異世界で美少年奴隷になっちゃった?!

緋川真望

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第5話 まさか紅蓮の勇者さまと

5-(6) 愛玩奴隷に向いている



「……なぁリュカ、この戦地でのお役目が終わったら、俺はしばらく自由に動けると思う。どこか、行ってみたいところはあるか」
「僕は、ここしか知らないから……。きっとどこに行っても珍しくて楽しいと思います」
「そっかぁ。俺もモンスター討伐の要請が多くて、じっくりと旅をしたことがないんだよな」
「モンスター討伐?!」

 おおー!?
 『ザ・異世界!』なワード来たー!

 ちょっと変な感じになっていた今の空気を吹き飛ばすくらいの楽しい話題だ。
 ワクワクして レオの顔を見上げた。

「モンスター、いっぱい退治したんですか?」
「おっ? リュカはモンスターに興味があるのか?」

 そりゃあるよ!
 だって、せっかく異世界にいるんだから!
 剣と魔法の異世界に来て、僕が目にしたモンスターはオークとゴブリンとトロールだけ。
 か、片寄ってる……。

「僕、ドラゴンを見てみたいんです!」
「ドラゴンか、退治したことあるぞ」
「本当ですか! すごい!」
「あれは勇者になって何年目だっけなぁ。ドワーフの国との国境近くでドラゴンが暴れているから討伐せよとかって言われてさ、フィリベールとエドゥアールとジュリアンを引き連れて行ったんだよな。ジュリアンの親父はホント人使い荒いんだ。あっち行けーこっち行けーって簡単に言うから参るよ」

 ジュリアンの親父って、この国の王様のことだよね。
 レオって……何て言うか、自由人だな。

「ドラゴンは、やっぱり強かったですか」
「ああ、倒すのにそこそこ時間がかかったな。ああ、そうだ、俺の鎧はその時に倒したドラゴンの鱗で作らせたんだ。けっこう頑丈でいいぞ。リュカの体に合わせてひとつ作らせようか」

 ドラゴンの鎧!? かっこいい! 欲しい!

 そう思ったけど、僕は首を横に振った。

「重い鎧を着たら、動けなくなるだけです……」
「ドラゴン製はそんなに重くは……。いや、でも確かに……」

 レオの手が僕の胸周りや腹回りを計る様に触ってくる。

「リュカはちょっと細すぎるな。腕も……」

 と言って僕の手首に指を回す。レオが人差し指と親指で作った輪よりもずっと、僕の手首は細かった。

「ああ、これじゃ剣も重すぎて持てないよな」

 奴隷に魔法は使えないし、成長が止まると宣告されたし、モンスター討伐なんて夢のまた夢だよね。
 僕は小さくため息を吐いた。

「そうだ。エドゥアールのローブと同じようなものを作ろうか」
「え?」
「確か、ええと名前は忘れたけどなんとかいう大蜘蛛の糸を使っているとかで、魔法耐性とある程度の物理耐性もあるはずだ。それでリュカ用のローブを作れば、モンスター退治に連れていけるだろ?」

 僕はびっくりして、レオの顔を見上げた。
 両手でレオの胸にしがみつく。

「ほんとに? ほんとに僕を連れて行ってくれるんですか?」
「ああ、本当だ」
「嬉しい!」

 僕はレオの首に手をかけて、レオのほっぺにキスをした。

「ありがとう、レオ。すごく楽しみ」

 そしてぎゅうっと抱きつく。
 だが、いつも抱き返してくれるはずのレオの反応が無い。
 僕が不思議に思って顔を上げると、レオの目がうるうると潤んでいた。

「リュカが……自分から、キス……した……」

 感激したようにふるふると肩を震わせたかと思うと、レオは僕を思いっきり強く抱きしめた。

「リュカ、かわいい、かわいい、俺のリュカ!」

 そのままごろんと転がって僕の上に乗り、レオは狂ったようにキスの雨を降らせてきた。
 わわわ、感情表現激しすぎる!

「あー、くそー! はやくリュカを抱きたい!」

 両手両足で僕の体をホールドして、レオが叫ぶ。
 僕もレオの気持ちに応えたかったけど、まだ体が重くてちょっと無理そうだった。

「ごめんなさい、レオ。僕、エディのところに行きましょうか? そうしたら、ここに他の子達を呼んで楽しめますよね」
「…………」
「……レオ?」

 レオは体を離して、むすっとした顔で見下ろしてきた。

「さっきも言ったろ? 性欲だけじゃないって! リュカがせっかく俺の腕の中にいるのに、他の子なんか呼ぶわけがない」

 レオは、今度はそっと、壊れ物を扱うように優しく抱きしめてきた。

「リュカからのキスが初めてだったから、ちょっと興奮しちゃっただけだ」
「リュカは……以前の僕は……自分からキスもしないし、名前も呼ばないし、お贈り物も受け取らなかったって聞きました」

