ルーシーの平凡なれど幸福な日常

くろいゆき

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ジョナサンとアメリーナ2

 フィデリテー男爵家は娘が生まれにくい家だった。
 久しぶりに生まれた待望の娘がアメリーナ・フィデリテーその人である。

 因縁深いオーディネリー子爵家のケイシーとは二歳違いの幼馴染で家同士の因縁こそあったが、仲の良い友人として過ごしていた。
 都にある寄宿学校への進学もケイシーと一緒だった。
 領地の将来を睨み、最先端の技術や学問を学ぼうとするケイシーを横目にアメリーナは家業とも言える魔法の技を鍛えることに専念した。
 ここに先輩のエドガー・ティーザーも加わり、故郷から遠く離れた地で楽しい生活を送っていた。

 転機が訪れたのはケイシーの身に起こった不運である。
 当主の座を継いだ兄レイが出奔し、謎の失踪を遂げた。
 この悲劇により、幼馴染二人の道が分かたれた。

 ケイシーは卒業を待たずして、故郷ペンバルに戻り領主の座を継いだ。
 二年後、アメリーナは優秀な成績を残し、卒業すると都での厚遇を全て蹴り、故郷へと戻った。
 以来、アメリーナは一族が築いた屋敷をさらに堅固なものに改装し、ペンバルを囲む森に人が入れないよう監視している。

「あなたは不器用な人だね」
「あなたほどではないけれど?」

 レベッカに対し、反射的にそう返すアメリーナは確かに少々、厄介な性質を持っている。
 現在、唯一の友人は森に住み、森に強い影響を与える存在であるレベッカだけだ。
 レベッカは森にあるリン・アローという静かな湖に居を構え、睨みを利かせている。
 彼女がいるお陰でペンパルの森は比較的、穏やかに保たれていた。

 ひょんなことから、レベッカと友誼を結んだアメリーナは唯一の友人の為、森に人の手が入らないように己が盾になることを決めた。
 レベッカが不器用と指したのはそのことだった。
 アメリーナは嫌われ役に徹することで友情に報いたのである。

「だけど私は許してないのよ」
「まぁ、いいじゃない? 可哀想な子が路頭に迷ってたんだからさ」
「確かにあの子は可哀想だわ。でも……」
「分かってるって。手がかかるんでしょ」

 アメリーナはこめかみに手を当て、「ええ、その通り」と素直に認めた。
 森の主たるレベッカの采配で行く当てのないジョナサンは森に住むことを許された。
 父親譲りの負けん気と培われたサバイバル精神の持ち主であるジョナサンは、いささか不格好ではあるものの人一人が住むのに十分な丸太小屋を建てた。
 強い風が吹けば、飛ぶような貧相な丸太小屋だったが、ジョナサンにはそれで十分だった。
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