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第3話 領主ウィーゲイツと作戦終了
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ドラゴンが飛び去って街には静けさが戻っていた。
俺はリーゼリットの肩に止まって現状を頭の中で確認していた。
だが、どれだけ確認してもあのとんでもないドラゴンと戦っていくのだという事実はどうやら揺らがなかった。
一体どうして、わざわざ転生してまでこんな恐怖体験をしなくてはならないのか。
よろしく、と言われたが正直よろしくしたくない気持ちが強かった。
そんな俺だったが、向こうから鎧姿の戦士たちが戻ってきた。
「今回もダメだったか」
「根本的に火力が足りてないんだよな」
戦士たちは口々に感想戦を行っていた。
なんでこいつらはあんな化け物と戦ってこんなのんきに会話しているのか。神経が図太いのか。
「火力はもうちょっと上げれるけど。やっぱり氷結系の魔法は効くからそっちの方向でなんとかならないかって思うけど」
リーゼリットも会話に参加していく。
なんでこんなに心が強いんだこいつらは。
そんな風に会話をすりリーゼリットたちだったが。
──パンっパンっパンっ
乾いた音が響いた。
手と手が叩き合わされる音、すなわち拍手だ。
「いやはや、今日も無駄な努力ご苦労様。倒せるはずのない相手に必死に挑む姿は涙ぐましいですね」
そこに立っていたのは兵士を引き連れた男だった。くるりと回ったまき髭に豪奢な服装。
絵に描いたような嫌な金持ちの服装だった。
「あら、ウィーゲイツ卿。今日もご機嫌麗しゅう」
「形だけの礼儀など結構。君たちが私を蔑んでいるのなど周知の事実ですからね。まぁ、私はそれ以上に君たちを蔑んでいますが」
「そんなことはありませんよ」
どうやらリーゼリットたちと中は悪いらしかった。リーゼリットは引き攣った笑顔を浮かべている。
確かにものすごく嫌な感じだった。
「倒せるはずのないドラゴンに挑んでどうしようというのです。今やヴァンダルグはあのドラゴンなしには成り立たないというのに」
「倒せます。そのために私たちは戦っているんです。それに倒せばまた街は復興しますよ」
「夢を見るのは結構ですがね。巻き込まれる周りの身にもなった方がよろしいですよ。いつか必ず誰かが命を落とすでしょう」
「お気遣いありがとうございます。ですが、私たちの意思は変わりません」
「ほほほ、まったく困ったものですな」
ウィーゲイツとかいう男はニンマリした顔で笑っている。
腹が立つことこの上ない表情だった。
「では、今日も楽しませて頂きましたよ。この後は市場で火薬を買うなりしてせいぜいお金を落としてください」
「はい、そうさせていただきます」
ウィーゲイツとかいう男は笑いながら家来を引き連れて去っていった。
「なんだあいつは」
「見ての通り嫌なやつよ。一応ヴァンダルグを含むこの地域の領主ってことになってるわね」
「こんな廃墟で何を統治するんだ」
意気揚々なウィーゲイツとかいうおじさんだったが、ここは廃城廃屋が並ぶ滅んだ街だ。
一体あのおじさんはなにが楽しいのか全然分からなかった。
「それはおいおい説明していくけど。それより」
「ああ、また魔法を見直さないとな」
「というか、そのカラスしゃべってないか」
「どうにも硬すぎるぜあいつは」
「各自またアイデアを練るとして、今日は解散としましょう」
「了解」
そう言うと戦士たちはワラワラとそれぞれだけど散っていった。
この後飲むだの、明日の予定だの、物資の調達だのみなそれぞれの会話をしながら帰っていった。
「あの人たちは仲間なのか?」
「そうね、あのドラゴンを倒すための同士ってところ。金のためとか名声のためとか、私みたいに敵討とか。みんないろんな理由を持ってるわ」
「なるほど」
リーゼリットとともにドラゴンと戦う戦士たち。同じ目的を持ちもの同士でチームを組んでいるということなのか。
というかとにかく、
「結局現状よくわかってない。お前たちはなにで、俺はなにをすればいいんだ」
「私たちはドラゴンを倒すことを目的に集まった魔物狩りのチーム。そしてここは魔物が湧く都市ヴァンダルグ。あなたには私の使い魔として戦闘をサポートしてもらう。そんなところね」
「じゃあ、やっぱり俺もあれと戦うのか」
「それはそうよ」
リーゼリットはニカっと笑った。
なんど考え直しても状況は変わりそうになかった。
「マジで言ってんのか。俺はカラスだぞ」
「カラスにだってできることはあるわよ。私の使い魔になるってことは、私の魔法の触媒のひとつになるってことなんだから。魔法の効力を高めたり、中継したり。あとは雑用をやってもらったり」
「なんだか分からん」
「とにかくやってもらうことはいっぱいあるから。覚悟しなさい」
とにかく押しつけられる仕事はたくさんあるようだった。
転生しても結局誰かの部下になって労働に勤しむということらしい。
カラスなので権利を訴えられないぶん余計にタチが悪いのかもしれなかった。
「まぁ良いわ。とにかく今日の仕事はおしまい。家に入るわよ」
