異世界を統べるのは人ではなく竜だ

第14章 侵略する帝国篇

第160話 別行動

　ナバル帝国の兵士は声も発さず、まるでロボットのような攻撃を繰り返していた。その秘密がこれだ。ここにいる兵士たちは皆同じ顔、同じ体型だったのだ。魔法で造られたような感じがない。よって、これは人為的に何者かによって大量生産されたクローン人間という所だろうか。
　しかし、この世界にクローン人間を作り出す技術があるのは明らかにおかしい。つまりこれは、敵にも異世界人がいるということだろう。

　「くっ！キリがないな」

　切っても切っても敵は減らない。

　「仕方ない。ここは分かれて攻め込むべきだ」

　ミラが提案をする。

　「私はここに残り、こいつらの相手をする」

　「先生！私も残り、戦います。残りの皆さんは正面を空けますので突撃して下さい」

　ミラ、ルージュはここに残り敵兵を蹴散らすようだ。

　「みんな！それでいいか？」

　「わかった」

　「わかりましたわ」

　「了解」

　俺、クリア、サレナ、ローザの四人はこの場を二人に任せて先に城内に侵入することになった。

　「二人とも！無理はしないでくれ」

　「任せてくれ」

　「リュートさんの期待に答えてみせます！」

　俺たち四人は城門を目指して、敵を蹴散らしながら進む。
　
　「リュートさん達の道を作る！」

　ルージュ杖を構える。

　「擬似氷魔法･五式！氷結洞フローズン･ケイブ！」

　バキバキバキバキ！俺たち四人を守るように氷のトンネルが出来る。これならば、攻撃を受けること無く先に進める。

　「行ってください！皆さん」

　「行くぞ！三人とも！」

　リュート、クリア、サレナ、ローザは城内に入った。

　「さて、教え子には負けていられない」

　ミラは左手を前に突き出す。

　「魔法武器マギウェポン･起動ウェイクアップ」

　左手に付いていた白い篭手が、クロスボウに変化する。

　「対多数戦なら、こっちの方が強い」

　ミラはクロスボウを構え、放つ。

　「拡散ディフュージョン！」

　矢は散らばり、多くの兵士たちに刺さる。

　「その矢は避雷針になるんだ」

　ミラが一本の矢に雷を付与する。

　「雷狩りサンダーハント！」

　雷矢が当たった一人の兵士から広がるように感電した。

　「少しでもリュートさん達の所へ行かせないようにしないと！」

　「光闇魔法･三式！闇光線ダーク･ライト！」

　ルージュの前方に出現した魔法陣から、光と闇が入り交じった極太のビームが敵を蹴散らした。

　「流石はルージュだ。凄い威力だな」

　「もう先生には負けません！」

　敵を蹴散らし、舞い上がった砂煙の中から1人の人影が現れる。

　「さて、こいつは困ったな…」

　その男は白衣にメガネをかけた格好をしていた。