっきの話、受けるわ。けど勘違いしないで。ジェードバインを倒しに行けない今、私がやるべき最善を尽くそうとしているだけ。確かにアナタの力ならジェードバインを討伐できる可能性がある。けどまだ確証がない」
つまり、今ここで俺と組んで、改めて実力を計るってことか。今は緊急クエスト中。実力を示すには絶好の機会だ。
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