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第1話 まさか見知らぬ男の人と
1-(5)トイレに魔法陣?
会ったばかりの見知らぬ男の人と、僕はしてしまった……。
エディの本当の名前も年齢も職業も知らないのに、流されるままに身を預けてしまった。
魔導士コスプレの変わった趣味を持っているとはいえ、こんなにイケメンなんだから、恋人や奥さんがいてもおかしくない。彼にとっては、これは多分気まぐれというか、単なる遊びなんだろう。
でも、僕に後悔は無かった。
だって、僕にとっては一生に一度かも知れない貴重な体験だったから。
殴られたり蹴られたり引きずられたりするのには慣れているんだけど、誰かに気持ち良くしてもらったのなんて生まれて初めてのことだったから。
ああ、体の奥がいつまでも痺れている気がする……。
だるさと余韻にうっとりとしたままで、僕はいつの間にか眠ってしまっていた。
大きな掛け声や騒がしい大勢の足音で、僕ははっと目を覚ました。
目の前にエディの寝顔があって、さらにその腕が僕の腰を抱いていて驚く。
そっとその腕を外して、暖かい毛布から這い出すようにして起き上がった。
僕は裸の上に、透けるような薄い水色のローブのようなものを羽織っていた。ボタンもファスナーも無いから前は閉められなくて、袖や裾には花模様のレースがたっぷりついている。
な、なにこれ。こんなエロい服、恥ずかしすぎる。
あの貫頭衣や変な形のパンツはどこへ行ったのか、キョロキョロ見回しても見つけられない。
部屋の中は昨日と変わらなかった。薄暗くてランタンが光っていて、時間が分かるようなものはない。
テーブルの上を見ると、僕とエディが飲んだ紅茶のカップは片付けられていて、陶器製の水差しと伏せられた陶器のコップが二つ置いてあった。
改めてベッドを見ると、二人の体液でべっとり汚れたはずのシーツが、新しいものに替えられている。
あの行為の後に誰かがここに入って来て、食器を片付けシーツの交換をしたのかと思うと、顔が熱くなってくる。
「リュカ……? まだ寝ていていいですよ」
エディを起こしてしまったみたいで、静かな声が言った。
「でも、なんか外が……」
「ええ、そうですね。兵士が見張りの交代をする頃ですから、奴隷は起きる時間です。でも今はまだ下働き奴隷が朝の準備をしているだけですから、あなたがそんなことを気にしなくてもいいのですよ」
今、奴隷って言った……?
なんだか、外にはすごくたくさんの人がいる気配がする。
これ……どれだけの規模で遊んでいるんだ? 大規模イベントをする場所なんてどこにあったかな。僕が落ちた川の近くには住宅街しかないはずなのに。
だけど、今はそんな数々の疑問より、切羽詰まった問題がある。
「あの、エディ……僕、トイレに行きたい」
「ああ、どうぞ。私のテントのを使いなさい」
と、エディはキラキラした鉱物の並んでいる棚の横の方を指差した。
ベッドを降りて近付いてみると、ぴんと張られたテントの布の上に同色の布が垂れていて、そこをめくると小さな四角い空間があった。
恐る恐る入ってみると、円筒形の頑丈そうで重そうな壺と、それより小さめで水の入った壺と、乾燥した何かの植物か海藻みたいなものがたくさん入った籠がある。
な、なにこれ?
円筒形の壺には便座のような縁があるけど、中は空っぽで、底にはきれいな模様が彫ってあって宝石みたいな石がはまっている。水の入った方の壺を覗くと、その底にも違う模様が彫ってあって小さな宝石がはめこんである。
僕はベッドに引き返した。
「あ、エディ……。その、えっと、使い方を教えて……」
「使い方?」
エディは不思議そうな顔をして体を起こした。僕が着ているのと同じような形のローブを羽織っているけど、濃い紺色で全然透けていないし、紐を腰のところできちっと結んでいるので、前がはだけたりもしていない。
ちょっと何で僕だけスケスケなの? と思ったけど、やっぱり口には出せない。
「あ、あのトイレの、使い方……」
「え……? 初めてごっこ、まだ続いているのですか……?」
「あの、ごっこじゃなくて、ほんとに分からなくて……」
テントだから水洗じゃないのは覚悟していたけど、壺ってどういうこと?
