52 / 58
第3章 茨の姫君
第33話 愚か者の末路
しおりを挟む
「ユグドラシル」
物入れから、ユグドラシルのツタから作られたわたし専用の魔法杖を取り出しました。
フワフワと宙に浮く、ユグドラシルはお祖父様からのプレゼント。
アスガルドの神樹ユグドラシルの幹を傷つける訳にはいきません。
そこで伝うツタを使って、作製された杖なのです。
ただ、伝っていただけでもユグドラシル。
並みの杖ではなくて、他にも面白い使い方が出来るのですけど……。
ここはわたしがもっとも得意とする氷の魔法をさらに増幅させますわ。
ただし、攻撃する訳ではありませんの。
「そんな玩具のような杖で何が出来るというのだ。無駄な足掻きに過ぎん」
ジリジリと一歩一歩、巨体を揺らし近づいてくるナリは余裕なのか、それとも徐々に再生しつつある身体の再生時間を稼いでいるのか。
そのどちらでもあるのかもしれませんけど、本当に気が付いていないのかしら?
だから、愚かなのですわ。
「さようなら。義兄様だったモノ。霜の障壁展開」
「何だと?」
訝しむナリを他所にレオと泉を守れるように霜の障壁を前面に最大限に張りました。
ここで力を抑えるのは危ないですわね。
例えるのなら、朝と夜の空の色かしら?
白と黒の奔流が螺旋を描きながら……それも周囲の物を全て、薙ぎ払い破壊しつくしながら、迫っていました。
狙いは勿論、わたしの前で勝ち誇っていた愚かな兄ナリ。
そして、放ったのは間違いなく、わたしの愛する兄イザーク。
フェンリル狼の放つ滅びの爆裂咆哮はレオの不完全な形とは違う完成形。
その破壊力は数段上と見てもおかしくないですわ。
スコルの血の匂いをさせたままなのを忘れて、動いたのがナリの致命的なミス。
完全に捉えられていたことにも気が付いていなかったので愚かと申し上げたのですわ。
ナリは奔流に見事に飲まれ、断末魔の悲鳴を上げる間も無く、消滅しました。
「お兄様。派手にやりすぎですわ」
わたしが霜の障壁を張っていなかったら、もっと酷いことになっていたのかしら?
森を突き抜けるように広大な荒れ地が広がっています。
大惨事ですわね……。
物入れから、ユグドラシルのツタから作られたわたし専用の魔法杖を取り出しました。
フワフワと宙に浮く、ユグドラシルはお祖父様からのプレゼント。
アスガルドの神樹ユグドラシルの幹を傷つける訳にはいきません。
そこで伝うツタを使って、作製された杖なのです。
ただ、伝っていただけでもユグドラシル。
並みの杖ではなくて、他にも面白い使い方が出来るのですけど……。
ここはわたしがもっとも得意とする氷の魔法をさらに増幅させますわ。
ただし、攻撃する訳ではありませんの。
「そんな玩具のような杖で何が出来るというのだ。無駄な足掻きに過ぎん」
ジリジリと一歩一歩、巨体を揺らし近づいてくるナリは余裕なのか、それとも徐々に再生しつつある身体の再生時間を稼いでいるのか。
そのどちらでもあるのかもしれませんけど、本当に気が付いていないのかしら?
だから、愚かなのですわ。
「さようなら。義兄様だったモノ。霜の障壁展開」
「何だと?」
訝しむナリを他所にレオと泉を守れるように霜の障壁を前面に最大限に張りました。
ここで力を抑えるのは危ないですわね。
例えるのなら、朝と夜の空の色かしら?
白と黒の奔流が螺旋を描きながら……それも周囲の物を全て、薙ぎ払い破壊しつくしながら、迫っていました。
狙いは勿論、わたしの前で勝ち誇っていた愚かな兄ナリ。
そして、放ったのは間違いなく、わたしの愛する兄イザーク。
フェンリル狼の放つ滅びの爆裂咆哮はレオの不完全な形とは違う完成形。
その破壊力は数段上と見てもおかしくないですわ。
スコルの血の匂いをさせたままなのを忘れて、動いたのがナリの致命的なミス。
完全に捉えられていたことにも気が付いていなかったので愚かと申し上げたのですわ。
ナリは奔流に見事に飲まれ、断末魔の悲鳴を上げる間も無く、消滅しました。
「お兄様。派手にやりすぎですわ」
わたしが霜の障壁を張っていなかったら、もっと酷いことになっていたのかしら?
森を突き抜けるように広大な荒れ地が広がっています。
大惨事ですわね……。
0
あなたにおすすめの小説
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
悪役令嬢は廃墟農園で異世界婚活中!~離婚したら最強農業スキルで貴族たちが求婚してきますが、元夫が邪魔で困ってます~
黒崎隼人
ファンタジー
「君との婚約を破棄し、離婚を宣言する!」
皇太子である夫から突きつけられた突然の別れ。
悪役令嬢の濡れ衣を着せられ追放された先は、誰も寄りつかない最果ての荒れ地だった。
――最高の農業パラダイスじゃない!
前世の知識を活かし、リネットの農業革命が今、始まる!
美味しい作物で村を潤し、国を救い、気づけば各国の貴族から求婚の嵐!?
なのに、なぜか私を捨てたはずの元夫が、いつも邪魔ばかりしてくるんですけど!
「離婚から始まる、最高に輝く人生!」
農業スキル全開で国を救い、不器用な元夫を振り回す、痛快!逆転ラブコメディ!
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる