ミドくんの奇妙な異世界旅行記

作者不明

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オトナの権利の国

探しものは何ですか~♪ 見つけにくいものですか~♪

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「……ペトラ?」

 ミドは両手で紙を見ながら小さくつぶやいた。ペトラはミドの異変に気づいて声をかける。

「何ですか、どうかしましたか?」
「……何でもないよ!」

 ミドは咄嗟に紙を上から下に指先でなぞる。すると紙の上にもう一枚の紙が重なるように生えてくる。そして、ミドは持っていた紙をペトラに見せて言う。

「いや~、このチラシが顔に飛んできてビックリしちゃって~」
「はぁ……そう、ですか」

 ミドが見せた紙は新聞に挟まっている広告などのチラシのようなものだった。『大特価、全品半額!』などがでかでかと大きく書かれている。

「それよりペトラ、もっとこの国のことを知りたいな。次はどこに案内してくれるの?」
「あ……はい、分かりました。そうですね、次は――」

 ペトラは一瞬訝しげな表情をしたが、すぐに元に戻って案内を続ける。
 ミドはペトラに気づかれないように、先ほどの行方不明者の捜索願の紙を四つ折りにして懐にしまった。

 ――それからペトラとミド一行は、たくさんの場所を観光した。
 この国の歴史が子どもでも理解できる歴史博物館。
 国の人たちが休日にジョギングや散歩をしたりする憩いの公園。
 謎の民芸品などが陳列するお土産屋さん。

 ペトラは行く先々で大人たちから「君、本当に大人かい?」と疑われたが、その度に大人の権利証を提示した。するとそれを見た大人たちは態度を一変させた。

 こうして大きなトラブルもなく、無事に一日目が終了した。
 ミド、キール、フィオの三人とペトラはホテルの入口の前にいた。ミドがペトラに言う。

「本当に家まで送らなくていいの?」
「心配しないでください。私は大人ですから」

 ペトラがきっぱりと言う。するとキールが財布から、一〇〇〇ゼニーの紙幣を五枚ほど取り出してペトラに差し出しながら言う。

「約束の報酬だ。また明日も頼めるか?」

 ペトラは両手でそれを受け取って、深々とお辞儀をして言う。

「ありがとうございます、もちろんお受けします! それではまた明日、ホテルの部屋の前までお迎えに上がりますのでよろしくお願いします」

 ペトラはミドたちにそう言うと踵を返して歩いて行った。

 ミドたちはペトラの背中が小さくなっていくのを見送った。ペトラが一度振り返るとミドと目が合った。ミドが片手を上げて手を振ると、ペトラはお辞儀して再び歩いて行った。

 米粒のように小さくなったペトラの背中を見ながらミドがキールに言った。

「キール、ペトラのことどう思った?」
「どうって、案内人として十分問題なかったし、見た目よりもしっかりしてると思ったぞ」
「そっか……」

 ミドは一人で思考を巡らせるように、両目を細めて言った。すると懐から四つ折りにした紙を取り出す。

「これ、どう思う?」
「ん? なんだその紙。――っ!」

 ミドが昼間の行方不明者の紙をキールに見せて言う。するとキールも両目を一瞬見開いて驚いて訊く。

 捜索願の紙には、ペトラの写真と一緒にこう書かれていた。

 --------------------------------------------------------
 行方不明 連絡求む!
 愛する私の子どもを探しています! 

