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第04話 魔法の特徴と序列

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 五つの魔法にはそれぞれ特徴がある。



 火は攻撃魔法を得意としてる。攻撃こそ最強の攻撃。 現在、王様の序列1位


 水は回復魔法を得意としてる、属性と混ざりやすい。あの氷魔法も水と風の合わせ技だそうだ。魔力のコントロールに関しては他より長けているらしい 序列4位


 土は防御魔法を得意としてる。絶対防御の守護神 序列2位


 風は支援魔法を得意としてる。支援と攻撃の組み合わせが厄介 序列3位


 雷は攻撃魔法を得意としてる。火よりも支援型で、風よりは攻撃型。 序列5位




 魔法の特徴はこんな感じだそうだ。

 ぱっと見だと攻撃こそが最強な感じがあるけど防御でも2位になってるんだよね。良く分からない。挑む順番、倒す順番、倒される順番、様々な要因で変わってくるんだろう。


「実力的にはみんな同じくらいなの?」
「そうだね、総兵力的には大体同じだと思うよ。作戦の内容、タイミング、魔法の使い方とかが大事かな。でも火の国はちょっと特殊で攻撃して攻撃する。作戦より攻撃って感じ」

 ――やっぱり攻撃こそ最強じゃないか――。

「でも同じような雷の国は5位、何かが違うみたいだね。情報は教えてもらっただけだから完全に信用はしないようにね、前回の情報だからさ」
「まあでもないよりはマシだよ、他には何か情報はない?」
「開始は明日、日食があるんだ、それが始まりの合図だよ。標的の顔は2日前に顔合わせした分かる。その都度教えるよ」
「顔合わせ……もしかしてこの継承戦はあまり険悪ではない?」

「……そんなことは無い、結構酷いものだよ? あの場にはなるべく行きたくないかな……」 苦笑いを浮かべる。 「昔からの習わしみたいなものでね、いくら仲が悪くてもこれだけはきちんとやるみたいなんだよ」
「へぇそうなんだ……あ、そうだ、序列に応じて恩恵を受けるんだよね? それってどう受けるの?」
「それは分からないんだ」
「え?」
「この世界には神様がいるらしくて、その神様がやってくれるって伝えられている。それに卑劣な行為が行き過ぎると神様が罰するとも言われてたりするんだよ」
「はぁ」

 神様と来たか、まあもう何が来ても受け入れるしかないのだが……。もしかして俺を呼んだのも神様だったりするのだろうか? この変な能力も気まぐれで付けて上で楽しんでいるのだろうか。
 ……ありえそうな話ではある。余興が好きだと聞くし、いつか対話する機会でもあったりしたら聞いてみよう。なんて考えてる時点でこっちに馴染んできてるんのかなぁ……。

「あとは攻め入る場所は兵のある所って決まってる。住民をむやみに巻き込まない為だね。だから住居と少し離れてる。住民を狙わないのは暗黙のルールになってるんだ。何が起きるか分からないし、天罰なんてみんな喰らいたくないんだよ。だから唯一の安全地帯となっている。その代わり、大将をその安全地帯に隠す真似なんてしたら卑劣な行為として罰を受けると思うよ、憶測だけどね」
「つまり、何はともあれ正々堂々戦えってことだよ」

 神様ってやつは殺し合いで楽しんでる割にむやみに人数は減らしたくないようだ、まるで卓上のゲームでもしてるかのようじゃないか。

 ……今はそれは置いておこう。

 戦いに関しては端からそのつもりだ、水の国に恥ずかしくないように戦って見せるさ。


「そうだ、この能力で試したいことがあるんだ、人を庇うことができるかどうかなんだけど、いざとなったら庇うときが来るかもしれないし」
 いざ庇ったときに自分だけ躱して庇った対象にだけ被害が蒙るなんてのが一番嫌だ。

「そうだね、わかった。他にも確認したいことがあったら何でも言ってくれ」







 人を庇う実験開始……。セッティングをしてもらったが。フィリアが弓を引き、壁を背に俺の左横にギルが立ってる。

「とりあえずギルの足狙うからギルは絶対に動かないでね」
「おう、分かった、治してくれれば幾らでも……っおわ!?」
「ちょっとなんで躱すの」
「いや、こええよ!! いてえじゃん!! 動かないのなかなか怖いぜ!?」
「うん、じゃあ後ろ向けば大丈夫だね」
「いや、こええよ!!」
「私の腕を信じて頂戴、命に係る所には絶対に当てないから」
「うぐぐ、分かったけど、痛くしないでね……?」
「楽にしてあげるわ」

「いや、それ殺す時の奴だよ」
 とつい突っ込んでしまった。その直後に勢いよく矢が放たれる。狙いの右ふくらはぎ辺りに目掛けて腕で庇いに入るが、腕は変な挙動で軌道がずれる。

「あ」 ずれた。
「いって!」

 掠っただけだからまあ大丈夫だろう、良い腕をしている。それに矢の速さも少し抑え気味だ、これなら何とか見える。

「うーん、身体ごと庇う感じの方が良いかな」



 ……。




 ……それはいいんだが、なぜ後ろから抱き付く形になったのだ。野郎に抱き付く趣味はないぞ。欲望、願望のままに意見を述べてみよう。
「女の子をご所望します!」
「ワタシじゃ駄目なの?(裏声)」