エディは少し面白そうな顔をして僕の手を引き、トイレに入った。
「小便はこの大きな方の壺の中に直接してください。大便は壺に座ってした後、この草を水でぬらしてお尻の汚れを拭くんです。汚れた草もこの壺に捨ててくださいね」
僕は円筒形の壺を覗き込んだ。
「なんか、きれいな模様が彫ってあるけど、汚していいんですか」
「ええ、それは魔法陣ですから、出したものは処理場へ転移されてスライムが分解してくれます」
「ま、魔法? 転移? それにスライム?」
どこまで本気で言っているんだろう?
エディはくすくすと笑った。
「いいからしてみなさい。私たちの仲で、今更恥ずかしくもないでしょう?」
いやいや、めっちゃ恥ずかしいですけど?!
「う…………はい………」
もう言い返す余裕もないほど切羽詰まって来たので、僕は壺の底の模様に向かっておしっこをした。
壺の底の宝石みたいな石がぽうっと光り出して、みるみる液体が消えていく。
「う……うそ……」
排泄を見られている恥ずかしさより、驚きの方が大きくて、僕は茫然とそれを見ていた。
「なんで? マジで? 本当に魔法があるの? 特殊効果? っていうか、そうかあれだっ! CGってやつ?!」
「リュカ……?」
はじめは面白そうな顔をしていたエディの表情が、僕があまりに騒ぐので怪訝そうなものに変わっている。
「どうしたんですか? 昨夜からちょっとおかしいですね。いえ、昨夜……ではなく、川で死にかけてから……?」
言われ、僕は身をひるがえして走り出した。
もう、何が何だか訳が分からなすぎるよ。
いったい何が起こっているのか、この目でちゃんと確かめなくちゃ。
「リュカ! 待ちなさい!」
エディの声を背後に聞きながら、僕はテントの出入り口を片手でばさりと大きく払って、外へ飛び出していた。
・
エディの本当の名前も年齢も職業も知らないのに、流されるままに身を預けてしまった。
魔導士コスプレの変わった趣味を持っているとはいえ、こんなにイケメンなんだから、恋人や奥さんがいてもおかしくない。彼にとっては、これは多分気まぐれというか、単なる遊びなんだろう。
でも、僕に後悔は無かった。
だって、僕にとっては一生に一度かも知れない貴重な体験だったから。
殴られたり蹴られたり引きずられたりするのには慣れているんだけど、誰かに気持ち良くしてもらったのなんて生まれて初めてのことだったから。
ああ、体の奥がいつまでも痺れている気がする……。
だるさと余韻にうっとりとしたままで、僕はいつの間にか眠ってしまっていた。
大きな掛け声や騒がしい大勢の足音で、僕ははっと目を覚ました。
目の前にエディの寝顔があって、さらにその腕が僕の腰を抱いていて驚く。
そっとその腕を外して、暖かい毛布から這い出すようにして起き上がった。
僕は裸の上に、透けるような薄い水色のローブのようなものを羽織っていた。ボタンもファスナーも無いから前は閉められなくて、袖や裾には花模様のレースがたっぷりついている。
な、なにこれ。こんなエロい服、恥ずかしすぎる。
あの貫頭衣や変な形のパンツはどこへ行ったのか、キョロキョロ見回しても見つけられない。
部屋の中は昨日と変わらなかった。薄暗くてランタンが光っていて、時間が分かるようなものはない。
テーブルの上を見ると、僕とエディが飲んだ紅茶のカップは片付けられていて、陶器製の水差しと伏せられた陶器のコップが二つ置いてあった。
改めてベッドを見ると、二人の体液でべっとり汚れたはずのシーツが、新しいものに替えられている。
あの行為の後に誰かがここに入って来て、食器を片付けシーツの交換をしたのかと思うと、顔が熱くなってくる。
「リュカ……? まだ寝ていていいですよ」
エディを起こしてしまったみたいで、静かな声が言った。
「でも、なんか外が……」
「ええ、そうですね。兵士が見張りの交代をする頃ですから、奴隷は起きる時間です。でも今はまだ下働き奴隷が朝の準備をしているだけですから、あなたがそんなことを気にしなくてもいいのですよ」
今、奴隷って言った……?
