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第7話 ノートゥング
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「アン。本当にこちらの方向でいいのか? 先に村に向かった方がいいんじゃないか?」
「マキナ様だからこそ、先に見て欲しいものがあるんですぅ」
ボクはアンと名乗った少女を横抱きに抱え、深い森の中を進んでいる。
アンは致命傷ではないものの肋骨が数カ所、折れていた。
かなりの重症であることは確かだ。
すぐに治療と安静にすべきところだが、気丈にも彼女はボクに見せたい物があるので寄り道をしたいと言い出した。
ボクの考えでは一刻も早い治療を受けさせるところだが、アンの瞳に宿る強い人の意思というものを感じ、彼女の見せたい物とやらを拝んでみたくなったのだ。
「この先に何があるんだ?」
「聖なる剣ですぅ。勇者が神様から、授かったスゴイ剣なんですぅ」
アンは傷みにやや顔を顰めながらもどこか、誇らしげな様子だった。
聖剣とはまた、やぶさかではない代物が眠っているようだ。
肉体を捨てた人類・支配者。
その支配者が種を存続させる為に創り出した亜人。
そこに勇者と聖剣とは何とも頭が痛くなることばかりだ。
「マキナ様。アレです」
アンが指で指し示した先に不思議な光景が広がっていた。
大地から、突き出した切り立つ岩。
その先端に一本の剣が突き刺さっていた。
いつから、そこに刺さっているのか分からないが白銀の柄が微かな光にも反射し、美しい。
岩に深く、突き刺さっている刀身も見事なものだ。
普通に鍛造された剣がこんな状態になるのかと問われれば、否定する者の方が多いだろう。
「アレがノートゥングですぅ。マキナ様は救い主様なんですぅ。だから、アレを抜けるのはマキナ様なんですよぉ」
「ボクが?」
アンはボクのことを救い主だと考えているようだ。
ボクは救い主にはなれない。
今なら、はっきりと分かる。
ボクが創ろうとした未来の世界の姿が今、ボクの見ている現実なのだ。
『アナタをズット待っていました』
その時、不思議な声が聞こえた。
アンは訝し気な表情になったボクをきょとんとした顔で見ているので聞こえてないのだろう。
『さあ。ワタシを手にトッテ』
不思議な声はどうやら、ボクだけに聞こえるものらしい。
脳波? いや、念波とでも言うのだろうか?
だが、ボクは確かめねばならない。
ボクを呼ぶこの剣の正体を知らなくてはならないのだ。
「アン。ちょっと待っていてくれるかな? すぐに終わる」
「え? あっ、はい」
アンの傷に堪えないように静かに地面に降ろし、岩に刺さるノートゥングへと歩みを進める。
先程までは感じなかった微かな燐光がノートゥングから、放たれていた。
「マキナ様だからこそ、先に見て欲しいものがあるんですぅ」
ボクはアンと名乗った少女を横抱きに抱え、深い森の中を進んでいる。
アンは致命傷ではないものの肋骨が数カ所、折れていた。
かなりの重症であることは確かだ。
すぐに治療と安静にすべきところだが、気丈にも彼女はボクに見せたい物があるので寄り道をしたいと言い出した。
ボクの考えでは一刻も早い治療を受けさせるところだが、アンの瞳に宿る強い人の意思というものを感じ、彼女の見せたい物とやらを拝んでみたくなったのだ。
「この先に何があるんだ?」
「聖なる剣ですぅ。勇者が神様から、授かったスゴイ剣なんですぅ」
アンは傷みにやや顔を顰めながらもどこか、誇らしげな様子だった。
聖剣とはまた、やぶさかではない代物が眠っているようだ。
肉体を捨てた人類・支配者。
その支配者が種を存続させる為に創り出した亜人。
そこに勇者と聖剣とは何とも頭が痛くなることばかりだ。
「マキナ様。アレです」
アンが指で指し示した先に不思議な光景が広がっていた。
大地から、突き出した切り立つ岩。
その先端に一本の剣が突き刺さっていた。
いつから、そこに刺さっているのか分からないが白銀の柄が微かな光にも反射し、美しい。
岩に深く、突き刺さっている刀身も見事なものだ。
普通に鍛造された剣がこんな状態になるのかと問われれば、否定する者の方が多いだろう。
「アレがノートゥングですぅ。マキナ様は救い主様なんですぅ。だから、アレを抜けるのはマキナ様なんですよぉ」
「ボクが?」
アンはボクのことを救い主だと考えているようだ。
ボクは救い主にはなれない。
今なら、はっきりと分かる。
ボクが創ろうとした未来の世界の姿が今、ボクの見ている現実なのだ。
『アナタをズット待っていました』
その時、不思議な声が聞こえた。
アンは訝し気な表情になったボクをきょとんとした顔で見ているので聞こえてないのだろう。
『さあ。ワタシを手にトッテ』
不思議な声はどうやら、ボクだけに聞こえるものらしい。
脳波? いや、念波とでも言うのだろうか?
だが、ボクは確かめねばならない。
ボクを呼ぶこの剣の正体を知らなくてはならないのだ。
「アン。ちょっと待っていてくれるかな? すぐに終わる」
「え? あっ、はい」
アンの傷に堪えないように静かに地面に降ろし、岩に刺さるノートゥングへと歩みを進める。
先程までは感じなかった微かな燐光がノートゥングから、放たれていた。
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