21 / 121
第3話 まさか剛腕の大剣士さまと
3-(7) 偽物でもいいですか
気絶していたのは、どのくらいの間だったのかな。
フィルが体を拭いてくれているのが分かる。
僕は女の子としたことが無いけど、自分の手でしたことはある。そういう時は、終わるとちょっと冷めた気持ちになるものだったけど、こうやって男の人に抱かれた後は終わってもいつまでもじんじんと余韻が続く。エディにされた時もそうだった。
フィルはする方だったから、冷めた気持ちになってもおかしくないと思うんだけど、びっくりするほど優しくお世話してくれている。
きっと、エディも僕の後始末をしてくれたんだと思う。僕は気持ち良すぎて気を失ってしまったけど、気付くといつも体はきれいになって着替えさせられていた。
僕が考える『性奴隷』のイメージだと、セックスの後にご主人様の体を拭いたり、着替えを手伝ったりするのは奴隷の役目だと思っていた。
というか、普通はそうするものなんじゃない?
エディもフィルも優しいから何も言わないけど、本当は呆れているかもしれない。
僕は起き上がろうとして腕に力を入れてみたけど、がくっと力が抜けてしまう。
そんな僕を抱きかかえて、フィルは優しくキスしてくれた。
「まだ寝ていていいぞ」
「はい……」
起きろと言われても起き上がれないので、そう言われてほっとした。
「リュカを困らせたりしないと魔導士殿に言ったのに、結局ひどく疲れさせてしまったな」
頬を撫でてくれる大きな手に、僕はゆるゆると首を振る。
「フィルはすごく優しかったです……」
僕の体力が無いだけで、ひどいことをされたわけじゃない。
エディにもフィルにも優しくされていて、ご飯もちゃんともらえているのに、この体はなぜか、『陽介』よりもずっとひ弱な感じがする。
フィルの指が青い方の錠剤を持って、僕の足を広げた。
「それ、口の洗浄薬じゃ……?」
「ああ、した後はこれの方がいいんだ。粘液成分はいらないし、中に出したものを放って置くと腹を壊すからな」
説明しながらフィルの指がつぷ、と入ってくる。しゅわわーと薬の溶ける感じがあった。
「んん……」
吐息が漏れる。
「リュカ、そんな色っぽい声を出すな。またしたくなる」
「今またされたら、僕は死んじゃいます……」
「ははは、何回もイったもんな。気持ち良かったか」
「はい……とても……。あの、フィルも?」
「ああ、最高だった」
フィルがまたキスしてくれる。
最高か……。
それって、一番良いってこと?
それとも……ただのお世辞というか、慰め?
だって、本物のリュカより良いわけがないし。
「あの、記憶を失う前の僕より、良かったですか?」
聞くと、フィルは少し驚いたように瞬きして、ぐったりしている僕を抱き上げた。
真摯な目で、僕を見つめてくる。
「リュカ……記憶があろうとなかろうと、リュカはリュカだ」
ああ、違う……。
そういうことを聞きたいんじゃない……。
フィルにとっては、リュカと僕は同一人物なんだろうけど、僕は自分が偽物だって知っている。
何かある度に、記憶を失う前の、つまり本物のリュカと比べられている気がして、僕は劣等感を覚えてしまう。
リュカはアウトドアが好きで、泳ぎも得意で、僕よりずっと大人っぽくて、エッチに関しても調教ってやつを受けたんだから、きっとすごいテクニックを持っていたと思う。
本物と偽物の違いを考えると、不安な気持ちが大きくなる。
「フィル……。もしも、もしもなんですけど……」
「もしも?」
「あの、もう二度と僕の記憶が戻らないとしたら……ずっと、僕がこのままだったら……やっぱり、嫌ですか」
僕は許される限りずっとこの体の中にいたいと思い始めている。
陽介には戻りたくない。毎日毎日いじめられて、嫌だって言えなくて、これ以上いじめられないようにと逆らわずに、ただひたすら身を縮めていた……。あんな風に卑屈に生きるのはもう嫌だ。
こっちの世界では、きれいなリュカの体を男の人が優しく触って抱きしめて撫でてくれる……誰も僕をいじめないし、無視しないし、甘やかしてくれる。一度こんな幸せを知ってしまった後に、あそこへ戻って『陽介』として生きていくなんてもう絶対に無理だ……。
分かっている。僕が優しくされている裏で、今も『陽介』の体に入った本物のリュカは、地獄みたいな日々を送っているはず。
でも、最初に僕のブサイクな顔を「いいなぁ」と言ったのはリュカだ。きれいな顔を「欲しいならあげる」と言ったのもリュカだ。
やっぱりこの体を返したくないよ……。
でも、僕が自分のわがままでこの体を使い続ける限り、エディやフィルが愛した本物のリュカは戻って来ない。
「今の僕は本物じゃありません。僕は、リュカの偽物みたいなものだから……」
僕は本当のことを言った。
フィルは困った子を見るように、僕の髪を撫でた。
「リュカ、今もリュカはかわいいよ。何も知らなくて、幼くて、素直で、無防備に俺を信じてくれて……。今の頼りなくて弱々しいところも、かわいくてたまらない」
指先で髪を梳くようにして、繰り返し繰り返し撫でてくれながら、フィルは静かに言った。
「お前がリュカの偽物なら、ずっと偽物のままでもいい」
ゆらゆらっとフィルの姿が目の中で揺れた。
一気に涙が溢れて、ぽろぽろと零れた。
うまく言葉が出てこないので、フィルにギュッと抱きついた。
フィルもまるで大事な宝物みたいに優しく抱き返してくれた。
この体、返したくない。
リュカが戻ってきても、返したくない。
わがままでも卑怯でもなんでもいい。
僕はこの先、一生、リュカとして生きていきたいよ……。
・
あなたにおすすめの小説
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!
モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。
その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。
魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。
その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?!
ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
魔王に転生したら、イケメンたちから溺愛されてます
トモモト ヨシユキ
BL
気がつくと、なぜか、魔王になっていた俺。
魔王の手下たちと、俺の本体に入っている魔王を取り戻すべく旅立つが・・
なんで、俺の体に入った魔王様が、俺の幼馴染みの勇者とできちゃってるの⁉️
エブリスタにも、掲載しています。
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。