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幕間 ある悪役令嬢の奇妙な物語
閑話 最果てに咲く薔薇・アグネス2
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あれか、どれくらいの年月が経ったのでしょうか?
私には全く、分かりません。
この地では時の概念自体が存在しないのかもしれません。
私達は手厚い看護を受けたお陰で無事に回復しました。
無事に回復という言葉では足りないでしょう。
王国にいた頃よりも体調がいいだけではなく、心無し年齢が若返ったような心持になったのです。
これは単なる気のせいではありません。
私とドローレスではそれほどの実感がないのですが陛下やお父様達は明らかに若返ったと喜んでいます。
確かに年月を経るごとに陛下御夫妻は若々しくなっているように見えました。
不思議なこともあるものです。
不思議と言えば、不思議なのは私達への対応がとても丁寧なことでした。
丸太小屋とはいえ、私達に専用の住居まで与えられる厚遇なのです。
そして、体が回復し、ここでの暮らしにも慣れてきた頃でしょうか。
国王陛下が政務顧問に任命され、お父様もその補佐に就くことになりました。
それだけではありません。
王妃陛下とお母様も淑女教育の監督というお役目をいただくことになったのです。
想像していたのよりも平和で穏やかな暮らしではあったものの少々、ふさぎ込む姿が見られるお父様達を心配していたのですが、杞憂に終わりそうです。
私とドローレスも女王陛下の直接のお招きを受け、謁見するという名誉を得たばかりか、思わぬ大任を得ることになりました。
王国での暮らしや生活、文化を知りたいとお考えの女王陛下に週に一度、世間話をする。
ただ、それだけなのですが……
「アグネス!」
「ドローレス。どうしたの、それ?」
辺境伯家に生まれたドローレスは幼い頃から、武芸を嗜み、特殊な武器の扱いにも長けています。
そのことを知った女王陛下――リリス様はドローレスから、様々な武器や暗器の話を聞くにつれ、実地で試してみたいと世間話の会の前に手合わせを行うのがお約束のようになっていたのです。
「あの子、とんでもないわよ。もう鞭の使い方は私では手に負えないわ」
埃塗れになった服をはたき、呆れたように……しかし、どこか嬉しそうに話すドローレスはリリス様をあの子呼ばわりしていることに違和感を感じる方も多いでしょう。
ですが、リリス様はあまり、そういった身分社会の柵に拘らない方なのです。
手合わせの際に着ていた修練着からの着替えも終わり、三人だけのお茶会という体で始まった世間話。
「ではお城は石で出来てましゅの?」
「お城と言っても色々、あるのです。ね、ドローレス」
「ええ。実戦向きの最前線にある城は実用性が第一ですから、ちょっと違いますね」
いつもは令嬢の間で流行していたファッションやお茶菓子についての話題が多いのですが、今日はお城の話に興味がおありのようです。
彼女の紅玉色の瞳が妖しい色を帯びているので何か、企んでいるのかもしれません。
リリス様は悪戯好きな方でもありますから。
悪役令嬢と呼ばれ、婚約破棄された私ですが、今の暮らしの方が生き生きと自分らしく、生きられる気がして幸せです。
私には全く、分かりません。
この地では時の概念自体が存在しないのかもしれません。
私達は手厚い看護を受けたお陰で無事に回復しました。
無事に回復という言葉では足りないでしょう。
王国にいた頃よりも体調がいいだけではなく、心無し年齢が若返ったような心持になったのです。
これは単なる気のせいではありません。
私とドローレスではそれほどの実感がないのですが陛下やお父様達は明らかに若返ったと喜んでいます。
確かに年月を経るごとに陛下御夫妻は若々しくなっているように見えました。
不思議なこともあるものです。
不思議と言えば、不思議なのは私達への対応がとても丁寧なことでした。
丸太小屋とはいえ、私達に専用の住居まで与えられる厚遇なのです。
そして、体が回復し、ここでの暮らしにも慣れてきた頃でしょうか。
国王陛下が政務顧問に任命され、お父様もその補佐に就くことになりました。
それだけではありません。
王妃陛下とお母様も淑女教育の監督というお役目をいただくことになったのです。
想像していたのよりも平和で穏やかな暮らしではあったものの少々、ふさぎ込む姿が見られるお父様達を心配していたのですが、杞憂に終わりそうです。
私とドローレスも女王陛下の直接のお招きを受け、謁見するという名誉を得たばかりか、思わぬ大任を得ることになりました。
王国での暮らしや生活、文化を知りたいとお考えの女王陛下に週に一度、世間話をする。
ただ、それだけなのですが……
「アグネス!」
「ドローレス。どうしたの、それ?」
辺境伯家に生まれたドローレスは幼い頃から、武芸を嗜み、特殊な武器の扱いにも長けています。
そのことを知った女王陛下――リリス様はドローレスから、様々な武器や暗器の話を聞くにつれ、実地で試してみたいと世間話の会の前に手合わせを行うのがお約束のようになっていたのです。
「あの子、とんでもないわよ。もう鞭の使い方は私では手に負えないわ」
埃塗れになった服をはたき、呆れたように……しかし、どこか嬉しそうに話すドローレスはリリス様をあの子呼ばわりしていることに違和感を感じる方も多いでしょう。
ですが、リリス様はあまり、そういった身分社会の柵に拘らない方なのです。
手合わせの際に着ていた修練着からの着替えも終わり、三人だけのお茶会という体で始まった世間話。
「ではお城は石で出来てましゅの?」
「お城と言っても色々、あるのです。ね、ドローレス」
「ええ。実戦向きの最前線にある城は実用性が第一ですから、ちょっと違いますね」
いつもは令嬢の間で流行していたファッションやお茶菓子についての話題が多いのですが、今日はお城の話に興味がおありのようです。
彼女の紅玉色の瞳が妖しい色を帯びているので何か、企んでいるのかもしれません。
リリス様は悪戯好きな方でもありますから。
悪役令嬢と呼ばれ、婚約破棄された私ですが、今の暮らしの方が生き生きと自分らしく、生きられる気がして幸せです。
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