【完結】愛されないあたしは全てを諦めようと思います

黒幸

文字の大きさ
17 / 56

第17話 あなたがなぜ、呼ばれたのか、分かるわね?

しおりを挟む
 隠そうともしない派手な足音で嫌な予感はした。
 ノックもせずにバタンと扉を壊さんばかりの勢いで開けて、入ってきたのは誰かなんて、顔を見なくてもすぐ分かる。

 赤みがかった灰色サンディブロンドをした長い髪が、ポニーテールでまとめていても目立つ。
 ユナユスティーナだってことは分かったし、ドアの開け方からして、怒ってるだろうことも分かってた。

 絵を描く手を止めて、見上げたら思っていた以上に怖い顔をしてることにビックリした。
 ユナはマリーマルチナほど、美人ではないけど黙っていたら、騙される人がたくさん出そうなくらいにかわいいのは事実。
 ただ、性格のきつさが顔にも出てしまったと分かるくらいに勝気な顔立ちをしてる。

 今、あたしを睨んでる顔は勝気とか、そんな生易しいものじゃなかった。
 目を吊り上げて、蟀谷こめかみに青筋立てて、怖いったらありゃしない。
 こんな姿を見たら、ユナのことが好きなロビーロベルトも冷めるんじゃないの?

「エミー! あんたって子は何をしているのよ。すぐにいらっしゃい! 皆、待っているわ」
「は、はい」

 有無を言わさないって、こういうことを言うんだろう。
 イヤッ! なんて言ったら、ビンタされそうな怖さがあったのでつい頷いじゃった。



 リビングダイニングに着くと全員揃ってた。
 ただし、エヴァエヴェリーナ以外だけど。
 ベティベアータまでいるのが、ちょっと意味が分かんない。
 彼女は長く仕えているから、家族同然とはいえ、家族ではないのに?

「エミー。あなたがなぜ、呼ばれたのか、分かるわね?」
「何の話でしょ? 分かりませんけど」

 俯き加減で目の端に薄っすらと涙を溜めて、悲しそうなお母様にそう言われるけど、何の話か、分かんない。
 いや、ホントに分かんないんだけど。

「エミー。正直に言った方がいいと思うわ」

 マリーまで憔悴したように疲れ切った表情をしていて、変なことを言う。
 何なの?
 あたしが何か、したような前提で話が進められてる気がする……。

「あんたしか、いないでしょ! こんなことするのは」

 ユナが指差した先にはマリーがデビュタントで着る純白のボールガウンがある。
 何かの染料をかけられたのか、あちこちに赤や青の大きな染みが出来ていて、薄いレース生地の部分、それに袖と裾が鋭い刃物のようなもので切られてる。
 とてもデビュタントで着られる物じゃない。

 誰がこんなことしたの?
 お母様とマリーが恨みがましい視線を向けてくる。
 ユナは憎しみの篭った恐ろしい視線を向けてくる。
 あたしが疑われてるってこと?
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。

婚約破棄されたショックで前世の記憶を取り戻して料理人になったら、王太子殿下に溺愛されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 シンクレア伯爵家の令嬢ナウシカは両親を失い、伯爵家の相続人となっていた。伯爵家は莫大な資産となる聖銀鉱山を所有していたが、それを狙ってグレイ男爵父娘が罠を仕掛けた。ナウシカの婚約者ソルトーン侯爵家令息エーミールを籠絡して婚約破棄させ、そのショックで死んだように見せかけて領地と鉱山を奪おうとしたのだ。死にかけたナウシカだが奇跡的に助かったうえに、転生前の記憶まで取り戻したのだった。

私はどうしようもない凡才なので、天才の妹に婚約者の王太子を譲ることにしました

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 フレイザー公爵家の長女フローラは、自ら婚約者のウィリアム王太子に婚約解消を申し入れた。幼馴染でもあるウィリアム王太子は自分の事を嫌い、妹のエレノアの方が婚約者に相応しいと社交界で言いふらしていたからだ。寝食を忘れ、血の滲むほどの努力を重ねても、天才の妹に何一つ敵わないフローラは絶望していたのだ。一日でも早く他国に逃げ出したかったのだ。

「帰ったら、結婚しよう」と言った幼馴染みの勇者は、私ではなく王女と結婚するようです

しーしび
恋愛
「結婚しよう」 アリーチェにそう約束したアリーチェの幼馴染みで勇者のルッツ。 しかし、彼は旅の途中、激しい戦闘の中でアリーチェの記憶を失ってしまう。 それでも、アリーチェはルッツに会いたくて魔王討伐を果たした彼の帰還を祝う席に忍び込むも、そこでは彼と王女の婚約が発表されていた・・・

可愛い姉より、地味なわたしを選んでくれた王子様。と思っていたら、単に姉と間違えただけのようです。

ふまさ
恋愛
 小さくて、可愛くて、庇護欲をそそられる姉。対し、身長も高くて、地味顔の妹のリネット。  ある日。愛らしい顔立ちで有名な第二王子に婚約を申し込まれ、舞い上がるリネットだったが──。 「あれ? きみ、誰?」  第二王子であるヒューゴーは、リネットを見ながら不思議そうに首を傾げるのだった。

離婚したいけれど、政略結婚だから子供を残して実家に戻らないといけない。子供を手放さないようにするなら、どんな手段があるのでしょうか?

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 カーゾン侯爵令嬢のアルフィンは、多くのライバル王女公女を押し退けて、大陸一の貴公子コーンウォリス公爵キャスバルの正室となった。だがそれはキャスバルが身分の低い賢女と愛し合うための偽装結婚だった。アルフィンは離婚を決意するが、子供を残して出ていく気にはならなかった。キャスバルと賢女への嫌がらせに、子供を連れって逃げるつもりだった。だが偽装結婚には隠された理由があったのだ。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

病弱を演じる妹に婚約者を奪われましたが、大嫌いだったので大助かりです

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。 『病弱を演じて私から全てを奪う妹よ、全て奪った後で梯子を外してあげます』 メイトランド公爵家の長女キャメロンはずっと不当な扱いを受け続けていた。天性の悪女である妹のブリトニーが病弱を演じて、両親や周りの者を味方につけて、姉キャメロンが受けるはずのモノを全て奪っていた。それはメイトランド公爵家のなかだけでなく、社交界でも同じような状況だった。生まれて直ぐにキャメロンはオーガスト第一王子と婚約していたが、ブリトニーがオーガスト第一王子を誘惑してキャメロンとの婚約を破棄させようとしたいた。だがキャメロンはその機会を捉えて復讐を断行した。

処理中です...