異世界を統べるのは人ではなく竜だ

1ta

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第14章 侵略する帝国篇

第169話 帝国の過去

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 「どうやらかなり不味い状況らしいな」

 眼鏡をかけた白衣の男がリュートの背後から歩いてきた。

 「馬鹿な!何故お前が生きている?マガト・ソーマ!」

 「私の能力を見くびりすぎだ」

 
 遡ること数年前、一人の男がナバル帝国に転移した。その男が相馬禍斗だ。彼は日本の国家機関で様々な研究をしている研究者だった。ナバル帝国は彼が異世界人だと分かると、彼に手厚い待遇をした。全ては異世界の知識でこの世界を征するためである。

 手厚い待遇を受けたこともありソーマは、ヴォイドが所長を務める研究所で研究を手伝うことになった。日本でもトップクラスに知能が高く、好奇心の塊だったソーマは異世界の研究にもかなり乗り気だった。
 そんな中、ヴォイドは彼の知識に嫉妬した。ソーマは自分の知らないことを沢山知っている。ヴォイドはそう思ったのだ。彼の知識と自分の知識が合わされば、この世界の誰よりも万能なものになることが出来る。

 そうして数ヶ月がたち、ナバル帝国は目覚しい発展を遂げ始めた。そのころ、ヴォイドはソーマの異世界の知識を限界まで引き出そうと試みた。しかし、ソーマは必要以上のことを話そうとはしなかった。自分の知識がこの世界にどれだけの影響をもたらすかわかっていたからだ。

 そしてある日突然、ソーマに能力が身についた。自分が知っているものや考えたものがすぐさま作り出せる能力。すなわち「生産プロダクション」。この能力は世界の運命を左右するのに十分な力があった。しかし、ソーマはあまり能力を使いたがらなかった。自分の能力の危険さをすぐさま理解したからだ。

 更に数ヶ月が過ぎたある日、遂に痺れを切らしたヴォイドが動いた。ヴォイドが所有していた魔法、「憑依エンヴィー」。特定の条件を満たした対象者の意識を取り込み、自分のものにするというものだ。この魔法は発動条件はかなり厳しいものだった。しかし、ヴォイドは魔法を強行した。ヴォイドは自身の体を捨て、ソーマに乗り移った。憑依の条件を満たしていなかったソーマに憑依したヴォイドは反動として自意識が消失した。ヴォイドは最近まで自分はソーマだと思い込んで生活していた。

 異世界の知識を手に入れたヴォイドは自意識がないながらも、その欲は止まることがなかった。ヴォイドはソーマが手を出さなかった兵器を大量に作り出した。こうして、ナバル帝国は兵器を量産することとなった。

 そしてつい最近、ルージュの活躍を耳にするようになり、ヴォイドの自意識が覚醒した。そんなソーマとヴォイドが入れ替わっていることを知っているのは皇帝ナバルだけであった。


 「よくも、私の知識を悪用してくれましたね?悪しき知識には消えてもらいます!」

 復活したソーマが魔法を発動させた。
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