異世界を統べるのは人ではなく竜だ

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第11章 魔族大戦篇

第121話 魔王進軍

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 魔族界は今、危機的状況にある。魔力の枯渇だ。前回の侵略時、人間界から多くの人間を攫ってきたが、それも限りがある。
 人間は自らの体内で魔力を生成できる。その秘密が、人間界の大地だ。人間界の大地は、豊富な魔力が混ざり、空気や食べ物からある程度の魔力は確保出来る。人間が寝れば魔力が回復するのも、空気中の魔力を見ず知らずの内に吸収しているからだ。魔族界にそれは無い。大地は枯れ、草木は萎びれ、空は黒ずんでいる。
 魔族は人間よりも優れた生物だ。だが、その代わり、大量の魔力を消費する。魔族が手っ取り早く魔力を補給するには、人間の魔力を吸収した方がいい。だから、人間界を支配しなくてはならない。あまり魔力を必要としない下級生物のくせに、数だけは多く、潤沢な魔力を取り込み続ける人間は許せない。だから、この私が人間界を支配しなくてはならない!

 「魔王様!出陣の準備を!」

 「わかった。今行く」 

 前回の出撃で人間界には大きな打撃を与えた。人間界の大陸の2/3は我が手中に収めたのだ。しかし、そこに邪魔が入った。勇者だ。三人の勇者によって形勢は逆転した。それほどまでに勇者の力は偉大だった。だが、今回は違う。何故ならこちらにも作戦があるからだ。

 「勇者よ、今回も同じだとは思わないことだ」

 「魔王様!ハブラーガがこちらに付きました」

 「よくやった。これでかなりの戦力が期待できる」

 魔界は今、四つの勢力に別れている。私、魔王デイヴィス率いる侵略派。先程私たちに加わった、中立派のハブラーガ。人間たちと共存しようとする愚かな穏健派のプリム。そして、目的や行動理念が不明の陰険派のガラミス。この4つの勢力に別れている。
 中立派が、こっちに着いた今、私たちを止められる派閥は存在しない。今が好機だ。

 魔王城の城門前に集った戦力は50万を超える。前回の侵略時より多い。この数に魔界六魔、私、ハブラーガたちが加わるのだ、負ける道理はない。

 「みんな聞け!」

 一斉に魔王に視線が集まる。

 「今こそ、全魔力を手中に収める時だ!魔族がこの世界を支配する!全軍出撃だ!」

 「「「「「「うおぉぉぉぉ!」」」」」」

 魔族たちの叫びが響き渡る。

 「頼むぞ、我が右腕。バルザよ」

 「はっ!魔王軍に栄光あれ!人間に地獄あれ、開け魔の扉よ!」

 詠唱と共に、城の上部を覆うようにゲートが出現する。そう、今回はこの城ごと人間界へ向かうのだ。今回の戦いに撤退はない、人間界を掌握するまでは魔族界には戻らない。

 こうして、魔族界から大軍勢が消えた。

 __________________

 「プリム様!デイヴィスが侵略を開始しました!」

 「なんてことを!人間を悪と決めつける愚かな考えがこの魔族界に染み付いてしまったが故に、このような事が起きてしまいました…どうかあの魔王を止めてください勇者様!」

 人間にだっていい人はいる。そうですよね…勇者様…。

 魔族による人間界征服が始まったのであった。
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