異世界を統べるのは人ではなく竜だ

外伝 新米転移者の異世界生活 2

その8 異世界の朝は爽やかな件

　鳥の鳴き声と、爽やかな朝日で目が覚める。隣にはエストの可愛い寝顔がある。

　「う、うーん…」

　エストはまだ寝ている。昨日のこともあり、起こすと悪いので先に起きることにした。一人暮らしが長かったので家事はそれなりに出来る。エストのために朝食を用意しよう。
　この世界には電気という概念がない。なぜなら魔法で全てを補えるからだ。この冷蔵庫のようなものやガスのようなものも魔法で動いているみたいだ。

　冷蔵庫にあったもので適当に料理を作ってみる。調理器具はほとんど日本と変わらないので楽に作ることが出来る。

　テーブルに二人分の食事を並べていると、エストが起きて来た。

　「あっ！すいませんカナトさん！私の家なのに…」

　「いやいや気にしないでくれ。それより冷める前に食べて？」

　エストを椅子に座らせる。

　「はい。ありがとうございます」

　エストが俺の料理を食べ始める。

　「美味しいです。カナトさん」

　「そうか。ありがとう」

　エストは喜んでくれたみたいだ。俺も食べることにした。

　「いただきます」

　「なんですか？その挨拶？」

　あぁ、なるほど。日本こっちの文化によるものはあまり浸透していないのか。

　「まぁ俺の地元の食べる前の挨拶だよ」

　「そう言えばカナトさんはどちらの国出身なのですか？」

　そういえば言ってなかった。いきなり日本と言うのもどうかと思うし、適当に誤魔化すか。いや、エストには正直に話そう。

　「エスト。心して聞いてくれ」

　「は、はい」

　「俺はこの世界の住人じゃない」

　「えっ？」

　俺は正直に今までの経緯を話した。

　「と、言う訳だ」

　「そうなんですね…あまり実感は湧きませんが、話してくれてありがとうございます」

　エストはあまり異世界がどうとか気にしない性格のようだ。

　「美味しかったですありがとうございました」

　「じゃあ片付けるよ」

　「いやいや！さすがに片付けは私がやりますよ！」

　片付けしようとしたらエストに遮られた。片付け位は流石にしないと不味いと思ったらしい。

　椅子に座り、片付けが終わるまでエストを待つ。

　今日は何をしようか、レベルはまだまだ上げれそうなので上げた方がいいのかもしれない。

　そう言えば、血熊を倒した後にもレベルは上がった。

　名前　カナト･ミツルギ
　種族　人
　職業　冒険者
　Lv　　142
　
　技能　 強運 鑑定 会心

　レベルが142まで上がった。まだまだ上がる余地はある。

　「お待たせしましたカナトさん」

　「エスト？今日はどうしようか？」

　「そうですね…ダール王国に行くのはどうでしょう？」

　「ここは右の方にあるムガ王国で、ダール王国は真ん中の方にある国だったよね？」

　「はい。そうです」

　なるほど、面白くなりそうだ。

　俺とエストはダール王国に向かうことにした。