異世界を統べるのは人ではなく竜だ

1ta

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第11章 魔王と最北の国篇

第143話 傲慢、崩壊

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 アロガンスはサレナの攻撃で真っ二つになった。

 「ば、馬鹿な…」

 真っ二つに切れた山は次第に崩壊し始める。

 「ふぅ…何とかなりましたわ」

 光の剣が消え、サレナの姿が元に戻って行く。サレナは近くに落ちていた自分の防寒具を再び着込む。

 「大丈夫かサレナ?」

 「はい。私は何ともありませんわ。それよりリュート様が!」

 リュートは寒さを直に受け、かなりのダメージを負っていた。

 「まだ…だ!まだ私は!」

 白傲竜アロガンスは真っ二つにされたにも関わらずまだ息絶えて居なかった。それどころか、再びくっつき始めた。

 「無駄ですわ。私が貴方を切り裂いた時に、その力を失った筈ですわ」

 「ぐぅ!氷塊弾フリーズバレット!」

 しかし、リュート達の元に氷が飛んでくることは無かった。

 「ま、まさか…本当に私の力が?」

 「そして、その力の行先は…」

 サレナの右手に氷の塊が出現する。

 「このように、私に移りましたわ」

 「な、なんという事だ…私の力が奪われたのか…」

 アロガンスは驚きと同様にどこか哀愁が漂っていた。

 「ふっ。本当に人間風情が私を超えるとはな…。遂に私を超える者が現れたのか…」

 バキバキッ!ブレイズとコットンを覆っていた氷も砕け、二人が動けるようになった。

 「全く…。やってくれたなアロガンス」

 「自分の能力を過信するからだ」

 「貴様!ご主人様をよくも!」

 コットンは開放された途端にアロガンスに飛びかかろうとする。

 「大丈夫だ、死んではいない。暖かいところで休ませたら次第に回復する」

 「それでも、我の気が収まらん!」

 「コットン様!そこは堪えてくださいませ。この白傲竜からは、貴重な情報が貰えるかもしれませんわ」

 「くっ…サレナが言うなら…」

 コットンは渋々攻撃するのをやめた。

 「死ぬ間際だ。せっかくだから君たちに情報を与えよう。君たちは既に数体の七色の罪竜を討伐し、それを正しい行いだと思っているのかもしれないが、それは間違いだ」

 「何?どういう事だ」

 「何故我々がこの地に存在し、何故罪を背負っているのかを君たちは理解していない。七色の罪竜の中で、そこのブレイズやデザイアなど人間の味方をした者は、正しい選択をした者だ。私やバイト、ヴォラプなど人間に害した者は間違った選択をしている。本来我々はある目的をなす為にこの地に作り出された。我々七色の罪竜の本来の目的はだ」

 「外敵を…」

 「排除?」

 「ここまで到達した君たちには隠す必要は無いだろう。つまり、我々七色の罪竜が束になって戦わなければいけないような外敵が後に現れる」

 「何だと!そいつは一体?」

 「残念だがもう時間だ。私はもう消える。残りはブレイズかデザイアからでも聞くんだな」

 バラ…バラ…。アロガンスの身体が崩壊し始めた。

 「最後に一つ。貴方はどうしてこの山を?」

 サレナが問いかける。

 「答えは一つさ。待っていたんだ。罪を消してくれる者を」

 アロガンスはそう言い残し、バラバラに砕け、跡形も無くなったのだった。
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