 それがどうしてなのか、今なら分かる。
 リュカは妹のために愛玩奴隷になっただけで、男としてのプライドは捨てていなかったから。

「自分のことを、そんな他人みたいに」

 レオがくすっと笑い、自分の指にくるんと僕の髪を巻きつけた。

「確かに、前のリュカは今のリュカとは別人みたいだったな。俺の要求にはいつも楽しそうに応えてくれたけど、今思えば本気で楽しんでいたのかは分からないよな……。ジュリアンが言ってただろ? リュカは『愛玩奴隷』を完璧に演じていたって。それを聞いて、納得した部分もあるよ。きっと、俺とのセックスも演技だったのかなって……」

 セックスでの演技ってどういうものなんだろ?
 感じているふりをするとか?
 
「リュカ、もし俺にされて嫌なことがあったり、痛かったりしたら、正直に言えよ。絶対にもう演技するなよ」

 そうか……嫌なことを嫌って言わないのも演技なのか。
 そういう演技なら僕が『陽介』だった頃もよくやっていたな。

「俺はリュカを犯したいわけじゃないんだ。愛し合いたいんだからさ」

 僕はレオの体に自分の体をすり寄せた。

「僕、レオといて幸せです……」
「そうか? 他の三人よりいいか?」
「え?」

 唐突に聞かれ、ちょっと言葉に詰まる。

「えっと……」

 なんて答えるべき?
 レオが一番です、とか?
 でもたった今、演技するなって言われたばかりで嘘をつくのも……。

「あの、他の人といる時も、幸せ……」

 レオはむっと口を尖らせた。
 レオは感情を隠さない。

「だ、だって、四人とも、僕なんかにすごく優しくしてくれるから。僕、何も分からなくて心細かった時、エディが優しくしてくれてものすごく嬉しかったし、前のリュカと違いすぎて嫌われないか不安だったけど、フィルは今のままでいいって言ってくれたし、ジュリアン様も僕のわがままを聞いてアベルを殺さないでくれたし、レオは人類最強の勇者様で僕を守るって言ってくれたし、みんな僕に親切にしてくれてすごくすごく安心したんです。僕は、みんなが大好きです」
「みんなかよ」

 レオが子供みたいに口を尖らせる。

「うん……はい……。だから、レオ……怖いから、喧嘩しないでくださいね」

 レオは口を尖らせたままで、うんとうなずいた。
 なんだかその仕草がかわいく見えて、僕はその尖った唇にちゅっと口を付けた。

「リュカっ」
「僕の体調が良くなったら、レオに抱いて欲しいです。これは本当の気持ち、演技じゃないですから」

 レオは嬉しそうな笑顔になって、僕の頭を撫でた。

「絶対に気持ち良くしてやるからな」
「はい……」

 僕はふと、自分は愛玩奴隷に向いているのでは、とちょっと思った。
 複数の男の人に抱かれるということに、僕はもうほとんど抵抗を感じていない。
 この特殊な世界にいきなり放り込まれてしまって、全員に抱かれないと戦争になるなんて言われて、最初はあんなに不安で怖かったというのに……。

 リュカ本人が地獄の日々と表現した日常に、僕はあっさりと順応してしまった。
 本物のリュカは心の中に『男』を強く持っていたから、抱かれることが屈辱でつらかったに違いない。

 でも、僕は。
 なんというか……。
 僕に注がれる優しさや情愛を、ほんの少しでも男の人達に返したいと思っている。
 僕が今持っているものは僕自身の体だけだから、優しい男の人達が僕の体を望むのなら、僕はできるだけそれに応えたい。できるだけ受け入れたいんだ……。


 レオが左腕に僕の頭を乗せて、右腕で包む様に抱いてくれている。
 僕とレオは話をしながら、時々、軽くキスをする。
 まるで恋人同士みたいに甘い空気だけど、僕とレオは恋人ではない。

 だって、僕は奴隷だから。

 僕の体調が戻ったら、きっとレオに何度か抱かれるだろう。
 そして次はジュリアンのもとへ行く。
 その後きっと、エディのところへ戻る。
 エディの次は、またフィルなのかな?
 そうやってぐるぐると順番に抱かれて、どこまでいったら戦争が回避できるのかなぁ。
 四人が僕に飽きるまで?

 僕は四人とも大好きだけど、恋をしているのとは違うと思う。
 愛玩奴隷は、愛玩されるだけであって、恋人や妻とは違う存在だから……。



 ねぇ、リュカ。

 きっと、誇り高かった君よりも、僕の方がずっと愛玩奴隷向きだ……。男らしい誇りってやつをまったく持っていないから。

 愛玩奴隷向きの僕が愛玩奴隷になったのは、悪いことじゃなかった、そんな気がするよ。

 ねぇリュカ、僕はこれからどうなるのかな。






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