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第3章 茨の姫君
第20話 荊姫と小さな勇者
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六人までの勇者候補との面接が終わって、合格者が一人もいないですわ。
どうしましょう?
困りましたわ~。
嘘ですわ。
わたしは元々、そのような儀式に同行者の必要性を感じてませんから、最悪、合格者がいなくても構わないと思ってますの。
わたしにはそれだけの力がありますし、お兄様の体がありますもの。
わたしを害せる者など、この世界に片手の指ほどもいないですわ。
注意すべきはお祖父様の魔槍グングニルと伯父様のミョルニルくらいかしら?
もっともお兄様のヨルムンガンドとしての頑丈さがあれば、必殺のミョルニルでも耐えられましてよ。
「あと一人しか、いないですがいいのですか?」
「いいのですわ。それに……何でもありませんわ」
ドローレスはやや睨みながら、きつめの言い方をしてくるけども彼女なりの優しさと気遣いですわね。
そのあと一人こそ、実は気にかかっている子だとは言えなくてよ。
七人目。
最後の候補者レオニードはミドガルドの絶海の孤島を救い、小さな勇者と呼ばれている。
えぇ、確かに小さいですわね。
まだ、子供ですわ!
わたしもまだ、子供ですって?
でも、わたしはもう大人の仲間入りを果たしてますわ!
よく分かりませんけど、準備が出来ているので大人なのですわ。
少なくとも彼より、背だって高いですわ。
大人ですわね。
「レオニード……です。よろしくお願いします」
レオニードは恥ずかしそうにそう言うと顔を上げましたの。
その時、彼の曇りの無い瞳と目が合いましたわ。
その刹那、思い出しましたの……。
あのきれいな紅玉の色の瞳は間違いありません。
仮面舞踏会でわたしに永遠の愛を誓ってくれたあの人と同じ色……。
あら? おかしいですわ。
わたし、仮面舞踏会に出たことがあったかしら?
そうですわ。
これは夢の話。
かつてのわたしが経験した記憶に違いありませんわ。
前世というにはあまりにも茫洋としていて、それなのに深く刻まれてますの。
「えーと、レオニード君。君の武器はどうしたのかな?」
少々、どこかへ旅をしていたわたしを現実に引き戻したのはシンののんびりとした問い掛けですわ。
そういえば、不思議でしてよ。
これまでの勇者候補が全員、何らかの武器を手にしていたのに彼は持っていないんですもの。
「あっ……えっと、壊れちゃってないんです」
「そっか。なるほどね」
そういえば、書いてありましたわ。
リストに小さく注意書きで『霜の巨人を倒す際、不思議な力を発揮。使用した剣は復元不可能なまでに破損状態』と。
「分かりましたわ。ではこのわたしが……」
「ち、ちょっと! まだ、早いのでは!」
「あっー!?」
ドローレスとシンから、非難の声が上がってますが気にしませんわ。
わたしはもう決めましたの。
レースのカーテンを開けて、彼の顔を直に見たかったんですもの。
「ごきげんよう。小さな勇者さん」
「小さいって……そういう君も」
「わたし、決めましたの。あなたで決まりですわ」
「え?」
困っているということを隠そうともせず、はにかんだ顔を見せてくれる彼から、目が離せませんわ。
互いに見つめ合ったまま、ただ静かに時が過ぎていく。
そのことが心地いいですわ。
「何やってるんですか、馬鹿姫様!」
ついにキレたドローレスの怒鳴り声に現実に引き戻されたのは言うまでもありませんわ。
どうしましょう?
困りましたわ~。
嘘ですわ。
わたしは元々、そのような儀式に同行者の必要性を感じてませんから、最悪、合格者がいなくても構わないと思ってますの。
わたしにはそれだけの力がありますし、お兄様の体がありますもの。
わたしを害せる者など、この世界に片手の指ほどもいないですわ。
注意すべきはお祖父様の魔槍グングニルと伯父様のミョルニルくらいかしら?
もっともお兄様のヨルムンガンドとしての頑丈さがあれば、必殺のミョルニルでも耐えられましてよ。
「あと一人しか、いないですがいいのですか?」
「いいのですわ。それに……何でもありませんわ」
ドローレスはやや睨みながら、きつめの言い方をしてくるけども彼女なりの優しさと気遣いですわね。
そのあと一人こそ、実は気にかかっている子だとは言えなくてよ。
七人目。
最後の候補者レオニードはミドガルドの絶海の孤島を救い、小さな勇者と呼ばれている。
えぇ、確かに小さいですわね。
まだ、子供ですわ!
わたしもまだ、子供ですって?
でも、わたしはもう大人の仲間入りを果たしてますわ!
よく分かりませんけど、準備が出来ているので大人なのですわ。
少なくとも彼より、背だって高いですわ。
大人ですわね。
「レオニード……です。よろしくお願いします」
レオニードは恥ずかしそうにそう言うと顔を上げましたの。
その時、彼の曇りの無い瞳と目が合いましたわ。
その刹那、思い出しましたの……。
あのきれいな紅玉の色の瞳は間違いありません。
仮面舞踏会でわたしに永遠の愛を誓ってくれたあの人と同じ色……。
あら? おかしいですわ。
わたし、仮面舞踏会に出たことがあったかしら?
そうですわ。
これは夢の話。
かつてのわたしが経験した記憶に違いありませんわ。
前世というにはあまりにも茫洋としていて、それなのに深く刻まれてますの。
「えーと、レオニード君。君の武器はどうしたのかな?」
少々、どこかへ旅をしていたわたしを現実に引き戻したのはシンののんびりとした問い掛けですわ。
そういえば、不思議でしてよ。
これまでの勇者候補が全員、何らかの武器を手にしていたのに彼は持っていないんですもの。
「あっ……えっと、壊れちゃってないんです」
「そっか。なるほどね」
そういえば、書いてありましたわ。
リストに小さく注意書きで『霜の巨人を倒す際、不思議な力を発揮。使用した剣は復元不可能なまでに破損状態』と。
「分かりましたわ。ではこのわたしが……」
「ち、ちょっと! まだ、早いのでは!」
「あっー!?」
ドローレスとシンから、非難の声が上がってますが気にしませんわ。
わたしはもう決めましたの。
レースのカーテンを開けて、彼の顔を直に見たかったんですもの。
「ごきげんよう。小さな勇者さん」
「小さいって……そういう君も」
「わたし、決めましたの。あなたで決まりですわ」
「え?」
困っているということを隠そうともせず、はにかんだ顔を見せてくれる彼から、目が離せませんわ。
互いに見つめ合ったまま、ただ静かに時が過ぎていく。
そのことが心地いいですわ。
「何やってるんですか、馬鹿姫様!」
ついにキレたドローレスの怒鳴り声に現実に引き戻されたのは言うまでもありませんわ。
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