転生したら怪獣だった話

かもめ

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プロローグ

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 俺はふと目を覚ました。

 睡眠からの覚醒。目覚めはばっちりだった。クソサラリーマン生活の繰り返しの中で一番と言っていいほどの目覚めだった。


(ああ、よく寝た。さて、今日は平日だったか)


 などと思いながら体を起こす。昨日は休日で今日は悪名高き月曜だ。

 苦痛がすごいが仕方がない。俺はサラリーマンで、サラリーマンは会社に行くしかないのだ。

 ゆっくりと体を起こす。ここでようやく意識がはっきりしてきた。

 しかし、徐々に違和感に気づいてきた。

 なにかがおかしい。おかしすぎる。

 俺はぱちくりと目をまたたかせる。

 一言で言えば俺はミニチュアで出来た街の中に居たのだ。

 人間サイズのビルの模型。そのビルに合わせたかのようなミニチュアの道路、信号、走る車。そして米粒みたいな人々。

 それが俺の足元にわらわらとたかっていた。


(なんじゃこりゃあ)


 俺は思ってそのまま口走った。しかし、


「アンギャアー!!!」


 俺の口から出たのは人語ではなかった。けたたましいまるで合成音のような獣の鳴き声。


(なんじゃあ!?)
「グォギャアア!!!!」


 思考回路が人語で走っているのに口から出るのは合成音。

 そこで気づく。視界に入っている俺の手、足、体。それらはあまりにも見慣れないものだった。

 うろこにびっしり覆われている。爪なんかバキバキに鋭いし、腕も足もすさまじい太さだった。

 となりのミニチュアのビルはガラス張りで、そこに俺の全身がはっきり映し出されていた。


(何事なんだこりゃああ!!!)
「グギャァアアアァアアス!!!」


 俺は大きな咆哮を上げた。

 俺は一言で言えば怪獣になっていた。

 特撮映画で見るような大きな怪獣。トカゲ型。系統としてはかの怪獣王を彷彿とさせる。王道の形をした怪獣だった。


(着ぐるみか?)


 寝ている間に何者かに着ぐるみを着せられ、特撮のセットの中に放り込まれたのか。

 いや、状況を見るにそうとしか言いようがなかった。

 自分は明らかに特撮の怪獣で、街は明らかに特撮で出てくる作り物のサイズなのだから。

 しかし、眼下の車はすさまじく精工で、人間たちはすさまじいクオリティで動き回っていた。

 あまりにリアル過ぎる。

 俺は理解が追い付かず硬直した。

 と、


(戦車がたくさん来た!」)


 大通りから、俺を囲む四方八方の大通りから戦車が隊列を成して押し寄せてきたのだ。


(ほんとに特撮映画みたいだ)


 感想を述べる俺。しかし、次の瞬間、戦車は一斉に砲撃を開始したのだ。

 すさまじい砲撃音とともに、


(いってえええええええええ!!!)
「グギャアァアアアア!」


 体中を激痛が襲った。いやおかしい、これはおかしい。

 俺は着ぐるみを着ているはずだ。あの戦車はセットで本当に何かを発射しているわけではないはずだ。

 だが、この状況はどう考えてもあの戦車たちの砲撃が俺にヒットし、俺の皮膚が激痛を訴えているという状況だった。

 つまり、この現状から導き出されるのは、俺は本当に怪獣になっており、あれは本物の戦車だということ。さらにその事実から、あのビルも逃げ惑う人々もミニチュアではなく本物で。みんなが小さいのではなく俺が馬鹿でかいということ。

 つまりこれはリアルだということだった。


(そ、そんな馬鹿な)


 俺は砲撃で立ち込める爆煙に包まれながら思う。

 しかし、ここでようやく思い出されてきた。

 俺がこうなる前の状況が、


(そうだ、俺は死んで、あの訳の分からない銀色の怪人にこうされたんだった)


 俺は記憶の糸を手繰り寄せる。
 
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