異世界を統べるのは人ではなく竜だ

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第18章 竜神の日常篇

第220話 海の神と成神

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 『海神の試練を達成しました』

 海神の遣いが消滅すると同時に、脳内アナウンスが響く。

 「どうやら、試練とやらは終わったらしいな」

 「さっすがリュート」

 「楽勝だったみたいね」

 「あの海神の遣いをこうもあっさりと倒してしまうとはな…」

 海神の遣いを倒したからか、空間が歪み始める。何も無かった空間の底に巨大な穴が空いている。どうやらこの先に進めるようになったようだ。

 「よし、みんな!この先に進もう」

 俺たちは下降を開始する。海神の遣いを倒したからと言って、この先に敵が居ない保証はない。慎重に進む。

 何も無い空間を越えて、遺跡の内部のような場所にたどり着く。

 「今度は遺跡か」

 「リュート!あそこに何かあるよ」

 クリアが指し示した先は、光が溢れだしていた。光が溢れ出している場所に近づく。

 「!?」

 一瞬体がグラッとして、気がつくと見知らぬ空間に居た。

 「何だこの場所は…明るくて眩しいな」

 俺の体は眩い空間に放り出されていた。周囲には誰もいない。体は動くが、どちらが上か下かもわからない。

 「貴殿があの試練を越えしものか」

 「誰だ?」

 光の向こう側から何者かに話しかけられる。

 「私か?私は海の神だ」

 海の神だと!とんでもない大物が現れた。しかし、俺はたとえ相手が神でも態度は変えない。

 「で、その神が俺に何の用だ?」

 「神を前にしてもに怖気ず、態度も変えぬか。流石は私が用意した試練を越えしものだ」

 海神の姿はこちらからは視認できず、 声だけが聞こえてくる。声だけでこいつが只者では無いことが伝わって来た。

 「貴殿は私の用意した試練を越えた。貴殿には成神せいじんする資格があるという訳だ」

 「成神だと?」

 「そうだ。我々神も元は人間だ。かつて、何かの偉業を為したり、とてつもない力を手に入れたものが神となった。その神達はそれぞれ試練を配置した。その目的は同志を増やすためだ。そのために用意した人間を神にする特殊な進化を成神というのだ」

 「同志を増やすだと?なんのために」

 「それはもちろん。この世界を管理するためだ。世界が崩壊しないように近郊を保つのだ。神にはそれぞれ担当する分野がある。私は海の神、海を管理する者だ。海を管理する者がいるということは、陸や山、島や大陸など、様々な神がいるという訳だ。しかし、世界という概念を全て統率し、世界を管理するにはまだまだ神が足りない。だから、こうやって神は新たな神を作り出すのさ」

 「それで、俺がその管理する者として選ばれたと?」

 「そうだ。神になるには圧倒的な力、カリスマなど様々な条件がある。貴殿はその条件を満たしたという訳だ。貴殿は種族的には神だが、まだ正式な神になった訳では無い。成神してやっと正式な神になるのだ」

 正式な神になる…ね。

 「俺のメリットは?」

 「神は与えられた仕事をこなしていれば、寿命がなくなり死ぬことは無くなる。そして、ある程度なら人間やモンスターを好きに扱うことができ、天界で暮らすことも出来る」

 要するに神にもトップがいて、そいつの命令で働く従業員が神という訳か。そして、永遠の命にシミュレーションゲームの様に世界が扱えると言う訳か。

 「どうだ?私と共に天界に来ないか?天界は神が暮らす楽園。人間では体験出来ない、この世のどんな場所よりも素晴らしい場所だ」

 海の神に言われる前に、俺の答えは既に決まっていた。

 「断る」

 海の神へ俺はそう伝えるのだった。
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