 思わず背中を蹴飛ばしてしまう。

「どふぇ!?」
 顔面から壁に激突して鈍い音が響く。そのまま壁にへばりつきながら地面へと落ちて行く。


「チェンジでお願いしまぁす!!!」



「じゃあ、僕でいいかな」

 ――どうしてそうなった。
 気色悪い声出されないだけ全然マシなのだが。

「それじゃ肩狙うから、ちょっと気を付けてね」

 放たれた矢は吸い込まれるように肩へと向かってゆく、刺さる直前にまた自分の身体じゃなくなる間隔。後ろ向きでも発動するようだ。抱き付いた腕は離さないようにだけしてその感覚に身を委ねた。

 結果は躱せた。動けない状態なら魔障壁も発動するだろう。これは何とか使えそうだ。


 それに今の実験で気付いたのだが、視力および動体視力、も良くなってる気がした。言われてみればここに来た時もファルテと筋肉おじさんの剣戟が見えていた気がする。と言っても音速で飛んでる物が見えるとか、1km先の女の子の服装や顔を認識出来る訳でもない。平均よりは良くなってるって感じだ。もしかしたら聴覚も良くなってたりするかな、けど元々結構良かったからあまり変わらないかもしれない。

「躱せたみたいだね、良かった」
「駄目な例も試せたから良かった。みんなありがとう」



 あとは基礎体力を出来るだけ付けるかな……。走り回るのがメインになりそうだし、時間が無いのが悔やまれる。暇のある時にスクワットでもしておこう。


 今日は日も暮れてきてこれにて終了。オラシオン家にてお世話になることになった。
 名前からしてお金持ちな感じが漂っているがどうなのだろう、そうでなくても一応リーダーなのだから良い所には住んでいるのかな。

 連れられてきた場所は街の中央部、住宅の中に大きめな家がある、リーダーと言う割には控えめな大きさだ。二階建ての白ベースの塗装でバルコニーのようなのが見える。シンプルな感じが良い、変に飾らず落ち着く。広さも二人で住むなら十分すぎる大きさだ。

「綺麗な家だね」
「昔から、リーダーはこの家に住む、というか代々リーダーの家系なんだよ」
「あ、親って一緒に住んでるの?」
「うん、そうだね。ちょっと変わってる夫婦さ、剣術とかはあまり得意じゃなくてリーダーは僕になったんだ」
「そうなんだ、今更なんだけど俺がそこに入っちゃっていいの?」
「大丈夫、変わってるってさっき兄ちゃんが言ってたでしょ? 本当に変わってるし優しいんだから」 割って入ってきたフィリアはふふんと鼻を鳴らす。上機嫌だ、良い家族で、大好きなんだろうな。


 ……優しい、変わってる……か。

 俺の家も一族から見たら変わっていたんだろう、優しかったから。そう考えると何となく親近感が湧いてくる。

「ただいま」
「ただいま戻りました」
「お、おじゃまします……」

 玄関もそこそこに広い、廊下も二人は通れる広さだ、それに何より綺麗だ、掃除が行き届いている感じがする。

「おかえりなさいませ」

 この服装は……! メイドさん……!?ロングスカートが優雅で、綺麗なお辞儀で出迎えてくれる。20代半ばくらいの金髪ショートヘアのスレンダーで綺麗な人だ、浅葱色の瞳と左目の下の泣き黒子が目を引く。

「彼女はお世話係の人だよ」
「初めまして、エル・プリムラと申します」

 どうも、と軽く挨拶をする。

 フィリアは着ていたローブを脱ぎ、メイドさんに渡す。
 ショートパンツに白地のシャツ、短剣の鞘に腰にある矢の筒が露わになる。こんな格好をしてたのか。割と軽装備だった。ショートパンツから覗く生足が眩しい。そういえば弓は何処へ行ったんだろう? 魔法で出たり消えたりしてたら便利なことこの上ない。
 装備を見ても後方支援役なのかな。魔法も弓も得意みたいだし、何より大将が最前線で戦う訳にもいかないか。




「親に話はまだしてないから」
「はい、ご一緒いたします」


 ――ん? 話つけてないのかよっ!


「父さん、母さん。ただいま帰りました」

「おかえりなさい」
「おかえり」

 父親も母親らしき人が出迎えてくれる。美男美女だ、この親にしてこの子達か……。良い様に血を引いたみたいで良かった良かった。にしても二人ともかなり若く見える。40歳いってるのかすら怪しい。

「突然だけど、彼はギンジと言って家に泊めることになったんだけど」

「「いいよ」」

 はやいわ

「自分の家だと思ってくれたまえ! はっはは、おっとそうだ、僕はアルス・オラシオン。父さんって呼んでくれて構わないからね」 髪は水色短髪で、深い青の目がパッチリしている。体格は普通だが、手足が長くてスラッとしている。モデルみたいな感じだ。普通の部屋着なのにおしゃれしてるかのように錯覚する。

「そうね、それじゃこの家のルールとかも教えないとだけどそれは二人に任せようかしらね。私はカノン・オラシオン、結構可愛い子だからママって呼んでくれたら嬉しいかな?」 髪は黒い、艶々してる。セミロングで目尻が下がっていてまつげが長い、薄い青の瞳でのほほんとしてる。スレンダーで色白だ。料理をしていたみたいで今はエプロン姿をしている。

 所々のパーツが良く似ている。全員容姿端麗な美家族だ。そんな言葉はないけど、今作った。

「えっと、流石に少し慣れるまでは名前でお願いします」 苦笑いを浮かべる。 「改めまして銀二です。アルスさん、カノンさん。お世話になります」

 本当に、優しそうな家族だ。幸せそうな顔をしている。

「さて、ご飯にしましょう……と思ったけど先にお風呂ね、入ってらっしゃい」

 そういえば、とボロボロになってたのを思い出す。改めてみると酷い有様だ。恐らく顔も砂や埃塗れだろう。



 お言葉に甘えて先にお風呂へ入ることにした。



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