異世界で美少年奴隷になっちゃった?!

緋川真望

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第1話 まさか見知らぬ男の人と

1-(6) い、異世界……


 眩しさとともに、広大な光景が目に飛び込んできた。
 息が止まった。
 叫び声も出なかった。
 目を見開き、両手で口を押える。


 そこは、どこからどう見ても、日本では無かった。


 エディのテントは少し高台になっている場所にあった。だから僕はそれの全体を見渡せた。開けた草原に数えきれないほどのテントが立ち並び、その間を数えきれないほどの兵士が動いている。多分、何万人という規模だ。

 ごっこ遊びなんかではなく、一目でこれは本物の軍なんだと分かった。
 平原の向こうに森があり、そのずっと向こうに西洋風の城というか、砦のようなものが二つ見えた。僕には詳しい知識が無いから、どの時代のものかは分からない。

 これって、中世ヨーロッパ?
 いわゆるタイムスリップってやつなの?

 いや、待て待て待てよ、違うだろ。
 地球のどの時代にも『魔法』なんてものは存在しない。

 ということは……

「異世界……?」

 口に出してしまうと、それは事実としてすとんと胸の内に落ちてきた。

「異世界、かぁ……」

 つまり、ここは剣と魔法の世界。
 勇者も魔導士もいて当たり前の、遥かなる遠い世界……。

 僕だって、アニメも見るし、ゲームもする。
 人並みに異世界への憧れもある。
 でも。
 憧れの異世界に来て一番最初にあったことが、魔法を使ったりドラゴンに遭遇したりとかいうファンタジーな出来事じゃなくて、会ったばかりの男の人との夜のアレコレだなんて……。
 ううう、僕っていったい……。

「はは……」

 乾いた笑いが喉からもれた。

 何だか力が抜けて、その場にぺたりと座り込んでうなだれる。ふと、目に入ってくる自分の手足に違和感を覚えた。なんだか、やけに白っぽい肌だ。しかも、顔の横に落ちてくる髪の毛が日に照らされてキラキラしている……。

「え……?」

 おかしい。僕の髪は右側だけ剃り上げられて、悲しくもオモシロい感じになっているはずなのに。
 ゴクリとつばを飲み込む。
 自分の白い手を掲げてまじまじと見る。細くて長くて形のいい指は、短くて不格好ぶかっこうな僕のものとはまったく違っていた。

「うそ……でしょ……」

 テントの中は薄暗くて気付かなかった……。というか、自分の体が自分のものじゃないなんて、普通は考えもしないし。
 僕はキョロキョロとあたりを見回した。
 鏡、鏡を見たい。

 その時、急にどんと何かがぶつかって来た。

「邪魔だ! 朝っぱらから、いかがわしいカッコでうろついてるんじゃねぇ」

 あざけりのこもった声に振り向くと、樽を抱えた男が、汚物を見るような目で僕を見下ろしていた。昨日、俺が着ていたような貫頭衣にくたびれた長ズボンを履いている。鎧を脱いだ兵士だろうか。

「愛玩奴隷は愛玩奴隷らしく、日が出ている内は引っ込んでろ!」

 あいがんどれい?
 どれい?

 聞き返そうかと思ったが、男はざっと足で地面を蹴って僕に砂をかけ、ふんと鼻を鳴らして行ってしまった。

「よーう、かわいこちゃん。ご主人様に追い出されたのかぁ?」

 それを近くで見ていたらしい兵隊達が叫び、笑い声をあげた。

「なんなら代わりに俺が飼ってやろうか?」
「毎晩、ひぃひぃ泣かせてやるぜぇ」

 さげすまれたり、ののしられたりするのは、慣れているんだけど……。
 僕に寄せられる彼らの視線がねっとりとしていて、ゾゾッと寒気がした。

「リュカ!」

 靴を履いたエディが後ろから走ってくる。
 その姿が神々しく見えて、僕はすがりつくようにエディに飛びついた。

「エディ! エディ、僕は……」

 エディの指先が僕の唇に触れた。

「ダメですよ、リュカ。人のいるところでは大魔導士様と呼びなさい」

 一瞬、くらっと眩暈めまいがした。

「それは……僕がその……ど、奴隷だから……?」
「ええ、人前では身分をわきまえないと」

 エディはそれが常識だという様にうなずいた。
 ひゅう、と喉が鳴った。
 それは、ここが異世界だと分かったことよりも、ずっと怖い事実を知った瞬間だった。

「……僕が、奴隷…………?」

 なんてこった。『村人A』ですらなかった。
 奴隷っていったら、奴隷っていったら、つまり身分制度の最下層ってことじゃんか。
 ごくっとつばを飲む。

 奴隷って……なんだか、ひじょーにヤバイんじゃないの?
 日本みたいに基本的人権なんて存在していないよね……?

「どうしたんです。そんな蒼い顔をして……。リュカ、昨日からおかしいですよね。何かあったんですか?」

 エディは……この世界の大魔導士様は、奴隷の僕にも優しい声で尋ねてくれる。
 周囲にいる兵隊はみんな怖くて、エディだけが命綱のような気がして、僕は必死にしがみついた。

「僕……分からない……」
「え」
「大魔導士様、どうしよう……。僕、自分のことも、この世界のことも、何もかもが分からないんです………」

 エディはひょいっと僕を抱き上げ、周囲の兵士をじろりと睨んだ。
 まるで殺虫剤をかけられたコキブリみたいに、兵士達がさささーと散っていく。

「とにかくテントに戻りましょう。リュカのきれいな体を、あんな下品な目にさらしておきたくはないですから」

 いえ僕はひどくブサイクですけど……と言いかけて気付く。

 ああ、そうか、今の僕はブサイクじゃないのかもしれない。なんか、手足はきれいな形だし、髪もキラキラしているし。もしかして、今の僕は、ちょっとくらいはきれいなのかな……?

 エディの腕に抱かれて移動しながら、僕はそんなことを夢想していた。

 とりあえず、確かなことは、僕の体はすごく細くて華奢だということだ。それほど大柄には見えないエディにも、軽々と抱かれているのだから。






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