なんだか、外にはすごくたくさんの人がいる気配がする。
これ……どれだけの規模で遊んでいるんだ? 大規模イベントをする場所なんてどこにあったかな。僕が落ちた川の近くには住宅街しかないはずなのに。
だけど、今はそんな数々の疑問より、切羽詰まった問題がある。
「あの、エディ……僕、トイレに行きたい」
「ああ、どうぞ。私のテントのを使いなさい」
と、エディはキラキラした鉱物の並んでいる棚の横の方を指差した。
ベッドを降りて近付いてみると、ぴんと張られたテントの布の上に同色の布が垂れていて、そこをめくると小さな四角い空間があった。
恐る恐る入ってみると、円筒形の頑丈そうで重そうな壺と、それより小さめで水の入った壺と、乾燥した何かの植物か海藻みたいなものがたくさん入った籠がある。
な、なにこれ?
円筒形の壺には便座のような縁があるけど、中は空っぽで、底にはきれいな模様が彫ってあって宝石みたいな石がはまっている。水の入った方の壺を覗くと、その底にも違う模様が彫ってあって小さな宝石がはめこんである。
僕はベッドに引き返した。
「あ、エディ……。その、えっと、使い方を教えて……」
「使い方?」
エディは不思議そうな顔をして体を起こした。僕が着ているのと同じような形のローブを羽織っているけど、濃い紺色で全然透けていないし、紐を腰のところできちっと結んでいるので、前がはだけたりもしていない。
ちょっと何で僕だけスケスケなの? と思ったけど、やっぱり口には出せない。
「あ、あのトイレの、使い方……」
「え……? 初めてごっこ、まだ続いているのですか……?」
「あの、ごっこじゃなくて、ほんとに分からなくて……」
テントだから水洗じゃないのは覚悟していたけど、壺ってどういうこと?
エディは少し面白そうな顔をして僕の手を引き、トイレに入った。
「小便はこの大きな方の壺の中に直接してください。大便は壺に座ってした後、この草を水でぬらしてお尻の汚れを拭くんです。汚れた草もこの壺に捨ててくださいね」
僕は円筒形の壺を覗き込んだ。
「なんか、きれいな模様が彫ってあるけど、汚していいんですか」
「ええ、それは魔法陣ですから、出したものは処理場へ転移されてスライムが分解してくれます」
「ま、魔法? 転移? それにスライム?」
どこまで本気で言っているんだろう?
エディはくすくすと笑った。
「いいからしてみなさい。私たちの仲で、今更恥ずかしくもないでしょう?」
いやいや、めっちゃ恥ずかしいですけど?!
「う…………はい………」
もう言い返す余裕もないほど切羽詰まって来たので、僕は壺の底の模様に向かっておしっこをした。
壺の底の宝石みたいな石がぽうっと光り出して、みるみる液体が消えていく。
「う……うそ……」
排泄を見られている恥ずかしさより、驚きの方が大きくて、僕は茫然とそれを見ていた。
「なんで? マジで? 本当に魔法があるの? 特殊効果? っていうか、そうかあれだっ! CGってやつ?!」
「リュカ……?」
はじめは面白そうな顔をしていたエディの表情が、僕があまりに騒ぐので怪訝そうなものに変わっている。
「どうしたんですか? 昨夜からちょっとおかしいですね。いえ、昨夜……ではなく、川で死にかけてから……?」
言われ、僕は身をひるがえして走り出した。
もう、何が何だか訳が分からなすぎるよ。
いったい何が起こっているのか、この目でちゃんと確かめなくちゃ。
「リュカ! 待ちなさい!」
エディの声を背後に聞きながら、僕はテントの出入り口を片手でばさりと大きく払って、外へ飛び出していた。
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よろしくおねがいします。