「お、おう」
そうして、とりあえず1回目のドラゴンとの戦闘は終わったのだった。
俺はリーゼリットの肩に止まって現状を頭の中で確認していた。
だが、どれだけ確認してもあのとんでもないドラゴンと戦っていくのだという事実はどうやら揺らがなかった。
一体どうして、わざわざ転生してまでこんな恐怖体験をしなくてはならないのか。
よろしく、と言われたが正直よろしくしたくない気持ちが強かった。
そんな俺だったが、向こうから鎧姿の戦士たちが戻ってきた。
「今回もダメだったか」
「根本的に火力が足りてないんだよな」
戦士たちは口々に感想戦を行っていた。
なんでこいつらはあんな化け物と戦ってこんなのんきに会話しているのか。神経が図太いのか。
「火力はもうちょっと上げれるけど。やっぱり氷結系の魔法は効くからそっちの方向でなんとかならないかって思うけど」
リーゼリットも会話に参加していく。
なんでこんなに心が強いんだこいつらは。
そんな風に会話をすりリーゼリットたちだったが。
──パンっパンっパンっ
乾いた音が響いた。
手と手が叩き合わされる音、すなわち拍手だ。
「いやはや、今日も無駄な努力ご苦労様。倒せるはずのない相手に必死に挑む姿は涙ぐましいですね」
そこに立っていたのは兵士を引き連れた男だった。くるりと回ったまき髭に豪奢な服装。
絵に描いたような嫌な金持ちの服装だった。
「あら、ウィーゲイツ卿。今日もご機嫌麗しゅう」
「形だけの礼儀など結構。君たちが私を蔑んでいるのなど周知の事実ですからね。まぁ、私はそれ以上に君たちを蔑んでいますが」
「そんなことはありませんよ」
どうやらリーゼリットたちと中は悪いらしかった。リーゼリットは引き攣った笑顔を浮かべている。
確かにものすごく嫌な感じだった。
「倒せるはずのないドラゴンに挑んでどうしようというのです。今やヴァンダルグはあのドラゴンなしには成り立たないというのに」
「倒せます。そのために私たちは戦っているんです。それに倒せばまた街は復興しますよ」
「夢を見るのは結構ですがね。巻き込まれる周りの身にもなった方がよろしいですよ。いつか必ず誰かが命を落とすでしょう」
「お気遣いありがとうございます。ですが、私たちの意思は変わりません」
「ほほほ、まったく困ったものですな」
ウィーゲイツとかいう男はニンマリした顔で笑っている。
腹が立つことこの上ない表情だった。
「では、今日も楽しませて頂きましたよ。この後は市場で火薬を買うなりしてせいぜいお金を落としてください」
「はい、そうさせていただきます」
ウィーゲイツとかいう男は笑いながら家来を引き連れて去っていった。
「なんだあいつは」
「見ての通り嫌なやつよ。一応ヴァンダルグを含むこの地域の領主ってことになってるわね」
「こんな廃墟で何を統治するんだ」
意気揚々なウィーゲイツとかいうおじさんだったが、ここは廃城廃屋が並ぶ滅んだ街だ。
一体あのおじさんはなにが楽しいのか全然分からなかった。
「それはおいおい説明していくけど。それより」
「ああ、また魔法を見直さないとな」
「というか、そのカラスしゃべってないか」
「どうにも硬すぎるぜあいつは」
「各自またアイデアを練るとして、今日は解散としましょう」
「了解」
そう言うと戦士たちはワラワラとそれぞれだけど散っていった。
この後飲むだの、明日の予定だの、物資の調達だのみなそれぞれの会話をしながら帰っていった。
「あの人たちは仲間なのか?」
「そうね、あのドラゴンを倒すための同士ってところ。金のためとか名声のためとか、私みたいに敵討とか。みんないろんな理由を持ってるわ」
「なるほど」
リーゼリットとともにドラゴンと戦う戦士たち。同じ目的を持ちもの同士でチームを組んでいるということなのか。
というかとにかく、
「結局現状よくわかってない。お前たちはなにで、俺はなにをすればいいんだ」
「私たちはドラゴンを倒すことを目的に集まった魔物狩りのチーム。そしてここは魔物が湧く都市ヴァンダルグ。あなたには私の使い魔として戦闘をサポートしてもらう。そんなところね」
「じゃあ、やっぱり俺もあれと戦うのか」
「それはそうよ」
リーゼリットはニカっと笑った。
なんど考え直しても状況は変わりそうになかった。
「マジで言ってんのか。俺はカラスだぞ」
「カラスにだってできることはあるわよ。私の使い魔になるってことは、私の魔法の触媒のひとつになるってことなんだから。魔法の効力を高めたり、中継したり。あとは雑用をやってもらったり」
「なんだか分からん」
「とにかくやってもらうことはいっぱいあるから。覚悟しなさい」
とにかく押しつけられる仕事はたくさんあるようだった。
転生しても結局誰かの部下になって労働に勤しむということらしい。
カラスなので権利を訴えられないぶん余計にタチが悪いのかもしれなかった。
「まぁ良いわ。とにかく今日の仕事はおしまい。家に入るわよ」
「お、おう」
そうして、とりあえず1回目のドラゴンとの戦闘は終わったのだった。
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