 名前 ペトラ・フィールド
 年齢 14歳
 身長 156.5㎝
 体重 50.1㎏
 失踪時の身体的特徴、服装
  白い長袖のシャツに黄色の上着、膝下までのピンクのスカート、茶色のブーツ。

 見つけてくれた方には、一〇万ゼニーお支払いします。
 心当たりの方は下記にご連絡ください。
 ✕✕✕✕-〇〇-△△△△
 --------------------------------------------------------

 それには行方不明者の詳細な情報や、連絡先などが記載されてあった。

「これ、どういうことだ?」
 キールが問いかけると、
「さぁね……」
 ミドが短く答えた。キールがさらに言う。

「ミドはこの行方不明者が、ペトラのことだと?」
「多分。でも、ちょっと違和感を感じるんだ」
「違和感ってなんだよ?」
「これには『私の子ども』って書かれてる。でもペトラは大人の権利を持ってるはずだ、ボクたちは何度もそれを見ている。『大人』と認められた人を『子ども』って表現するかな?」
「この捜索願を出したのはおそらく親だろ? 自分の娘だったら普通じゃねぇか?」
「そうかも、しれないけど……」

 ミドは納得がいかないような様子で言う。するとキールが言った。

「ハッキリ言えよ、オレはミドの考えを聞きたい」

 すると、ミドは目をつぶって深呼吸してからキールの目を見て言う。

「仮にこの捜索願に書かれてることが本当だとしたら、ペトラは『大人の権利』を持っていないのかもしれない」
「なるほど、確かにそれなら『子ども』って表現にも納得がいく。つまりミドは、ペトラが嘘をついてるって言いたいわけだな?」
「その可能性もあるってだけだよ。それに、一番気になるのは……」

 ミドは捜索願の最後の文章に目をやって言う。

「見つけた人には一〇万ゼニーだって、これじゃあ行方不明の捜索願というより指名手配だね……」

 ミドは苦笑いをしながら言った。するとキールは腕を組んで言う。

「で、どうする気だ? 連絡するのか?」

 キールは捜索願の連絡先を見ながら言う。ミドは黙って目をつぶって考えている。するとゆっくり目を開けてミドが言った。

「いや、連絡はしない」
「その理由は?」
「ペトラがなぜ、自分を『大人』だと偽ったのかが気になる。この国は権利に関してはすごく厳しいイメージだ。権利を偽るのは相当な罪に問われる可能性だってあるはずなのに……。ペトラ側に問題があるのか、それとも――」
「捜索者側に問題があって、被害者のペトラが逃げている状態なのか……だな?」
「うん。いずれにしても、迂闊に行動しないほうがいい気がする」
「了解。ミドがそう言うなら、オレはそれに賛成するだけだ」

 すると外で話し込んでいる二人の耳にフィオの声が聞こえてくる。

「ミドくーん! キール! 何してるっスかぁ? 早く部屋に戻るっスよ!」

 それを聴いたミドとキールはフィオに目を向ける。

「とにかく、ここで話してても解決しねぇな。続きは部屋に戻ってからだ」
「そうだね」

 ミドとキールはホテルの中に歩いて行った――。

                   *

 ペトラは旅人たちと別れてから、一人で街中を彷徨っていた。

「とりあえず、これで安い宿に一泊しよう……」

 ペトラはミドたちからもらった報酬を手に、宿を探して歩いた。ふと壁に目をやると、剥がれそうになっているポスターを見つけた。

「――っ!」

 いや、ポスターではない。それは、
「行方、不明……」
 捜索願の紙だった。写真が大きく載せられ、年齢、身長、体重などの個人情報が記載されている。

「お父さんが、私を探している……!」

 これだけ大きく写真があったら、街の中を歩くことができない。すぐに私だと分かって通報されてしまう。
 そうなれば、案内人の仕事をやり遂げることができなくなる。

 ペトラは宿を探すことを辞めて、目に入った捜索願の紙をすべて剥がして回った。

 見つけられる範囲で全ての捜索願を剥がし終わると、ペトラはその紙をくしゃくしゃに丸めてバケツの中に放り込み、マッチに火をつけて燃やした。

 ペトラその炎を見ながら安堵していた。その時、

「見つけたぞおおおおおおおお! 皆さんあの娘です! 自分を『大人の案内人』だと偽って旅人さんから報酬をもらおうとしていた『子ども』です!」

 小太りの男の声が響き渡った――。
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