異世界で美少年奴隷になっちゃった?!

緋川真望

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第3話 まさか剛腕の大剣士さまと

3-(7) 偽物でもいいですか


 気絶していたのは、どのくらいの間だったのかな。
 フィルが体を拭いてくれているのが分かる。

 僕は女の子としたことが無いけど、自分の手でしたことはある。そういう時は、終わるとちょっと冷めた気持ちになるものだったけど、こうやって男の人に抱かれた後は終わってもいつまでもじんじんと余韻が続く。エディにされた時もそうだった。

 フィルはする方だったから、冷めた気持ちになってもおかしくないと思うんだけど、びっくりするほど優しくお世話してくれている。

 きっと、エディも僕の後始末をしてくれたんだと思う。僕は気持ち良すぎて気を失ってしまったけど、気付くといつも体はきれいになって着替えさせられていた。

 僕が考える『性奴隷』のイメージだと、セックスの後にご主人様の体を拭いたり、着替えを手伝ったりするのは奴隷の役目だと思っていた。
 というか、普通はそうするものなんじゃない?
 エディもフィルも優しいから何も言わないけど、本当は呆れているかもしれない。

 僕は起き上がろうとして腕に力を入れてみたけど、がくっと力が抜けてしまう。
 そんな僕を抱きかかえて、フィルは優しくキスしてくれた。

「まだ寝ていていいぞ」
「はい……」

 起きろと言われても起き上がれないので、そう言われてほっとした。

「リュカを困らせたりしないと魔導士殿に言ったのに、結局ひどく疲れさせてしまったな」

 頬を撫でてくれる大きな手に、僕はゆるゆると首を振る。

「フィルはすごく優しかったです……」

 僕の体力が無いだけで、ひどいことをされたわけじゃない。
 エディにもフィルにも優しくされていて、ご飯もちゃんともらえているのに、この体はなぜか、『陽介』よりもずっとひ弱な感じがする。


 フィルの指が青い方の錠剤を持って、僕の足を広げた。

「それ、口の洗浄薬じゃ……?」
「ああ、した後はこれの方がいいんだ。粘液成分はいらないし、中に出したものを放って置くと腹を壊すからな」

 説明しながらフィルの指がつぷ、と入ってくる。しゅわわーと薬の溶ける感じがあった。
 
「んん……」

 吐息が漏れる。

「リュカ、そんな色っぽい声を出すな。またしたくなる」
「今またされたら、僕は死んじゃいます……」
「ははは、何回もイったもんな。気持ち良かったか」
「はい……とても……。あの、フィルも?」
「ああ、最高だった」

 フィルがまたキスしてくれる。

 最高か……。
 それって、一番良いってこと?
 それとも……ただのお世辞というか、慰め?
 だって、本物のリュカより良いわけがないし。

「あの、記憶を失う前の僕より、良かったですか?」

 聞くと、フィルは少し驚いたように瞬きして、ぐったりしている僕を抱き上げた。
 真摯しんしな目で、僕を見つめてくる。

「リュカ……記憶があろうとなかろうと、リュカはリュカだ」

 ああ、違う……。
 そういうことを聞きたいんじゃない……。

 フィルにとっては、リュカと僕は同一人物なんだろうけど、僕は自分が偽物だって知っている。
 何かある度に、記憶を失う前の、つまり本物のリュカと比べられている気がして、僕は劣等感を覚えてしまう。
 リュカはアウトドアが好きで、泳ぎも得意で、僕よりずっと大人っぽくて、エッチに関しても調教ってやつを受けたんだから、きっとすごいテクニックを持っていたと思う。
 本物と偽物の違いを考えると、不安な気持ちが大きくなる。

「フィル……。もしも、もしもなんですけど……」
「もしも?」
「あの、もう二度と僕の記憶が戻らないとしたら……ずっと、僕がこのままだったら……やっぱり、嫌ですか」

 僕は許される限りずっとこの体の中にいたいと思い始めている。

 陽介には戻りたくない。毎日毎日いじめられて、嫌だって言えなくて、これ以上いじめられないようにと逆らわずに、ただひたすら身を縮めていた……。あんな風に卑屈に生きるのはもう嫌だ。

 こっちの世界では、きれいなリュカの体を男の人が優しく触って抱きしめて撫でてくれる……誰も僕をいじめないし、無視しないし、甘やかしてくれる。一度こんな幸せを知ってしまった後に、あそこへ戻って『陽介』として生きていくなんてもう絶対に無理だ……。

 分かっている。僕が優しくされている裏で、今も『陽介』の体に入った本物のリュカは、地獄みたいな日々を送っているはず。

 でも、最初に僕のブサイクな顔を「いいなぁ」と言ったのはリュカだ。きれいな顔を「欲しいならあげる」と言ったのもリュカだ。

 やっぱりこの体を返したくないよ……。

 でも、僕が自分のわがままでこの体を使い続ける限り、エディやフィルが愛した本物のリュカは戻って来ない。

「今の僕は本物じゃありません。僕は、リュカの偽物みたいなものだから……」

 僕は本当のことを言った。
 フィルは困った子を見るように、僕の髪を撫でた。

「リュカ、今もリュカはかわいいよ。何も知らなくて、幼くて、素直で、無防備に俺を信じてくれて……。今の頼りなくて弱々しいところも、かわいくてたまらない」

 指先で髪をくようにして、繰り返し繰り返し撫でてくれながら、フィルは静かに言った。

「お前がリュカの偽物なら、ずっと偽物のままでもいい」

 ゆらゆらっとフィルの姿が目の中で揺れた。
 一気に涙が溢れて、ぽろぽろと零れた。
 うまく言葉が出てこないので、フィルにギュッと抱きついた。
 フィルもまるで大事な宝物みたいに優しく抱き返してくれた。


 この体、返したくない。
 リュカが戻ってきても、返したくない。
 わがままでも卑怯でもなんでもいい。
 僕はこの先、一生、リュカとして生きていきたいよ……。





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