異世界を統べるのは人ではなく竜だ

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第7章 新たな暮らし篇

第84話 勇者の力

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 本戦開始の時間となった。一足先にフィールドに向かう。徐々にフィールド内に十人の猛者が集い始める。

 「よろしく!」

 ダルクが爽やかに話しかけてくる。

 「あぁよろしくな」

 「君の試合見てたよ!凄かったね!」

 テーゼも近寄ってくる。

 「まぁリュートは凄いからな」

 スプラが得意げな顔で話に参加する。

 「君は、リュート君と言うのか。僕はダルクだ」

 「あっ、私はテーゼだよ!よろしくね」

 勇者が現れると、フィールドの空気が変わる。

 「へぇ。今年は若くて活きの良い奴が多いじゃないか!あたしを楽しませてくれそうだ」

 「さ、さすがは勇者すごい迫力だ…」

 「か、勝てるのかな…」

 「き、緊張してきた…」

 3人は既に勇者の空気に飲まれたようだ。ただ一人を除いて。

 「楽しみだ」

 「あたしを前にしてビビらない奴がいるとはねぇ驚きだよ」

 試合開始のゴングがなる。

 「うおー!隙あり!」

 3人の戦士が勇者に後ろから飛びかかる。Aブロック、Bブロック、Fブロックの勝者だ。

 「甘いよ!」

 ガキン!斧であっさり防がれる。

 「じゃあこれを喰らいなぁ!」

 斧を抜き、振りかざす。

 凄まじい爆風と共に3人は吹っ飛んだ。

 「弱いねぇ…」

 会場は大盛り上がりだ。

 「すげぇぜ、さすが勇者だ」

 「今年も決まりだな…」

 さらに2人が飛びかかる。DブロックとIブロックの勝者だ。

 「ふん!」

 勇者は攻撃を斧で受け止め、弾く。そして後ろに回り込み、殴る。2人はコの字型になり飛んで行った。

 「後は、あんたらだけだ。そら!」

 斧が振りかざされる。難なく避ける。が、スプラが出遅れた。

 「くっ!うあぁぁぁぁ!」

 振りかぶって隙だらけの勇者にスプラが叫びながら剣を投げつける。

 剣は真っ直ぐ勇者に飛んでいく。

 「やるね!だが!」

 バキン!飛んできた剣を拳で砕く。

 「えっ…嘘…」

 「ほら!」

 一瞬でスプラの懐に飛び込み、拳を振り上げる。スプラは咄嗟に盾で塞ぐ。

 「無駄だよ!」

 バキィ!盾が砕け、衝撃でスプラも吹っ飛ぶ。

 「これが勇者…さすがですね…」

 スプラは気を失った。

 「次は僕だ!」

 ダルクが素早い動きで翻弄する。

 「まだ、遅いね!」

 勇者に足を掴まれる。

 「そらよ!」

 バキィ!ダルクの鎧が砕け、吹っ飛ぶ。ダルクは気を失う。

 「はぁぁぁぁ!」

 テーゼが、全魔力を脚に込め、渾身の一撃を繰り出す。

 「まだ足りないね!」

 斧であっさり止められる。

 「蹴りはこうするのさ!」

 ドゴォ!鈍い音と共にテーゼも吹き飛ぶ。

 あっという間に俺一人になってしまった。

 「最後はあんたかい?他のやつよりは歯ごたえがあるんだろうね?」

 斧を振り下ろす。それを剣で抑える。

 ガギィン!剣と斧がぶつかり合う。

 「へぇ!やるじゃないか坊や!」

 「本気で来なよ」

 会場がざわめき出す。

 「なんだあいつは!」

 「勇者の攻撃を止めた!?」

 「何者なんだあのガキは?」

 アイティオが一歩下がる。

 「その生意気な口がいつまで続くかな?」

 高速で斧を薙ぎ払う。剣で抑える。そんな攻防がしばらく続く。

 「はっはぁ!やるねぇ!あたしをこんなに高ぶらせるやつは久しぶりだよ!」

 「そいつはどうも」

 「じゃあ少し本気を出そうかね!」

 視界からアイティオが消える。

 「何?」

 「こっちだよ!」

 しまった後ろか!咄嗟に鎧を展開させる。

 「おらぁ!」

 ドゴォ!鈍い音が響き、壁に吹っ飛ばされる。壁にめり込み、吹き飛ばされた衝撃で眼鏡が外れる。

 俺はその瞬間に見た。勇者バケモノのステータスを。

 名前 アイティオ・アタラクシア
 種族 人
 職業 勇者
 Lv  988
 称号 破壊の勇者
 
 神号 五つの災厄[破厄] 感情覚醒者[楽]

 技能 勇者 破壊 斧術(極) 槌術(極)
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